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ヨルムン、聖剣を黙らす

『あぁぁぁぁぁぁぁ! か、神によって作られた私の剣としての美貌がぁぁぁぁ!』


 ガンガンと頭に響くような声でひしゃげた聖剣、フラバランフが絶叫しとる。いや、我にし聞こえないからと言って力の限り叫ぶのはやめて欲しいんじゃがな。


「ぬ、抜きやがったぜ」

「おい、あの聖剣なんかひしゃげてないか?」

「いや、あれを抜いたと言っていいのか? 台座がくっ付いてるぞ?」


 周りも我が聖剣を抜いたことに気づいたようで徐々にではあるが騒がしさがさっき以上に大きくなった気がするのぅ。


『わぁぁぁぁん! わたし、わたし二回目に引き抜かれるのもワタル様がよかったのにぃぃぃぃ! びぇぇぇぇん!』

「お主うるさいのぅ。それにワタルとやらはお主の元持ち主じゃろが。人間ならとっくに死んでおるわ」

『やぁだぁぁぁぁぁぁ!』


 知的な喋り方をしとった気がするんじゃが今のこやつはただの駄々っ子、いや剣だから駄々っ剣か?


「びぇぇぇぇん!」


 いつまでたっても泣き止まんのう。しかもどういう理屈かわからんが剣から水が降っておるし、というかこれは涙なんじゃろうか? こちらにかかってくるみたいじゃしばっちい気がするのでとりあえず聖剣を振り上げ、勢いよく地面に叩きつけた。


『あだぁ⁉︎ ちょっと⁉︎ 仮にも私は聖剣ですよ!』


 さっきまで泣いていたのが嘘のように抗議の声を上げてきよる。

 ゴンという音がなり聖剣が叩きつけられたにも関わらず、聖剣の先にくっついた台座は壊れもしなかった。

 ふむ、この台座も聖剣と同じような材質でできているのかもしれんのぅ。

 まだぎゃーぎゃーと喚くフラバランフにイラついた我は再び聖剣を振り上げ、さっきより力を込めて振り下ろした。


「うっさいわ!」

『いたぁぁぁぁぁい!』


 聖剣が再び悲鳴みたいな声を上げ、剣先を振り下ろした地面にヒビが入り大地が軽く揺れる。

 しかし、硬い。かなり力を込めてやったんじゃが一緒に引っこ抜けた台座が壊れる様子が全くないのう。

 グズグズと泣き言を言い続ける聖剣は無視して我はひたすらにくっついた台座を壊すべく聖剣を地面に叩きつけ続ける。

 また聖剣が悲鳴をあげるがどうせ我にしか聞こえてないわけじゃし無視。止めるどころかさらに力を加えスピードを上げてやる。


 ガガガガガガガガガガガガ!


 もはや音の途切れる瞬間がわからないほどの連打。それでも台座は壊れてはおらんのじゃよな。


「なんなんじゃ! この台座は!」


 イラつきながら手にしていた聖剣を乱暴に放り投げる。乾いた金属音が響きそれをしばらくの間拾っては投げるという行為を続けるといつの間にか聖剣は一言も喋らなくなっておった。昼寝でもしとるんじゃろうか?


「あー、無駄な運動したから腹が減ったのう。なんか買って食うかのぅ」


 体を伸ばし、くぅ〜という音がなる腹をさすりながら周りを見渡す。が、


「ん? なんじゃ? 誰もおらぬじゃないか」


 よく見れば先ほどまで道を埋めつくさんとばかりにいた人が全く見当たらん。それどころから周りの店でなにかを売っていた奴らの姿も全く見えなくなっていた。


「困ったのう。人がいないと食事ができんぞ。それに聖剣(あれ)を買い取ってもらおうにもどこに行けばいいかわからんし」


 とりあえずは放り投げた聖剣を拾い上げ、ズルズルと引きずりながら広場を後にしようと決心する。


『そこまでだ! 破壊者め!』


 突然大声で怒鳴られた。

 え、破壊者って我のことか?

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