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ヨルムン、流される

「さ、さすがグスン、先生です」

「あの〜 わたしなんか首が片方向を向いてるんですけど〜」


 街にむかった百足ひゃくあしイノシシはとりあえずはぶっ飛ばし、食べる分は確保できた我は折れた宝剣を胸に抱きながら泣きじゃくるルーと壁にめり込み身動きが取れなくなっていたブリューフルを引っこ抜き、地面に放り投げておいた。


「うむ、まともに食えそうなのは三体かのう」


 一体は我が全力で蹴り飛ばしたが故に天高く飛んでいき、ブリューフルが狩った一体は姿形も残らんかったわけじゃからな。

 壁にぶつかり大量の血を流し倒れておるのと我が力を加減して形が残っておる二体で全部で三体だけじゃな。

 とりあえずはそこらにばらけて倒れておる晩御…… 食料を引き摺るようにして一箇所に集めておく。

 三体分の肉を重ねて見るとかなり威圧感がある光景じゃな。


「こいつは市場に下ろせば結構な値がつくぜ」

「そうなのか?」


 いつの間に出てきたのか我の周りには厳つい顔やゴツい装備を整えた騎士か冒険者かよくわからん輩が集まっておる。ちなみに声をかけてきたのは顔中にやたらと傷がある厳つい輩の中でもさらに厳つい男じゃ。


「おうよ、百足ひゃくあしイノシシはなかなか現れない貴重なやつだからな。まあ、倒そうとしてやられる奴も多いが珍味だ。それを三体ともなるとまともな(・・・)加工ができる奴のところに持ち込めばしばらくは遊んで暮らせるほどの額になるだろうよ」

「ふむ」


 別に金には困ってるわけではないんじゃがな。それに目的は晩御飯の確保。

 これでクマに文句を言われることなく晩御飯を確保できたわけじゃ。これだけの肉の量じゃ。腹一杯に食うことが可能じゃろうな。


「それより嬢ちゃんはもう少し周りの眼に気をつけたほうがいい」

「なんでじゃ?」

「いや、嬢ちゃんの服はいまや裸同然だからな?」


 周りの奴らが顔を赤くする理由はこれでか。

 確かにすでに胸を僅かに隠しておるだけじゃし大して意味はないかのう。

 しかし、所詮は胸など脂肪の塊。こんなものをみて喜ぶような輩の気がしれん。


「裸じゃとなにか困るのかのぅ?」

「おもに男連中の目のやり場にな」

「先生の裸を見る奴からはお金が取れるほどに先生の裸は美しいですよ!」


 厳つい男は面倒げに。ルーは誇らしげに言ってくるわけなんじゃがよくわからん。我の胸に限って言えばさほど食えるほどの量もないと思うんじゃがな。


「まぁ。我が裸なことはどうでもいいことなんじゃよ」

「よくわねえだろ」


 すかさず反論してきよる。

 めんどくさい奴じゃ。人がどんな姿をしていようとこやつには関係ないと思うんじゃが。


「見たけりゃ勝手に見ればいいわせじゃろが……」

「下手したらそこらの娼婦よりいい体をしてる奴だぞ? ガキなんだからそんな見世物にできるか」


 一瞬こやつに我の本当の年齢を言ってやろうかと考えたがすぐにやめた。どうもこの世界の奴らは我の話をまともに聞こうとする素振りが見られん。本当のことを言っても冗談だと取られとるようじゃしのう。

 我も多少は学習しとるわけじゃし無駄なことはせんのじゃ。


「金には困っとらん。じゃからこいつの食べてうまい部分を教えてくれ」

「金には困っとらんって。お前何者なんだよ」


 なんじゃか呆れたような眼で我を見てくるわけなんじゃか本当のことじゃから仕方がない。

 むしろ金よりも食事じゃな。金はあっても大して膨れんからな。前に二、三枚食べてみたが大して上手くもないしさほど経験値も増えやしなかったからのう。荷物がやたらとかさばるだけじゃ。


「とりあえず今は金や裸の話はどうでもいいんじゃよ。そんなことよりも百足ひゃくあしイノシシの解体じゃ」

「いや、大抵の女は金や裸だあとかそういうことを気にするものなんだが??」

「我をその辺の女と一緒にするでないわ。じょしりょくとやらが違うんじゃよ。じょしりょくが」


 ふふふ、我とて最新の言葉を色々と覚えていっているわけじゃからな。


「……どこでそんな言葉を覚えたのかは知りませんが絶対に意味が違いますよぉ?」


 ふふん、ブリューフルの奴は我の覚えた最新の言葉がなにかわからんようじゃな。あらぬ方向を向いとる首を奇怪な音を響かずたびに元の位置に戻そうとしとるがなかなかに怖い光景じゃな。

 ブリューフルへの少しばかりの優越感に浸った我は胸を張りなが再び百足ひゃくあしイノシシへと向きなおる。その際に何故が周りにいた何人かの男共が内股になりながら離れていく姿が見えたんじゃが一体どうしたんじゃろうか?


「先生、とりあえず服きません?」

「やじゃ。それにこのままの方が都合が良い」

「都合がいい?」

「そうじゃ」


 どうせ解体したら血まみれになるわけじゃしな。この裸同然の服装ならば汚れても問題ないわけじゃからな!

 指を揃えて剣のように自分の手を構える。これを手刀というらしい(本で読んだ)

 我の体はバカみたいに硬いわけじゃからな。それをナイフのように構えて我の筋力に物を言わせて振るえば。きっと聖剣ばりの力を発揮するじゃろうよ。


「そりゃ」

「バカ! やめ……」


 それ(手刀)容赦なく眼に前の百足ひゃくあしイノシシに向かい振るってみる。すると百足ひゃくあしイノシシの肉は特に抵抗もなく容易く切り、


「ぬぁぁぁぁぁ⁉︎」

『ギャァァァァァァァァァァァァ!』


 切り裂いた場所から大量の血が流れ出し、その場にいた皆に大きな悲鳴をあげさせた後に溺れさすかのように流していったのじゃった。

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