ヨルムン、食事をいただく
「い、いかがだろうか? 一級の素材を使い調理した数々の料理は?」
ビクビクとした様子で説明する王様。
そんなに怖いのならば姿を現さなければいいと思うんじゃが王という立場がそれを許さんのかもしれんが。
さてそんなビクビク王が準備した料理がテーブル一面に並べられています。
ただし、一切暖かさが感じられないものじゃが。
「おい、なんかこれ冷たいんじゃが?」
湯気が一つも上がっとらん。
クマの店ででる物は全部熱いものは熱いし冷たい物は冷たいのじゃがここにあるのは基本的に微妙な温度じゃ。
「ね、念入りに毒味をしたものならば時間も経過して冷めるものなんだ」
毒味なんて考えたことなかったのう。
いや、王という立場になればそんなものも考えんといかんわけか。面倒じゃのう。
「ハグハグ! ウグ!」
王から我の横へと視線を向けるとひたすらに手掴みで料理を口に放り込み続けるアホが目に入ります。なんとなく腹が立ったから空になった皿を掴みそれを口に食べかすをつけながらも幸せそうな顔をしているレイアの顔面へと向けて叩きつけてやる。
それも全力で。
腕のしなりを使った完璧な一撃はレイアの顔面に突き刺さると叩きつけた皿を一瞬にして粉砕。さらには皿を掴んでいた拳でも殴ることに成功したものじゃからレイアの奴は勢いよく吹き飛ばされると壁へと突き刺ささりよる。
「うむ、なんか芸術的な感じじゃな?」
「は、ははは……」
なんで王の奴が乾いた笑みを浮かべとるんじゃ?
あ、あれか! この芸術的な物を作り上げた我に対しての感謝の笑みというわけじゃな!
じゃがとりあえずは腹ごなしじゃな。
冷めているとはいえ一応は料理! つまりは経験値じゃ!
しかし、テーブルの上のご馳走(冷たい)を食べるべくスプーンを探すが見当たらぬ。先ほどレイアを吹っ飛ばした際にどこかに飛んでいったようじゃがどこにいったんじゃろうか?
まあ、なくとも食えるのじゃが。
近くの皿から我の顔よりも大きな肉をとりあえず手に取り齧り付く。口の中には今まで食べたことのない味が広がりそれはなんとも言えぬ幸福感を我に与えてくれる。
「うむ、美味美味」
惜しむのはこれが温かくないということではあるが冷めていてもうまい。
うまいものは自然と食べるのも速くなるというものじゃ。皿の上の食い物を掴んでは口に放り込むという作業に没頭することにしよう。
『未知の味を取得しました。経験値を25習得しました』
またあのわけのわからん声が聞こえてくるが無視してひたすらに食べる。
「おい、あれには入っておるのじゃよな?」
「は、はい。獰猛な魔獣すら一滴で死ぬような物を大量に混ぜておきました」
「ではなぜあやつは普通の顔、いや幸せそうな顔をして食い続けておる!」
なんじゃか王の周りがやかましいのう。
む、この料理に使われておるのはなんじゃ? 舌にピリっとした刺激がなかなかによいのう。
「あれはもう致死量だろ?」
「ええ、普通ならのたうちまわって死ぬ量です」
む! これはまた絶妙な歯ごたえ!噛んでる感触がよく伝わってくるのう。
「今、装飾用の金属を嚙み切らんかったか?」
「えぇ、私にもそう見えました……」
ひたすらにテーブルの上の物を胃に収めていき、テーブルの上の物が何もなくなる頃には先程までなにやら喚いていた王達はすでに言葉を発しておらん。
なんでそんな驚いたような顔をしておるのかがわからん。
「ひ、一人で食い切りよった……」
「致死量の何倍、いや、何百倍という毒ごと食ったというのになぜなんともないんだ」
なかなかに腹が膨れたのう。
「おい、王とやら」
「ひゃ、ひゃい! なんでしょう」
なんでそんな変な声を出すんじゃ。
別にとって喰うわけではないというのに。
「我は腹が膨れたからもう帰るぞ」
「そ、そうですか。では送りの者を準備します」
「いらん、面倒じゃしな」
そんな人を引き連れて動くのは趣味じゃないしのう。
椅子から飛び降りると出口の方へと向かう。そんな我の後ろを慌てたように国王とその部下が追いかけてきます。
本当に面倒じゃなぁ。
「我に今後余計なことをしたら齧るからな?」
止めても付いてきそうな感じじゃったから振り向きそう告げるとすごい勢いで首を上下に振りよる。
その後、何度もここまででいいと言う我の言葉を無視して王と他の連中は結局クマの店にまで付いてきたのじゃった。




