ヨルムン、二つ名を頂戴する
「あやつ本当にサリハルなんじゃろうか?」
サリハルらしき奴を星にしてしばらくしてから再び買い食いに戻った我じゃったが気になりすぎて食べ物が…… もぐもぐ…… 喉を……もぐもぐ…… 通らん。
ごっくん。
まだ焼き串を十本ほどしか食べておらんわけなんじゃが。
正直落ち着いて食べれる状態ではないんじゃよな。というのも。
「貴様が昨日闘技場で暴れた〈拾い食いの裸女〉ヨルムンか?」
また、歩いている所を背後から呼び止められたので我は深々とため息をつきながら振り返る。するとそこにはやっばりというかなんと言うか、完全武装した男が立っておるわけで。
「いや、ヨルムンではあるんじゃがその名前の前についておるやつは一体……」
「貴様を倒し! 闘技場のランキング七位の座は俺がいただく! 覚悟!」
手にした武器を振りかざし周りに同じ人族がいるにも関わらず、そんなこと御構い無しに斬りかかってきよる。周りの奴らはというとこういったことには慣れておるのかすかさず怪我を負わん程度のスペースを作りおった。
我は再び深ーいため息をつくとこちらに斬りかからんとする男の方へと体を向ける。片手は焼き串が入った袋を持っているので空いている手を軽く構える。
「きぇぇぇぇ!」
奇声を上げながら振り下ろされる剣に合わせるようにして拳を叩きつけると大した反発もなく剣は砕け散り、周囲に鉄の破片をばら撒きキラキラと輝きよる。突き出された拳は剣を砕くだけでは止まらずに勢いをつけてこちらに迫る男の顔面へとぶつかりおる。
「ふんが⁉︎」
声が聞こえたときにはすでに男は背後に吹っ飛んでおり、大通りをゴロゴロと音を立てながら転がり、吹き出した血で汚していきおった。
「はぁぁぁぁ」
突き出した拳を弾きながら三度目の大きなため息を吐くと入れ替わりに我らを囲んでいたかのようにして見物していた野次馬共が大きく歓声を上げる。
「また一撃だぜ!」
「剣を軽々と砕きやがった!」
「くそ! 今日は全裸にならなかったのか」
「……あの足に踏まれたい」
すでに我がわけのわからん決闘を受けるようになってすでに四度目になるわけなんじゃが、なんで彼奴らはそんなに闘技場のランキングに拘るんじゃろうか? あとなんじゃ、あのわけのわからん呼び名は。〈拾い食いの裸女〉って誰が呼びよったんじゃ。
「のうのう」
「ん、なんだ?」
とりあえずは気になった事は聞いておかんと気持ち悪いから近くで戦い…… と呼べるかどうか判断に困るものを見ていた奴へと声をかけてみたわけじゃが。
「闘技場七位ってすごい事なんじゃろうか?」
「いや、闘技場七位ってお前だろ?」
「そうなんじゃが、それでなんで狙われるかよくわからんのじゃ」
こんなに狙って来られると落ち着いて食事もできんからのぅ。
「闘技場の十位以内に入っているならばバカみたいな額のランカー給金がでるだろ?」
「ランカー給金?」
なんじゃそれは?
「闘技場のランキングトップ十位以内に入っている奴に一週間ごとに払われる金だよ。ランク十位でもしばらく遊んで暮らせるような金額だからな。野良試合でも負けたらランクが下がるからそれで挑まれてるんだろ」
「ふむ、金目当てか」
なるほどなるほど。確かに襲われる理由としては十分なような気がするが。
「襲われる理由はわかった。じゃががなんで我の名前の前に変な呼び名をつけるんじゃ?」
「二つ名のことか? あれは親しみを持たれるように考えられてるやつだな。お前さんのは〈拾い食いの裸女〉だったが、今までで一番ひどいぞ」
〈拾い食いの裸女〉…… もうただの変態にしか聞こえんのじゃがな。
「聞いた話では闘技場の運営連中が徹夜で白熱した会議してつけた二つ名だとかな。あと白熱しすぎてけが人が出るくらいだったらしいぜ」
「うん、そいつらバカじゃろ!」
人間の情熱とは時として意味のわからんもんに向けられるのじゃな。今、現在に限って言えば凄まじいまでに迷惑なんじゃが。
白熱するのか? 人に意味のわからん名前をつけるに。
「〈拾い食いの裸女〉のヨルムンとお見受けする! 吾輩の名は……」
「やかましいわ!」
後ろからまた変態的な呼び名で呼ばれた我は振り向きざまに拳を作り背後で武器を持ち堂々と立っていた輩に再び拳を叩き込み空高くへと吹き飛ばしたのじゃった。




