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ヨルムン、放り投げる

 口らか何かが放たれるような感触を確かに感じるのう。

 しかし、昔に放ったブレスの感触ではない。

 口から出ているのは昔に出していた炎のブレスではなくただただ銀の輝きなんじゃがこれはなんじゃろ?

 我が首をかしげるとその首の動きに連動するように放たれているブレス? も角度を変え、当たる予定のなかった騎士団の面々にも直撃する羽目となった。


「な、なんだこ、かはぁ⁉︎」

「なんだなにか飛んでぺぇ⁉︎」


 我のブレス? に当たった奴らの体に次々と小さな穴が開いてゆく。それもおそらくは鉄製である彼らの鎧を容易く貫いていっておる。それどころか運が悪ければ体が弾けとるのう。

 んー? どう見てもブレスではないのう。

 どちらかといえば先ほどまで騎士供が撃ってきた銃に近い気がする。

 ただ違うのは我が放っているブレスもどきは銃よりも明らかに強い。

 それも暴風のように吹きひたすらに蹂躙を続けている。


 くぅぅぅぅぅ。


 ブレス? を吹いていると急速にお腹が減り始める。

 さっきまで食べとったんじゃがのう。

 お腹を押さえながらブレス? を吐くのをやめる。すると眼前には破壊され尽くした店や地面のいたるところから白煙が上がっており、さらには周囲には血の匂いが充満しておる。周りには人の形は見えんのじゃがなんかこびり付いたみたいなミンチ肉とかもあるし。


「さすがにあれは食べる気がせんのぅ」


 なんとなくだがあれを食べたらすごい経験値が入るという予感が働いておるが同じ人型であるからか食欲が微塵もわかんのじゃ。


「ん?」


 口の中に何かが引っかかったような感触があったので手を口の中に手を突っ込み違和感の元を取り出し掌に転がす。


「なんじゃこれ?」


 我の口から出てきたのはやたらと硬い小さな塊だった。といっても我が本気で力を込めれば潰れるほどの硬さじゃな。


「しかしこの硬さ…… 我の力なら潰せるが普通の人間ならひとたまりもないじゃろうな」


 というか今、目の前に転がっておる元人間たちがその威力を証明してくれておるわけじゃし。


「これ、もしかしたら我が食ったやつか?」


 掌の上にあるのは色々な色が混ぜ込まれた塊のようじゃ。我の新たなスキル、ブレスには確か〈リバース〉とかいう表記がされてあったしのう。リバースが吐き出すという意味ならば我のブレスは胃の中にあるものを吐き出して放っていることになるのぅ。


「ま、強くなる分には問題あるまい」


 あっさりと考えることを放棄した我は煙の上がる広場の出口を目指し歩き始める。

 周りにできている血だまりをかわしながらスキップを踏むようにして進んでいく。


「ああ、そういえはあれはどうするかのう」


 ステップを踏んでいる途中で先程放り投げた聖剣が転がっているのに気づきます。結構な数を斬ったはずなんじゃが刃は全く血に濡れておらぬのう。

 血溜まりの中でも輝く聖剣を拾い上げる。


「で、お主はどうするんじゃ?」

『はっ! 私は一体……』


 こいつ意識を失っておったのか。

 いや、そもそも剣が意思を持つことがおかしいんじゃよな。


「なんならもう一回台座ごと開いた穴に無理やり突き刺してやるが?」

『いや、台座に戻るのも嫌ですがあなたを勇者として認めるのも嫌なんですが……』


 こいつ、わがままじゃな。

 いっそ地面にでも埋めてしまってもいいんじゃがな。一応知り合い? とも呼べる間柄なわけじゃし。


『そうですね。新たな勇者候補が見つかるまではあなたと旅をするのも悪くないかもしれないです』

「……」


 えー、こいつの物言いだと聖剣が勇者を見つけるまで聖剣(これ)を連れてあるくことになりそうじゃな。

 それは非常に面倒じゃ。


「よっと」


 掴んでいた聖剣を柄と台座が突き刺さった刃先の方を挟むようにして持つ。


『何をする気です?』

「こうするんじゃ」


 ふぬっ! と両手に全力の力を込め押しつぶすようにしていきます。


『わぁあぁ⁉︎ 何してるんですか⁉︎』


 フラバランフが悲鳴を上げておるが力を緩める気は一切ない我はさらに力を込め聖剣を歪め、徐々に剣の形からかけ離れた姿を変えてゆく。


「ふぅ、こんなもんじゃろ」


 額に浮かんだ僅かな汗を拭うとなんとなくやり遂げた感が湧き出てくるのう。

 けっこうな力を込めた結果、聖剣は完全に剣の形ではなくただの金属? の手の中に収まるほどの小さな球体へと変貌を遂げたんじゃ。


『な、なんてことをしてくれたんですか!』


 喚いてくる聖剣の声を流し空へと放り投げて遊んでいた我だったが。球体と化して落ちてくるフラバランフを掴むと。


「てりゃぁぁぁぁぁ!」

『えぇぇぇぇ……』


 全力で放り投げた。

 フラバランフの叫び声が聞こえたがそれも遠くに飛んでゆくにつれ小さくなりやがては聞こえなくなった。

 最後に空がキランと光ったような気がするのう。

 方角? 知らん。あのまま連れていくのはめんどそうじゃからとりあえず投げただけじゃし。


「んー、これで厄介ごとはなくなったのう」


 こうして我は体を伸ばした後に血塗られた広場を後にするのであった。

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