プロローグ1
国に見捨てられる。
まさかそんな事態になるとは思いもしなかった。
それが起きる原因となったのは俺が住んでいた国のみならず世界中の国で人口が莫大に膨れ上がってしまったときのことだ。
人口があまりに増え、住む場所が無くなり、食料も無くなり、物資が足りなくなった。
食料や物資を作り出すにも資源が足りなくなった。
昔の人々ならば新天地を探して、夢を見て星の外へと向かったかもしれない。
だが今の人々にはそこまでの活力は無かった。
自分の住んでいる以外の場所に行くつもりも無かった。
それでも生きるためには物が足りない。
ならば戦争で奪う以外に他ならない。
そういうご時世となり、世界で大乱と呼ばれるほどに大きな戦争が勃発した。
それも人口の多さを考えれば過去のどの大戦よりも激しい戦いが起こることなど明白だ。
とくに技術まで過去より発展しているのだ。
たった一人の人間によって多くの人間が死んだし、たった一つの兵器が万を超える人間の命を奪った。
この戦争で人類の数が半数になってしまった。
それでも大国が滅びることは無かった。
技術も人口も多く、すでに多くの資源を元々持っていた大国が局地的に負けることはあっても全体の形勢で負けることは有り得なかった。
これにより大国による小国の搾取が始まる。
植民地など生温く、人と見ればどんな資源であろうと消費される前に殺され、動物や植物と見れば食べられる。
負けた国は更地になるほどに食べつくされたところが多くそこをテラフォーミングされ、大国のエサを作る場となる。
これにより、一時的に一人一人に与えられる資源の割合は増加した。
しかしそれでは根本的な解決にはならなかった。
消費され続け、この世界から消え続けていくエネルギーという危機感は戦争が終わっても世界に強く根付いていた。
莫大に消費されるエネルギーの原因は何か。
考える間でも無く人間が多すぎるからであった。
ならばどうするか。
人間をさらに減らしてしまおう。
各国がそれを承認した。
してしまった。
戦後の混乱の中進んで行われたその政策により、人類は急激に数を減らした。
抵抗した者もいた。
しかし抵抗すらできずに死んだ行った者の方がはるかに多い。
何故なら死ぬ人間にわざわざ今から殺す情報を伝える必要も無ければ簡単に殺せてしまうほどに技術が発達していたからだ。
俺もその殺される人間の一人であった。
運良く殺される情報を掴み、逃げた俺であったが容易く捕まった。
捕まって殺されることとなった。
三回目の大戦を生き抜き、国のために戦い、平和が垣間見え、ようやく穏やかな生活を営むことができる。
そう思っていた俺は国によって殺されたのであった。
そして何故か俺は次の瞬間、真っ白い空間にいた。