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21 勇者の相手探し


「ライトフィールド、いるか」

「また!」


 部屋の中では人間の会議が行われていたようだ。

 私はおおあわてのライトフィールドに別室に案内され、待たされた。


「ですから、いらっしゃるなら事前のご連絡を!」

「冗談だ」

「実際に入ってきてますので! 冗談になっていないんです!」

「時間はあるか」

「ありません!」


 

 しばらくして、ライトフィールドがやってくる。

「それで、どういったお話でしょう……」

「指輪はどうだ」


 おそらくだが、ライトフィールドは余裕を持ってこなしたいタイプなので、急かさないと実際の進捗状況がわからない。


「まだ一日も経っていないのですよ? そんなに早くできるわけが……」


 ライトフィールドが前に出る。

「あったのです!」

「なに?」

「核となる宝石だけ必要だという状態の指輪が手に入りまして、すでに10個できています」

「お前が10と言ったということは、15はあるな」

「まだですが、それももうすぐ、といった状態です」

「ほう」


「ではとりあえず10個もらおう」

「はい」

 抵抗せず素直に出してきた。



「これは、村の女性に使わせているのですか。そこまでして人間のことを守るというのはよくわからないのですが……」

「いや、村の者ではない。そやつは、ドランゴも倒せるようになったぞ」

「は?」


「それでな。他にちょうどいい相手が欲しいのだが、六英雄というのを紹介してくれんか」

「は……?」

「グレゴリーは友好関係を結べそうにないからな。ちょうど良さそうなやつはいるか?」


「あの、魔王さま、話についていけないのですが」

「お前がついて来なくても私は進む」

「そういうことではなくてですよ、六英雄を倒せる魔族がいるとしたら、その者は新しい六英雄ではないですか!」


「それで、ドランゴ、ライトフィールド、グレゴリー以外の六英雄というのは誰がいて、誰が応じてくれそうだ」


 ライトフィールドはため息をついて、話す。

「ダーブル、ファイス、ガンショットという者がいますけれど……。ダーブルはグレゴリー様と一緒に魔王城におります」


「ファイスというのは?」

「氷と炎をまとった魔族で、個人行動を好みます。ドランゴとそれほど変わりませんね」

「ファイア、アイスということか。ガンショットは?」

「同じように個人行動を好みます」

「六英雄のうち半分は個人行動、魔王城に二人、人間の街にひとりか」

 他の者の上に立とうというのに、ろくでもないやつらだな。


「お前が人間の街にいることは知られていないのか?」

「おそらく。自分のことにしか興味がない者ばかりですし、また人間を完全に滅することに興味があるのは、六英雄より下の魔族ばかりです」


「ではファイスとガンショットに会って、それたら魔王城に行こう」


「本当に行かれるのですか?」

「なんだ?」

「ドランゴとわたしを他の六英雄と同じように考えてもらっては困ります。話し合いなどできないと思ってもらったほうがいいかもしれません」

「お前は初対面の私になにをしたか忘れたようだな」

 ライトフィールドが咳き込む。


「まあ、会話もできぬような者が他の者の上に立つようではいかん。下につく気がないのなら、始末してもいい」


 腕の立つものは必要だ。

 だがそれは使われる立場の者であって、話を聞けない者が上に立つのは、いいこととはいえない。

 ましては六英雄などという、特権階級にいられては困る。


「どこだ?」

 私は地図を見ながらライトフィールドにおおよその場所をきいた。

 そこまで聞けば、気配の大きさでどこにそれがいるのかはわかる。

 ここからでも、おおよそどこにいるのかがわかった。


「指輪の石があったところのすぐ近くではないか。仲間を連れているな」

 燃え盛る火山が多くある場所だ。

「おわかりになるのですか?」

「おおよそな」


「では行ってくる」

 私は異空間で移動した。


 


