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ヨルムン、憐れまれる

 人の溢れた街中を歩きながら我は顔をしかめる。

 というのも受付の娘から貰った服というのがあまり着心地がよくないのが問題じゃ。大きさ的にはちょうどであるのじゃが、


「なんか胸元がスースーするぞ? あとゴワゴワするし」


 イーサンがくれたローブは着心地がよかったんじゃがなぁ。

 胸元を叩くとパフっと音を立てながら隙間から空気が漏れてくる感じからしてあの娘、意外と胸があったんじゃな。

 なぜじゃか闘技場で闘った時よりも微妙にダメージを受けながら受付嬢から貰った地図を見ながら宿をめざしているわけじゃが。


「ここはどこじゃ?」


 よくわからん場所に来た。

 おかしいのぅ。地図を見ながら歩いておったんじゃが。

 まぁ正直見ているだけで地図の見かたなんて全くわからんのじゃがな。


「あ、おねーさんだ」

「ん? ああ、さっきのちっこいのか」


 我に話しかけて来たのは先ほど我を闘技場へと連れて行き、しょうかいりょうとやらをちゃっかり手に入れておった少女じゃった。

 手には先ほどまで手にしていなかった大きな袋を持っておった。


「おねーさんのおかげで大儲けだったよ。紹介料を全部おねーさんに賭けたら小遣いがすごく増えたよ」

「うむ、よくわからんが増えたのならいいことじゃな」


 かけるとは一体なんのことなんじゃろうか?

 よくわからんが少女は嬉しそうなんで頷いておくとしよう。


「それでおねーさんはこんな所で何をしてるの?」

「うむ、ここに行きたいんじゃが行き方がわからんのじゃよ」


 いいタイミングだったので少女へ地図を広げて見せ、宿屋のバツ印がついたところを指差す。


「ううん? おねーさん、ここ反対方向だよ」

「なんと……」


 知らずに反対に歩いていたというのか。我、なんておっちょこちょいなんじゃ。


「わたしの家もそっちだから一緒に連れてってあげるよ〜」

「うむ、心強いのぅ」

「おやすいごようだよ。おねーさんはこれからも稼いでくれそうだからね」


 何気に発言が腹黒く感じるのは我だけなんじゃろうか?

 こうして我は少女に先導されながら宿屋へと向かうのじゃった。


 ◇


「ここだよ」

「ここか」


 少女に手を引かれることしてしばらく。ようやく(・・・・)宿屋へとたどり着いた。


「随分と時間がかかったのう」

「それはおねーさんがあちこちに目を離した隙に姿を消すからだよ」


 うーむ、我はここまで方向音痴だったとは…… よく考えれば昔はそんな何処かを目的にしながら移動したことはなかったからのぅ。とりあえず適当に移動して目に付いたものを喰ってただけじゃし。


「で、ここがやどやのぅ?」

「うん、ここが宿屋、ゴートゥヘルだよ」


 なんじゃ、ここのやどやとやらは利用した奴をぶっ殺したりするところなんじゃろうか? あの世へ直行されるんじゃろうか?


「…… やどやとは一体何をするところなんじゃ?」

「え? 寝るために泊まったりご飯食べたりするところだよ?」


 泊まる? 食事をする場所というのは意味がわかるんじゃが寝るために泊まるとはどういうことじゃ?


「寝るための建物なんぞがあるんじゃなぁ」

「え、おねーさん。宿屋に泊まったことないの?」

「うむ、大体がそこらへんで寝ておったからのぅ」


 世界蛇じゃっだ時はそんな場所はなかった…… というか我の体が入るような大きさの建物はなかったからかのぅ。


「おねーさん…… 意外と苦労人?」

「なんでそんな憐れまれるような目で見られるのかはわからんがそこまで苦労はしておらんぞ?」


 天使に封印をされた時も退屈ではあったが大して出る努力もしていなかったから苦労はしておらんかったしの。


「まぁ、何事も経験かの」

「おねーさん、強く生きてね」


 じゃからなんでそんな眼を向けてくるんじゃよ。

 別に我は可哀想な奴ではないんじゃが。

 しかし、言い返したらまたなにかを言われそうだと思ったので少女に特に何も言わぬまま我は宿屋の中へと入ったのじゃった。

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