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ヨルムン、突っ込む

 凄まじい速度でこちらに迫るバルドルを見ながら我は一つ欠伸をすると拳を作りきく振り上げる。


「お主に勝機などないわ! たわけが!」


 そのまま拳を元リングに叩きつける。するとその衝撃が伝わったかのようにリングのいたるところに亀裂が入り始める。その亀裂はこちらに向かい駆けてきていたバルドルの足元にも及んだようじゃ。


「ちっ!」


 小さく舌打ちしたバルドルは駆ける速度を緩めるとる。

 駆けている場所に亀裂が走り、さらには揺れるとあっては全力で駆けることはできまい。そこまで考えた我はなんて知的なんじゃろうか!


「ほれ次じゃ!」


 反対の手で再び拳を作り上げ今度はリングに叩きつけた後にすくい上げるようにして放つ。すると亀裂が入ったリングは巨大な石の塊と化し非常。速度を緩めたバルドルへと襲い掛かった。

 苦い顔をしたバルドルであったが退路はないと考えたのか槍を振るい石の塊に打ち付ける。石は切断されることはなかったが僅かに軌道を変えていっとるるようじゃな。しかし、石の塊に槍がぶつかってはおるが直撃は躱せんようで石の塊がぶつかるたびにバルドルの体のあちこちから血が吹き出しておる。武器はともかくとして彼奴の体がもっておらんようじゃ。


「ぜんりょくぜんかい!」


 石がバルドルの視界を妨げ、さらには傷を負わしている間に我は両手を地に付け、血を這うような獣のポーズをとると脚に力を込める。


『ヨルムン、妙な構えをとっているぉ! あの構えには何らかの意味があるのかぁぁぁぁぁぁぁ!』


 声がうるさい。やたらと頭に響くしのぅ。

 これ以上戦闘を続けると声のせいで頭が痛くなりそうじゃし目の前の若造をとっとと泣かすことにしよう。


「ヨルムン……」


 脚の力を一気に解き放ち、駆ける。

 バルドルに向かい飛ぶ石の塊よりも早く、たまに石が我の顔を当たるがそんなものは無視して更に加速して駆ける。


「な、なんだ⁉︎」


 槍で石を弾いていたバルドルが爆音を響かせリングを砕きながら駆ける我に気づいたようで驚愕の表情を浮かべ、声をあげておるが我は口元に笑みを浮べながら更に足を踏み出し跳ぶ。


「ヘッドアタァァァァァァック?」


 今考えた適当な技名を叫びながらバルドルの腹へと頭から飛び込んだ。


『頭からつっこんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』


 声が見たまんまの事を言っておる。

 頭が触れた瞬間、ミシリと何かが軋み、砕けるような音が響きバルドルが悶絶するような息を漏らす。

 かなりの速度が出たものは言うならばかなりの威力の砲弾である。ましてや我の体はめちゃくちゃ硬い。そんなものが突っ込んできたと考えると我でも震えるくらい怖いもんじゃ。

 飛び込んだ我の勢いはバルドルにぶつかっただけでは収まらなかったようで下を見るとバルドルの足も地面から離れ宙を浮いている状態のようじゃ。

 ちょっとした浮遊感を味わっていたわけなんじゃがすぐに体を馬鹿でかい衝撃が襲う。


「ぬあ⁉︎」


 バルドルにさらに顔を押し付けられるような形になったため思わず声が漏れ、その間に宙に浮かぶのが終わり、さらに何か…… というかバルドルの骨らしきものが折れる音が耳に入り音を立てながら顔面から地面に落下した我は衝撃に顔を押さえながら転がり回る羽目となった。


「あぁぁぁぁ、顔からいったぁぁぁぁ!」


 傷はないが衝撃は痛い。それが身構えていなかった衝撃なら体感的に倍くらい痛い。


 顔を押さえながら立ち上がると目の前には闘技場の壁にめり込み胸が凹んでいるバルドルの姿が目に入る。

 死んでいるかと思ったが白目を剥いて痙攣しているだけのようじゃな。


『バルドルたてなぁぁぁぁぁい! いや、そもそも生きているのかぁぁぁぁぁ⁉︎ 俺なら確実に即死だぁぁぁぁ!』


 いや、生きとるじゃろ?

 見えんのかのう。


『この闘技場ランキング八位と七位の戦闘に勝利したのは乱入戦で参加した無名のヨルムンだぁぁぁぁ!』


 え、七位と八位ってかなり高位のやつなんじゃないかのぅ⁉︎

 再び盛り上がったかのように歓声が上がる中、一応申し訳程度に手を振りながら潰した相手が思ったより上だったことにびっくりしていた我であった。

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