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ヨルムン、食べ放題の席に着く

 朝日が眩しい。

 鳥がやかましく鳴いておる。確かあれホーロー鳥とかいう鳥だった気がするのう。昔丸呑みにした時にいい味が出でいたような気がするんじゃがこの体で食べてもうまいんじゃろうか?

 そんなことを考えたながら名残惜しくもふかふかから脱出するとお腹が鳴ったのでとりあえずは昨日食べかけの肉を再び手に取り頬張るとする。


『未知の味を取得しました。経験値を120入手しました』


 相変わらずこの肉だけは何回食べても経験値が入ってくるんじゃが…… 一体なんなんじゃろか? 後で調べた方が良い気がするの。今の所は特に体には経験値が入る以外に変化は見られぬが今後が怖い。


「それよりはまずは食べ放題じゃな!」


 まずは腹を満たすところから始めなければないじゃろう。

 朝の食事は1日の活力じゃからな。世界蛇で暴れまわっていた時も朝の食事がわりに海水をたらふく飲んだものじゃ。

 ……今考えると腹が減ったからといって水を飲み続けるというのは大分頭が狂ったような思考じゃったかもしれんな。


 とりあえずは大皿に乗っていた肉はほぼ食べきってしまったので残りの肉を齧りながら部屋から出ると腹を刺激する良い匂いが漂っておる。うむ、これは期待できそうじゃな。

 浮かれる気分を抑えながらテンポよく飛び跳ねながら我は昨日受付をした場所にやってくると昨日と全く同じ場所に全く同じにクマがおった。


「だからの? クマは宿におった、いかんのじゃぞ? 森とか川とかにおるんじゃそ?」

「お前…… 起きてきて一番に発する言葉がそれか……」


 受付のカウンターに飛びつ親切心からそう告げてやるとクマは何か嫌な物を見たかのように我の方を見ると深々とため息をつきよった。

 なんなんじゃろ?


「それでなんのようだ」

「うむ、あの部屋にあったふかふかするやつはなんというんじゃ?」


 いつまでもふかふかとした物と呼んでおっては何かわからんしの。今後もレベルを上げながら旅をするのであればあのふかふかしたやつがあるところに泊まりたいからのう。


「ふかふかしたやつ? ああ、ベッドのことか?」

「あれはベッドというのか! あれはいいものじゃな! 寝てても体が痛くならんし地面で寝るとは大違いじゃ」

「……お前は日頃どんな場所で寝泊まりしているんだ」

「うん? この体になってからは大体が地面で寝ておるが?」


 封印が解かれてからはしばらくは孤島で寝泊まりしていたわけじゃし、そのあとはイーサンの船の上じゃったわけじゃし少なくともまともに寝たことはなかったかのう。

 そんなことを考えているとなぜかクマから哀れみのこもったような視線を向けられとるわけなんじゃが一体どういうことなんじゃろうか? 心なしかクマの眼に涙が浮かんでいるような気がするんじゃが……


「グズっ、辛い生活を送ってきたんだなぁと」

「え、うん? まぁ辛くはなかったぞ?」


 泣きながら語ってくるクマにびっくりしながら我は一歩後ろへと下がる。だって涙とか鼻水がこっちに飛んできそうでばっちかったんじゃ。


「それで今日は食べ放題なんじゃろ? 今日は腹が減ったからのう」

「……お前あれだけの肉をもう食ったのか?」

「あん? あんなもんおやつみたいな量じゃろ?」

「普通に大人なら五、六人分くらいあったんだがな……」


 いや、そう言われてもぺろっといっただけじゃしな! ぺろっと。

 どちらにしろあんなもんでは全く足りんわけじゃし。今の我の胃袋の標的は完全に食べ放題の方に向いてるわけじゃしな。


「むしろ食べ放題に参加させんとかぬかしよったら暴れるぞ? 詳しくいうとこの宿が跡形もなくなるくらいにあばれるぞ?」

「食べ放題のためにそんな脅しをかけてくる奴というのもはじめてだよ。まあ、いい席につきな」


 親指を立て空いてる席を指差したクマに満面の笑みを浮かべると我はウキウキした気分でその席へと向かうのじゃった。

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