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ヨルムン、話を聞かなくなる

 ガチャガチャとクマが食器を洗っておる。あんな鋭い爪がついておるくせに意外と丁寧な仕事をしおるようじゃ。


 ゴートゥヘルのカウンターで食事をした我は出されたこーひーとやらを飲みながらクマの仕事を眺めておるわけじゃ。黒い液体のくせにほのかな苦みが良い感じじゃな


「お前さん、仕事とかせんでいいのか?」


 洗った食器を今度は丁寧に布で拭きながらクマが話しかけてきおる。


「金ならあるが?」

「いや、料金を払われるかどうかをしているわけじゃなくてだな。お前さんここ数日ダラダラ過ごしているだくだろ?」

「失礼なことをいうのう。こう見えて我はとても重要なことをしておる」

「ほう?」


 興味が湧いたのかクマが食器を拭く手を止め我へと視線を投げかけてくる。


「息を吸う。息を吐く。これはとても重要じゃろ?」

「確かに生きていくには必須なことだが、あえて意識しなくてもできるような動作だ!」


 そんな怒鳴らんでもいいと思うんじゃがな。よっぽどイラついたのか拭いていた皿がパリンっと軽い音を立てながら真っ二つに割りよった。


「と言ってものぅ。なにもせずとも金がはいってくるわけじゃしな」


 ここ数日は挑戦してくる奴らの身ぐるみを剥いで売却するというのを覚えたからのう。それで金はかなり儲けた。さらには闘技場からの支払いが届くわけじゃし。必死に働いて金をあつめなくていいわけじゃしな。


「お前には向上心とかそういったものはないのか」


 なんなんじゃよ。その呆れるような目は。


「失礼! こちらに〈拾い食いの裸女〉ヨルムン殿がいると聞いて参ったのでゃヒィィィィィィ!」


 ゴートゥヘル入り口に付けられている来客を伝える鈴が鳴り、入ってくるなり失礼な呼び名を大声で叫んだ輩をになにも告げずに近づくと、怒りをぶつけるように拳を腹へとねじり込むように叩き込んでやるとなにやら奇声を上げながら入ってきた入り口へと吹き飛び再び鈴の音を鳴らしながら外に飛び出して行きよった。せっかちな奴じゃなぁ。


 最近はゴートゥヘルにもこんな輩がくるから困る。じゃが〈拾い食いの裸女〉というわけのわからん二つ名の〈拾い食い〉と叫んでいる辺りで反射的に拳を繰り出せるようになってきたわけなんじゃがな。


「お前さん、最近相手の話を最後まで聞かなくなったな」

「どうせ同じようなもんじゃろ?」


 今までじゃって「ランキング貰い受ける!」「その首をいただく!」「彼女になってください!(なぜか鎖を持っておった)」とかばっかりじゃったしのう。もういい加減に聞き飽きたというものじゃ。


「がふぇ…… さすがはヨルムン大先生だ 」

「あぁ? まだいるのかぁ?」


 声の方へと振り向くと扉に片手を付き、兜から血を溢れさし、胸のど真ん中におそらくは我のであろう拳の痕がついている全身真っ黒な鎧が眼にに入った。

 ふむ、今までの奴らは一撃で吹き飛び、すぐには向かって来んかったというのにのぅ。なかなかに根性のある奴じゃ。なんか昔食べた暗黒騎士の鎧みたいに禍々しい感じのフォルムをしておるし、なんか似てるような気がするがあいつ、最後には噛み砕かれた痛みで魂が浄化されとったしなぁ。多分違うじゃろ。

 しかし、大先生とは一体なんなんじゃろうか?


「なにを仰いますか! 」


 ガシャガシャとやかましい音を立てながら真っ黒な全身鎧が我に近づいてきおる。ゴートゥヘルで食事をしていた他の客も真っ黒な全身鎧の姿を見てギョッとしておる。

 我は驚きは線が少しばかり距離を取る。兜から漏れる血が飛んでくるのと鎧のいたるところに取り付けられておる突起物が当たって痛いからじゃ。


「天教騎士団を一団を一人で殲滅し、さらには闘技場に、しかもランカー戦に乱入し二人ともを倒す! こんなことができる人を大先生と呼ばずなんと呼ぶのです!」

「お、おう」


 やたらと気合の入った言葉とさらには血まみれの兜を我の顔に近づけてきたので思わず頷いてしもうた。


「聖剣広場で広場が半壊して天教騎士団が血まみれで倒れてるという噂は聞いたがお前が原因か……」


 睨みつけてくるクマの視線から逃れるべく我は残像が残る程の速度で顔を背ける。


「ええ、国の守護である天教騎士団がたった一人に壊滅させられてしまったわけですからね。国側も大先生の存在は認知していますが現状は放置ですね」


 下手に手を出したらなにが起こるかわかりませんからね。と血塗れの黒騎士が告げる。


「随分と事情通のようだがお前さんは?」

「おっと申し訳ありません」


 今気づいたと言わんばかりに再びガシャガシャと音を上げながら身に付けていた鎧を手際よく脱ぎ始めていく。


 やがて鎧を全て脱ぎ終えた後にに出てきたのは男か女かよくわからん顔つきをした金髪の人物じゃった。名前を聞けばわかるんじゃろうか?


「では失礼して。私の名前はギャン・ガ・ルーと申します」


 名前を聞いても男か女かわからん名前じゃった。


「もしかして貴族のギャン家か?」

「はい、一応貴族の位を皇帝陛下より賜っております」


 ふむ、きぞくという言葉を聞いてからクマがなんか驚いておるようなんじゃがよくわからん。


「のう、きぞくとやらは喰えるのか?」

「「え?」」


 我の言葉にクマだけでなくギャンまで大きく見開いとるんじゃがそんなに大きく開けたら瞳が乾いたりせんのじゃろうか?

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