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封印なう2

「今日も暇じゃのう」


 目を開けても閉じても暗いこの空間に我、若干うんざりしておる。

 寝ても覚めても退屈なわけじゃしうんざりなわけじゃよ。


 そんな風に思い、ため息をつき、再び床に寝転がりしかたなしに惰眠を貪ろうと目を閉じたわけなんじゃが。


 ピンポーン


 と、この結界の中に鳴るはずのない音が鳴り響いたのである。

 結界の中にいるのは我だけであるから自然と音をだす存在も我だけに限られるわけなんだが、なぜか音が鳴っていた。


 ピンポーン


 突然のことでしばらく硬直していると再び音がなる。

 音が鳴るほうへとペタペタて音を立てながら歩いて行くとそこにはいつできたのか重苦しい雰囲気を纏った鉄の扉が静かに取り付けられてあった。


「なんじゃこれは?」


 ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン


 連打である。なにかよくわからないが連打である。隣に家などがあれば確実に、いや、その家の主人からしても凄まじいほどに迷惑なくらいな音が鳴り響く。

 仕方なしに扉の取っ手を握り、かなりの重さを感じながらも中へと扉を開ける。


 瞬間、大量の海水が結界内に流れ込んできた。


「がぶぅ⁉︎ がはぁ」


 突然、勢いよく流れてきた海水に抵抗できずに我は結界内をグルグルと流される羽目となったわけなんじゃが。


「あぁぁぁぁぁ、助けてくださぁぁぁぁぁい」


 なぜか我と一緒に流されとる綺麗な金の髪の阿呆が目に入ったのじゃ。初めは流されるという新体験に心がすこ〜しばかり踊ったわけなんじゃがの。我、もとは蛇だし! 泳げたわけじゃし!


 しかし、あんまり海水に入ってこられると困るわけであるからして。流れに逆らうように水の中を(・・・・)歩き開け放たれた扉を単純に力任せに蹴り飛ばす。

 蹴り飛ばされた扉は壊れることもなく元の位置に収まるとキッチリしまったわけじゃ。

 それを見届けると水面を目指し軽く飛ぶ。水面に顔を出すとぐったりとした様子の金髪が死体のように、巨大な胸が島のように浮かんでいた。


「起きよ」


 とりあえず近づいてぐーで殴ってみた。そしたら金髪が「グハァ!」とか悲鳴を上げよった。


「い、いったい何が?」

「いや、お主こそ何もんじゃよ?」


 お腹を押さえながら周りを見渡した金髪に呆れるように言うとようやく我に気付いたようだ。


「あ、こちらjgadtjhdtgamさんの結界でしょうか?」

「は? なにをいっとるんじゃ?」

「いえ、ですからjgadtjhdtgamさんの結界ですか?」

「声が小さい! もう一度!」

「だ・か・ら! jgadtjhdtgamさんの結界ですかぁぁぁぁ!」

「もっと心を込めて大きな声で!」

「こちらjgadtj「うるさぃわぃ!」


 うるさいからとりあえず柔らかそうな頰っぺたを殴って静かにさした。しかし、こいつノリがいいのう。我が必殺のぐーぱんちを喰らった金髪は頰っぺたを抑えてなにやら水しぶきを上げながら呻いておった。


「とりあえず、この水をなんとかせよ。おちおち会話もできん」

「ふぁ、ふぁい。ふぁふぁふぃました」


 大きく頰っぺたを膨らました金髪がなにやら唱えると結界内に並々と溢れていた海水が一瞬にて消えよった。結構な高さまであった水が消えたので我と金髪はそれなりの高さから床へと落下していく。

 我は落下と同時に床へクレータを作り上げ、金髪のほうは顔から突っ込むと声にならない悲鳴を上げて顔を抑え転がりまわっておる。


 こいつ、なにしに来たんじゃろ?

 いまいちよくわからん。


 とりあえずは久しぶりに動いているものを見たわけであるからにして、ちょっぴりの好奇心と共にしばらく観察していることにしよう。


 少ししてよろよろと顔を抑え、金髪はなにやらぶつぶつと言いながらゆっくりとした動作で起き上がってきた。

 耳を澄ましてみると「大丈夫、大丈夫よブリューフル! あなたなら、あなたならできるわ! そうよ! 私ならできる!」となにやら自己暗示めいたものが聞こえてくる。

 はっきり言って不気味すぎる。


「んん! 改めましてこんにちはjgadtjhdtgamさんですね」

「我はそんなやつ知らぬぞ」

「え、そんなはずは…… 住所はここのはずなのに」


 否定すると途端にオロオロとし始め何かの紙をめくって確認し始めてるしのぅ。

 なんじゃろこの生き物。


「とりあえず! ここに住んでる人ですね!」


 確認するのを諦めたのか我をビシっという音がなりそうな勢いで指差してくる金髪。


「いや、住んでるわけではなく封印され「おめでとうございま〜す」


 我が喋っているのを遮るかのように拍手をしながら言葉を重ねてきおった。


「なにがおめでたいんじゃ?」

「はい! このたびあなた様は封印から解放されることとなりましたぁ〜」


 再びパチパチと拍手をしながら嬉しそうに語る金髪に我は疑いの目を向ける。だってそうじゃろ? いきなり現れて海水でずぶ濡れにしたあげくに封印から解放とか言われても微塵も信用できんし。


「あ、その目は信用してませんね? 大丈夫です! 私は神の作り出した最上級四天使の末席、ブリューフルですから!」

「最上級天使?」


 名前は聞いたことないがその肩書きはなんか聞いたことがある気がするのう? どこでじゃろ?


