昇級できなかったサラリーマンの心の支え
同じことで悩んでいる方の、何かのヒントになれば幸いです。
昇級できなかったサラリーマンの心の支え
会社の昇級試験制度で給料が上がるサラリーマンは大勢いらっしゃる。私もその一人です。
先日、昇級試験の結果が管理職の方からありました。
「今年も……駄目でした」
部下の一人から残念な結果報告を聞くのが辛いのだが、上司としてそれをフォローしてあげたい。
実際に私も同じことで悩んだ経験がある……。
能天気な私が悩むほどだ……日本ではたくさんの方が同じことで悩んでいるのだろう。
そんな方に、アドバイス――ではなく、私はこうしたよと知ってもらえることで、少しでも心の支えになればと思い、筆をとった――。
部下からの悩みはこうだった。
①頑張っているのに昇給しなかったから、やる気がでない。モチベーションが上がらない。
②他の会社へ転職しようと思う。
③同期や、まさか年下に抜かされたら、プライドが許さない。
④最後に、管理職の方からがんばれと言われたが、一体何をがんばればいいんっすか!
それに対して……アドバイスというか、
実際に言ってあげた……。言ってしまった……。
①頑張っているのに昇給しなかったから、やる気がでない。モチベーションが上がらない。
「うん。みんな頑張ってるからねえ……。それ以上にがんばらないと管理職には伝わりにくいんだけど……。
実際に管理職は自分の部下の給料を全員上げてあげたいはず。だって、そのほうがやる気が上がるもん。でも、管理職が上げたくてホイホイ上げられるようなもんじゃないんだと思うよ。
人事部の人がそれを握ってるんだよきっと……。でも人事部が部下全員の本当の頑張りを公平に見ることなんてできないよねえ。だから、試験でいい結果を出したり、アピールが必要になるんだよ。
悪いのは管理職ではなく、人事部。人事部の求める結果がだせなかった……自分自身? あれ?
でも、人事部だって全員の給料を上げてあげたい思いは一緒。だって、給料が上がった方がモチベーションが上がるもん」
会社はみんなの給料を上げてあげたいのに、それができないんだと言うことを伝えたかったのだが、うまく伝わったかどうか……。
②他の会社へ転職を考えようかと思う。
「うーん。うちは給料安いからなあ。でも、給料が高いところは、その分しんどいよ」
他の会社に行きたがる部下は、おおよそ他の会社のいいところしか見ていない。(例えば、給料や勤務形態。休日数や名前)
大切なのは、自分の勤めている会社や自分の仕事のどの部分が、自慢できるかを本人が知り、自覚することだ。
――「どや話」ができることなのだ!
「今のご時世、毎日残業がなくて定時に仕事から帰れるのって、うちの会社ぐらいだぞ。寮だって歩いて5分。通勤に何時間も掛かってる会社だってあるんだから。うちは福利厚生がしっかりしているんだよ。
給料が多い会社に転職って言うけど……、その分、残業も多いかも知れない。まずいのは、その残業がちゃ~んと働いた時間の分、ついているかどうかだ。時間で計算したらアルバイト代よりも安かったってブラック企業的な話を聞いたこともあるからなあ。ホワイト企業は、このご時世、素晴らしいんだよ」
驚きの白さだ!
……自分の働く会社のいいところなんか、探さないと見つからない……? かも知れない。でも、悪いところは直ぐに目についてしまう。
必死にいいところを探してそう答えたのだが、はたして納得してくれたかどうか。
③同期や、まさか年下に抜かされたら、プライドが許さない。
「ほーほー。プライドか……」
私に欠けているもの……プライドかも知れない……。
ボーナス査定がB(普通)でも、ありがたく頂戴する……。
「じゃあ、プライドが許さないから、どうするの?」
逆に聞いてみた。すると、違う会社に転職しますと堂々と言った――!
「ええー! そうなん? じゃあ年下(同学歴の)に抜かされたから、次の会社へ転職して、その会社で年下にアゴで使われても、そのプライドは平気なんだ……」
プライドって……なんだ? 私が教えてほしい。
「次の会社で、「何で前の会社を辞めたの」とか聞かれた時に、
『年下の奴に昇級試験で負けたからプライドが許さなくて辞めました』
って答えられるんだ?」
答えなくても、自分の心にその言葉が繰り返し聞こえてくるのではないだろうか――。
「もし私が次の会社の人だったら、
じゃあこの社員は、うちの会社でも、同じように年下に負けたら辞めちゃうんだろうなあ~
って思うよ」
少し真面目な顔をして、
「本当のプライドは、負けたって次の昇級で逆転してやるう! と努力したり、負けないように頑張り続けることだって。負けたから違う会社へ行くなんて、プライドって言えないよ」
プライドの欠片もない私のプライド論……。部下はどう聞いていたのだろうか……。
④最後に、管理職の方からがんばれと言われたが、一体何をがんばればいいんっすか!
「え? そんなことを管理職に言ったの?」
部下は、「はい」と答えた。
頭を抱え込む……。
「そういうことは、思っていても言わない方がいいと思うよ……」
部下の苛立つ気持ちがヒシヒシと伝わってくるんだけど、
「だって、もし君が上司の立場で、部下からそう言われた時、その部下に対して好印象をもてるかい?
いずれは自分も上司になり、同じことを言われるかも知れないだろ。どう思う?」
黙る。
いや、黙らないでよ、考え方を聞いているだけなんだから……。
「じゃあさあ、もし昇級試験に不合格でも、来年また頑張りますって言える社員と、やる気をなくしたので、もうがんばりませんって言う社員と、どっちが好印象?」
聞くまでもない。
「なので、……ネガティブになるのは仕方ないんだけど、それをバラしちゃ駄目だ。
それは絶対に本人のためにならない。
次の試験で受からなかったら辞めますなんて脅しは、会社の中じゃ通用しないんだ。
だって、管理職の人が昇給させたくても、できない場合もあるし、そもそもその脅しが通用したら、みんな辞めるって言いだすし、みんな言い続けるさ」
私だって言うさ! 言い続けて社長になるっさあ!
「もし会社を辞めるとしたって、ネガティブになって辞めてきた社員を欲しがる会社はないと思うよ。辞めるその日まで全力で働いているような社員を欲しがるはずさ」
まあ……なかなかやる気を持ち続けて仕事を一生続けていくなんて難しいんだけどね。
「サラリーマンはマラソンランナーなのさ。これは誰かが言っていた言葉なんだが、全力疾走してゴールまで走るなんて無理無理。途中で息切れしてしまうよ。私がいいたいのは、
生き生きと仕事をすること。
それで揺ぎない自分の仕事に対するスタイルを作ること。
それは、もし他の会社へ行っても通用するものだから、損にはならないと思うよ」
本当に伝えたい気持ちは、部下が大事だから、どうか辞めないで欲しいという気持ちだった。
これが根底にある。
一人たりとも無駄な社員なんていないのだ! その思いは伝わったかどうか――。
仕事中に……長々とそんな話をしていました。