 熱と、鼻をつく臭いであふれている場所だった。

 石を取りに行くときは火口まで向かったが、今度は山と山の間を歩く。

 溶岩が流れている様子もここでは当たり前のようだった。


 気配をたどると、大きな火山の近くに何体かの魔族を見つけた。

 その中に、大きな気配がいる。


 私はそこまで飛んでいった。


 すこし離れたところに着地すると、彼らは私を見つけた。

「誰だてめえは」

 炎が形になったような魔族に囲まれて、片側が炎、片側が氷という魔族が立っていた。


「お前がファイスか」

「俺は誰だってきいたんだぜ?」

 ファイスはにやりとする。


「お前と話をしたくてな来たのだ」

「俺に三度同じことをきいて、生きてたやつはいねえな」

「では私がその一人目になるわけだ」

「そこまで言うならいいよな」


 ファイスが片手をあげる。

 私の周囲に炎の壁が立ち上がった。

 炎は密度を増し、迫ってくる。


「ひゃっはー! 一丁上がりい!」


「では話をしてもいいか」

 私がファイスの後ろから話しかけると、ファイスの炎と氷が大きくなった。

 驚きを表現しているのかもしれない。


「ひーはー!」


 ファイスが細長い氷をいくつも射出してきた。

 ちょっと考えたが、私は単純に身体能力で避けてみる。

 その方が驚いてくれそうだからだ。


 案の定、また炎と氷が大きくなった。


「意思疎通には、言葉を使うのがすべてではないということか……」

 体の動きも大切だ。


「なんだてめえは!」

「魔王だ」

「ああ?」


「魔王だ」

 距離があったので、地面をけって近づいた。


「わかるか? 魔王だ」

 近距離で、ファイスの目を見る。

 魔王の目を見せてやる。

「あ、あ、ああ」

「わかってくれたようだな」

「ほ、本当に、魔王、なのか……」

「ああ」

「本当に!」

 ファイスは私の肩をつかんだ。


 右肩が燃え、左肩が凍っていく。

「肩が燃えたり凍ったりしているのだが」

「す、すまねえ!」


 ファイスは両手をあげた。

 そして地面にひざをついた。


「魔王さま! 会えてうれしいぜ!」

「は……?」

「俺は、あんたの前の魔王さまにつくられた魔族なんだ!」

「ほう?」


 物体の魔力をこめて作る人形のような魔物がいるが、ファイスはそれにあたるのか。

「にしては強力だな」

 こういう魔族は特殊な生まれだけに、あまり発展もせず、おもちゃのような扱いになりやすい。

 またこれほど強力にはなりにくい。

「へへ。俺も、俺なりにずっと鍛えてたんだ。だてに700年も生きてねえぜ」

「ほう」


 相当の長命だ。

 よほど力を入れてつくったか、ファイスが鍛錬をしたのか。


「魔王さまが死んだって聞いて、そんなわけねえって思ったんだけどよ、新しい魔王だっていうグレゴリーとかいうやつが言ってんだよ」

「グレゴリーは魔王ではないのだろう?」

「とは言ってるけど、まあ、魔王ぶってるぜ」

「なるほどな」


 ドランゴやライトフィールドは、そこまで直接的な言い方はしていなかったが。


「私がグレゴリーに負けたというのも知らんようだな」

「なんだってー!」

「負けたというか、出方を見て帰っただけだが。封魔の檻とかいう変わったものを使っていたな」

「なんだよ、ビビらせんなよ。魔王さまが負けたのかと思ったぜ」

「その気になればいますぐこの星を消すことも可能だぞ?」

「いやいや」


「それでだな。話が通じないので、もうすぐグレゴリーを殺そうと思うのだが」

「おお! さすが魔王さま!」

「その練習として、手伝いをしてもらえるか」

「なんでもしますぜ!」

「本当になんでもか?」

「はいよ!」




「こりゃ、なんですかい?」

 私はファイスを村の近くまで連れてきた。


 ファイスの前に立っているのは娘勇者だ。


「この小娘を殺すとなにかいいことがあるんですかい」

 魔族にしかわからない言葉で言ってくる。

「その小娘に、グレゴリーを殺させたい」

「は? 魔王さま、冗談きついですわ」

「そこにいるドランゴも、この娘に敗れている」

「はあ?」


「おい龍公、てめえそんなやつに負けたのか? はははっ」

「やればわかる……」

「はははっ、はははっ」

「これをつけろ」


 私は指輪をわたした。

「こいつは……?」

「死んでも生き返ることができる指輪だ」

「そりゃ知ってますが、魔王さま? 俺が死ぬってんなら、冗談にしても笑えねえなあ」

「ファイス」


「私はお前に会ってから、一度も冗談を言っていないぞ」

 ファイスの表情が引き締まる。


「この娘は、私が、グレゴリーを殺せるように鍛えている。お前が死ぬことも充分織り込み済みだ。死にたいのなら指輪を返せ」


「すいやせん。ちゃんとやらせていただきやす」

 ファイスは指輪をしっかり装着し、娘勇者に向き直る。


「今度の相手はこいつだ」

 私は娘勇者に言った。


「開始の合図はこれだ」


 私は小さな爆発魔法を使った。


 それを合図に両者は動き出した。



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