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ヨルムン、仕方ないから認める

「つまりその状態異常をなんとかすればいいわけでしょ?」

「そうじゃが」

「なら任して」


 何気なく言ったサリハルもどきが迷いなく背中を踏みつけられつつもまだ暴れようとしているルーへと近づき屈むとルーの頭に向かい手を伸ばし頭の上へと手を乗せる。

 その瞬間、サリハルもどきの全身からなんとも言えない不快感というか威圧感にも似たようなもの放たれ、周りの空間を支配しよった。

 我にとってはなんとも言えぬ、しかし、慣れ親しんだこの感覚は確かにサリハルが放っていた気配であるようじゃ。

 サリハルが手を乗せているルーはというと暴れるのをやめ、穏やかな寝息を立て始めておる。

 少しして周りを支配していた威圧感のようなものは消え、サリハルからも同様の威圧感が消えよる。


「ふぅ、これでまともにはなるんじゃないかな? 前後の記憶が曖昧になるかもしれないけどね。あとこれは回収さしてもらうよ。人間には過ぎたものだし」


 そう言いながら立ち上がるサリハルの手にはルーに譲った『ぼうけんのしょ』の姿があったのじゃがそれはサリハルが宙に放り投げると光の粒へと変わり消失しおった。

 ふむ、こやつはやっぱりサリハルなんじゃろうか?

 あやつは腐っても神じゃったしソコソコの力はあったからのぅ。

 じゃがその確認の前にと、


「お主その食べ物を我に寄こす気はないか?」


 さっきからサリハルの奴が抱え取る食料がいい匂いを漂わせ我の鼻腔をくすぐるわけなんじゃよな。むしろ今の我的には元に戻ったかどうかわからんルーより食べ物の方に関心が向かっとるくらいじゃ。

 我がよだれを垂らしながらサリハルの持つ食べ物へ視線を向けておることに気付いたサリハルは食べ物を守るように後ろにやると我を睨んできよる。


「だめだよ! これは冒険者になって稼いだお金で買ったものなんだから」

「冒険者?」


 言われてサリハルの腰の方へと視線を下ろしてみるとなかなかに使い込まれた剣が吊るされておる。


「神様が冒険者とはこれまた面白い話じゃの」

「その言い方! 僕がサリハルって確信してるよね⁉︎」


 まぁ、さっきのルーの奴をの状態異常を治しよったしのう。ふつうなら無理じゃし仕方なしに大変癪には触るがこやつをサリハルと認めざるおえん。


「しかし、なんで貴様冒険者なんぞをしとるんじゃ? 天界に帰れば良いだけじゃろうが」


 性格がいかにクズで最低であったとしてもこやつは一応は神なわけじゃからな。天界に戻れば大半は思うがままなわけじゃし。


「僕だって帰りたいんだけど帰ったら多分殺される……」


 神のくせに殺されるって……

 一体どういう状況なんじゃ

 

「今天界ではクーデターが起こってるんだよ」

「反乱か」


 しかし、我の記憶では天使というのはどれも生真面目な仕事大好きな奴だった気がするんじゃがなぁ。


「さすがに僕がやらないといけない仕事も天使に任したのがまずかったかなぁ? それとも休みなしで千年働かしたのがいけなかったのかなぁ」


 こいつやっぱりクズじゃな。

 というか休みなしで千年間も働かされた天使たちが不憫で仕方がないんじゃが…… いや、こんな環境に置かれたのであれば反乱も起こるというものじゃな。


「だからほとぼりが冷めるまで下界で過ごそうと思うんだ」


 追われている割には今の生活楽しんでおらんか?

 なんか楽しんで充実しておる姿を見てイラっとするんじゃが。

 こやつの生活をぶち壊す意味を込めて元天使であるブリューフルにサリハルの状態でもバラしてやろうか。


「おぬし、さっさと反乱をしずめてこんか」

「いや、そんなこと言っても今の僕は神の権限はほとんど奪われてる状態だしね。今の僕は普通の冒険者より強いくらいのスペックしかないからね」


 いいのか神よ。


「だから僕は下界ライフを堪能するんだーい!」


 楽しげにそんなことを宣言しながらきた道を食べ物を抱えながら歩き去りよる。


「あいつ、なんか前に我に頼みたいことがあるとか抜かしておった気がするんじゃが……」


 言ってこなかったわけじゃし大した要件ではないのかもしれんのう。

 そう結論付けた我は足元で寝息を立てながら寝ているルーの足を掴むと引き摺りながらゴートゥヘルへと向かうのじゃった。

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