『わ、私は神に仕える最上級天使の中では一番胸があるほうなんでスゥゥ!』


 あ、我をぶった斬りにした奴ではないか。それと同じじゃし。

 すぐに思い出せなかった、やじゃのう、年は取りたくはないのう。


「我を封印したやつと同じ奴じゃな」

「はい、セラフィーは私の姉にあたります。姉様より封印の担当をひきついだので、あのクソ姉め、なにさっさと寿退社とかしやがって」


 なにやら黒い思念が笑顔で漏れておるのはなかなかに異様な光景じゃな。なまじいい笑顔なだけによけいである。


「ん? 封印の担当が変わるだけなら我を封印から出すこととは関係ない気がするんじゃが」


 だって、一応神側からみたら悪いことをしたから封印されたわけじゃしの。


「あ、それなんですけどね。あなたの貢献度ポイントがすごい勢いで加算されてまして」


 なんじゃ貢献度ポイントって。


「それはですね」


 我の顔に疑問の色が出ていたことに気づいたブリューフルが軽く手を振りかざすと虚空よりやたらと分厚い本が現れ彼女の手に収まる。それを開くとページをパラパラとページをめくり目当てのものを見つけたのか笑顔をこちらに向ける。


「では軽く説明いたします。貢献度ポイントとは簡単に言いますとどれだけ人の役にたったかというポイントです。行動によってポイントはかなり違いますがあなた様はかなりの高ポイントを約千五年ほど叩き出しています」

「あ? 我、封印されていただけなんじゃが?」


 封印されているだけでポイントがたまるとか、我はどれだけ人に邪魔者扱いを受けてたんじゃろか。我、それなりにショック。


「いえ、厳密に言えばあなた様が封印されたことではなくバラバラに切り刻まれたあなた様の肉体ですね」

「我の肉体とな?」


 そういえばセラフィーと戦った時にだいぶ切り裂かれまくった気がするのう。なにせ最後は頭部だけであったからの。


「セラフィー姉様とあなた様が闘った跡地なんかは再び作物が実るのに約千年ほどかかるくらいの荒廃ぶりでしてね。そのままじゃ、星に住む生物が全滅しちゃうんじゃないかなぁってとこまでいってたんですよ」


 あやつ、天使のくせに世界滅亡の手助けをしとったわけかなんて奴じゃ。しかし、それなら貢献度ポイントとやらも減ることはあっても増える要素はなさそうじゃが。


「そこであなた様ぶつ切りにされた例の肉なんですが、これがとても高カロリーらしくてですね。それに腐らない、量が多いといいとこ尽くめでして。さらにはセラフィー姉様が世界中のあちこちに切り飛ばしたものですから運良く世界各地に食料がまさに降ってわいたわけなんですよ」

「まぁ、その切り飛ばした肉の下敷きになったせいで幾つかの文明がほろびたんですがそれはセラフィー姉様の給料から差っ引かれたので問題ありませんよ? むしろザマァ! みたいな感じです」


 こやつ、ところどころで黒いのう。


「そんなわけで本来なら死ぬはずだった人たちを救ったということで毎年のように高ポイントを獲得し続けたあなた様は封印より解放されることとなったわけです」

「なるほどのぅ」


 ようは我の肉が美味であったがために人々を救ったわけか。納得納得。


「というわけで人間の言葉で言うところの釈放ってやつです」


 しゃくほうとやらがなにをさすのかわからんがとりあえずはこの窮屈な空間から抜け出せるというのは喜ばしいことであるのぅ。


「それじゃ、封印解きますね」


 なんの気なしに言い放ったブリューフルの言葉になんとなく嫌な予感がよぎる。そしてそれに気づいた瞬間に我は慌てたようにブリューフルに向かい手を伸ばす。


「まて……」

「封印解除!」


 ブリューフルの言葉とともに我を封じ込めていた黄金の鎖がたやすく弾けとぶ。

 そしてそれは当然この空間の守りの消失を意味するわけで。


「あほう! 封印解除をいきなりやったら海水が来るじゃろが!」

「あ……」


 我の怒鳴り声に今頃それに気づいたかのような間抜けな声を上げる。しかし、時すでに遅し。金の鎖が消失した瞬間に空間を侵食するが如く海水が流れ込む。


「みゃぁぁぁぁぁぁぁ!」

「このアホ天使がぁぁぁぁぁ!」


 アホ天使の悲鳴と我の罵声は長くは続かず、すぐに迫った大量の海水に飲み込まれたのじゃった。

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