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痴女見参!

「だっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁ!」


 我は拳を突き上げながら大量の海水をぶち破りながら海中から海上へと一気に跳躍。

 わずかに膨れ上がるような感覚を体に感じながらも海上へと飛びだし、突き破った海水も同様に空を舞い、少しの滞空時間をおいて滝のように眼下に見える船へと降り注いでいく。それと同じように我もわずかな滞空時間を経て船へと着地する。


「今度はなんだ!? 海賊の次は何が出やがった!」

「船長! 痴女です! 空から全裸の痴女が降ってきました!」

「バカ野朗! 寝言は寝て言えってふくきてねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」


 なにやら剣を振り回している頭に血が上りやすそうな奴らが我を見て何か言ってるようじゃな。ふ、さすがは我。この体にかけたカヤラメイクの時間は噓をつかなかったようじゃな。みな一様に頬を染めたり顔を紅く染めたりしておるようじゃしの。なんか鼻を押さえておる輩もおるようじゃが些細な問題であろう。


「おい、お前」

「うわぁぁぁぁぁぁぁ! へんたいだぁぁぁぁぁ!」


 近くの奴に話しかけたら持っていた武器を放り投げて走り去っていきおった。うむ、我が美少女過ぎるからいかんのかもしれんな。だがコレばかりはどうしようもないので我慢をしてもらうしかあるまい。

 気を取り直して再び近くの人間に話しかけることにする。今度は剣を振り回し斬り合いをしている何故か片目を眼帯で覆っている輩へと近づいていくことにするかの。

 しかし、濡れた髪がなかなかにうっとしいのぅ。それに体もびしょびしょのままじゃから歩くたびにピチャビチャとうるさいんじゃが。


「おい、そこの」

「なんだ、痴女! こっちは見てのとおり忙しいんだよ!」


 剣と剣がぶつかり合い火花を散らしながら我と会話するとは器用な奴じゃな。

 なんかいきなり罵倒されたようないがするんじゃが、まぁ、許そう。

 所詮は人間のたわ言。世界蛇たる我にとっては微々たる存在じゃしな。


「うむ、この船で陸地に向かって欲しいんじゃが」

「おめ、俺の話をきいてんのか!? 取り込み中なんだよ」

「なぬ?」


 取り込み中だと? そういわれるとさっきからこやつは剣を振り回してなにをしとるんじゃ?見ればもう一人剣を振り回しているようじゃが……


「なにかの芸か?」

「「戦ってんだよ!?」」


 なぜか二人に文句を言われてしまったんじゃが。我から見ればなんか速く剣を振って遊んでいるようにしか見えないんじゃがな。周りを見渡してみると至る所で剣や槍を振り回して戦い合っている輩の姿が見て取れる。

 こやつらは同じ人間なのに争いあって一体何をしとるんじゃろうか?


「ふむ」


 仕方ない。とりあえずは我の目的を果たすためには話を聞いてもらわないといけないわけじゃからな。

 行動を決めると同時に軽く跳ぶ。足を踏み出した拍子に木でできた床に穴が開くが些細な問題じゃろう。剣をぶつけ合う二人の真ん中へと移動すると二人の目が驚愕に見開かれとる。我が美少女すぎるから仕方あるまい。

 しかし、そうではなかったらしく二人は剣を我の頭上に振り下ろしてきおった。というか振り下ろそうとしたところに我が現れたようじゃな。

 金属の塊である剣は鋭い軌跡を描きながら我の頭に叩きつけられ、


 パキンっという軽い音を立て真っ二つに叩き折れ、船の床に音を立てながら転がっていった。


「「えっ?」」


 再び驚きに眼を見開き自身の持つ刀身が途中からなくなった剣へと視線を向ける二人であるが我はそれどころではなかった。


「いったぁぁぁぁ⁉︎」


 二本の剣が叩きつけられた我の頭が言葉にできんくらいに物凄く痛むんじゃが⁉︎ 頭を抱えるようにしゃがみ込み痛みで身動きが取れん。しかも意識しなくても目尻に涙が浮かんできよるし。おそるおそる頭に乗せていた手を目の前まで持ってきて確認するが血など一滴もついていなかった。


 …… 我の皮膚、優秀じゃが中身弱すぎじゃろ


 ジンジンと痛む頭を摩りながら立ち上がった我を化け物を見るような目で争っていた二人が見ておるわけじゃが。


「で、どっちをぶっ飛ばせば我を陸地まで連れて行ってくれるんじゃ?」

「海賊に決まってるだろ!」


 片目を眼帯で覆っている人間が争っていた男を指差し叫ぶ。指をさされた男の方は明らかに動揺しながら後ろに下がっていた。


「あんた、そんな也だが名のある方なんだろ! 頼む、報酬は払うからこの船を守ってくれ!」

「ふむ」


 ほうしゅうとはお宝のことかのぅ? ま、我は陸地まで行きたいだけなんでいらんのだがぶっ飛ばしたらいいということらしいからの。あとでなにか食べ物をもらえるように頼んでみてもいいからもしれんし。

 うむ、悪くない。


「いいじゃろ、あの後ろの船をなんとかすればいいわけじゃろ?」


 男が頷くのを確認した我は口元を歪めて笑う。

 とりあえずは男と斬り合っていた奴に拳を叩きつけると海賊と呼ばれた男は凄まじい勢いで吹き飛ぶと壁にぶつかったにも関わらず、勢いを失うことなく海の上を回転するように飛んでいき、やがて水柱をあげて姿が見え見えなくなった。


「いたい」


 男をを殴った手がズキズキと痛みを訴えてくるのに涙目で反応する。

 こうなったらここらでこんな理不尽な体になったことに対する八つ当たりをしてもいいじゃろ。

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