移行開始
ここは、電子世界だ。
僕は松田匠。この電子世界『メイズ』の住民になる。
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チュンチュンと、鳥のさえずりが聞こえてくる。待ちに待った朝だ。いつもなら二度寝するところだが、起きよう。
何故待ちに待ったかって?それは、現実世界データ化の実行日だからだ。
「おはよう、タク君。」
僕の姉だ。頭はいいし性格もいい。僕みたいな甲斐性なしの生活力もないバカとはスペックが大違いだ。本当にこの人は姉だろうか?と思うほど。
「おはよう姉さん」
「今日が電子世界、メイズへの移行日でしたね?気分はどうですか?」
「最高だよ!」
「そうですか。前から思っていましたが、実にわかりやすい人ですね」
「そ、そうかな?」
そんな最後の現実での会話の途中、テレビからカウントダウンが始まった。実行時は午前8時。もうあと10秒もない。姉さんとカウントダウンに乗っかる。
「「5、4、3、2、1!」」
あらゆる電子機器からグォンという音が聞こえたかと思うと、家がミシミシと音を立ててきた。意識が遠のいていくのを感じた。姉さんは既に意識が飛んでいるようだった。僕は身を委ねると、激しい頭痛と吐き気を催したが、すぐに目の前が真っ暗になった。