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ヨルムン、クマの涙を見る

「おらぁ! クマ! 晩御飯を自力で取ってきたヨルムン様のお帰りじゃぞ!」

「先生! 僕たちもいますよ」

「私、お腹減りましたわ」


宿屋ゴートゥヘルの扉を蹴破り我は中に入ると手にしていた包み、百足ひゃくあしイノシシの肉を頭上に高々と掲げながら叫んでやる。


「ああ、帰ったのか。お前らがいないと店が静かで助かったんだがな」


店の中では口に咥えたたばことかいうものから煙をプカプカと吹かしていたクマが深々とため息を付きながら読んでいた本を閉じて立ち上がる。


「で、狩りに行くとか言ってたがなにか狩れたのか?」


もうすでに目が特に期待していないがといった色をしているような気がするんじゃがどういうことなんじゃろか?

しかし、そのバカにしている視線もこれまでよ!


「ふふん! バカにするのもこれまでじゃ!」

「どうだろなぁ? お前は力が凄いが頭がその…… あれだろ?」


何故かクマが我から視線を外すように、そして気不味そうな感じで最後の方に呟いた言葉はかなり小さかったがまぁ、聞こえたわけなんじゃが。


「あれってなんじゃ?」

「あえて聞く先生が素敵です!」

「それはですねー バカってこでぶるぅ⁉︎」


はっ⁉︎ ひどいことを口走ったブリューフルを反射的になんじゃが拳を顔面に突き立ててやると音を立て宙を飛ぶと色々と物が置いてある棚に向かい凄い勢いで飛んで行きよった。


「おい」


クマが低い声を上げながらも本を宙へと放り投げると宙を舞うブリューフルとそのまま行けばぶつかる棚の間に瞬きをする間に現れる。


「前も言ったが暴れんじゃねえか」


飛翔するブリューフルの首元を後ろから掴み、掴んだ勢いでその場で回転。完全に衝撃を受け流したかのように動き、恭しい態度でブリューフルを床へと寝かしおった。


「す、凄いです! あんなに容易く衝撃を殺すなんて! 店主、あなたは一体何者なんですか!」


その一連の流れを見ていたルーは騎士として気になるのか興奮を隠そうとせずに尋ねとる。


「俺は元冒険の……」

「クマじゃろ?」

「人間だって言ってるだろが⁉︎」


こんな毛深くて厳つい奴が人間なわけがない。絶対獣人じゃ。いや、それ以外は認めてやらん。


「それよりこの嬢ちゃんはだいじょ…… ぶ」


寝かしたブリューフルの方をおそらくは心配したかのような顔を覗き込んだクマの声が徐々に声を失っていくのを見て我は首をかしげる。


「なんじゃ? 死んだか? そやつは殺しても死なないのが取り柄だと言っていたんじゃが?」

「…… 先生、まさか本気で殴ったんですか?」

「まさか?」

「なんで疑問系で視線をそらすんです? 嘘ついたんですか?」


そんなことはない。我はいつも正直者で通っておる。

限りなく全力に近い裏拳ではあったがのぅ。


「で、クマよ。なんでそんな驚いたような面白い顔をしているんじゃ?」


何故か泣き出しそうな顔をしておるクマなんじゃが、泣きそうになっているはずなのに非常に顔が怖い。泣いておるように見えるはずなのに何故か怒っているかのようにも見えるわけじゃし人相が悪すぎる。いや、クマだからクマ相か?


「ああ、すまないな。昔生き別れた家族にそっくりだったものでついな」


ほほぅ、クマの家族というのは非常に気になるものじゃな。

きっとクマと同じような顔をしているに違いない。毛むくじゃらの。

じゃがブリューフルは毛むくじゃらではないんじゃがな。


「そんなにブリューフルとそっくりなのかのぅ?」

「ああ、目元なんてそっくりだ。これが写真だ」


上を向き、涙を堪えるようにして懐から何かを取り出したクマは我らに見えるように机の上にそれを置く。

すかさず我とルーはそれを見ようと覗き込むとそこには綺麗な絵が描かれた紙があった。


「これはなんじゃ? 綺麗な絵じゃが書いてあるのはもこもこしておるんじゃが…… 新しい獣人か?」

「……犬ですね」

「ああ、ビビアンは俺の愛犬だったからな」

「人じゃないのか⁉︎」


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