人の願いを叶えられる女の話。
あるところに人の願いを叶えることができる女がいました。
ある貴族は、女を檻の中に捕まえると美術品に金貨を出させました。
ある商人は、女に首輪をはめると商売敵の命を消すことを命じました。
ある女性は、女を閉じ込めると彼女の周囲にいる女性を醜くすることを叶えるように言いました。
女は、たくさんの人の怖くて悲しい面をみることとなりました。
なので、女はいつも捕まえられることのないよう次から次に町を放浪していきました。
しかし、人の欲望とは恐ろしいものでどんなに女が長くつらい旅を重ねても
女の噂は絶えることがありませんでした。
長い長い旅路の果て、女はすっかり自分の人生に絶望をして山の奥深くで倒れてしましました。
しかし、そんな女を助ける男がいました。その男は、猟師をやっていました。
熊みたいな大きな体に、お日様みたいな温かな心を持っている男でした。
男は、みすぼらしい女を見ると一目で恋に落ちました。
男は、家に連れて帰ると医者を呼びました。
医者は、ただの疲労困憊だと告げると去っていきました。
男は、それでも心配でたまらず誠心誠意、看病をしました。
女はやがて目覚め、立ち去ろうとしましたが男は引きとめました。
そして男の献身的な様子に真冬にできた氷よりも冷えた心はゆっくりと溶かされて行きました。
そうして1年が過ぎると2人はすっかり仲良しの恋人同士になっていました。
けれども、何処か儚げな女の様子を見て何処かに行ってしまうんではないかと心配になりました。
考えた末に男は求婚をし、ずっとずっとそばにいてほしいことを告げたのでした。
女はもちろん喜びました。
けれども、自分は人を不幸にする力を持っているから結婚することはできないと断りました。
男は、女が傍にいてくれるなら自分不幸になることは決してないといって再度求婚しました。
女は、一滴涙をこぼすと結婚を受け入れました。
それは、女の凍った心の部分の最後のひとかけらでもありました。
数年たち、女と男はすっかり幸せそうな若夫婦となっていました。
女は人生で初めてといっていいくらい幸福を感じました。
けれども、ある日事件が起きます。
男が病気で倒れたのです。
女は大慌てで医者を呼ぶとそれは王都の名医でも難しいという難病でした。
女は自分の力を男に助けられてから初めて使いました。
不審に思った男が尋ねると女は自分の力のずべてを話してしまいました。
その話を聞いて男はいままで自分に打ち明けなかった女に対し怒りをぶつけました。
女は萎れ、それを当然のこととして呑みこみました。
そして男はなぜあの難病が治ったかと不審そうにしていた医者にすべてを話してしまったのです。
噂はあっという間に広まり、女は捕まえられてしましました。
男の人は泣いてく後悔をし、謝罪をしましたが女は首を振りました。
女は何もかもすべてがどうでもよくなってしまったのです。
女は、そこの村の領主に連れて行かれあらゆるむごい願いをかなえることとなりました。
女は、食事をとらなくなりました。
どんんどんやせ細り、手で触れたらポキンと折れそうなぐらいになりました。
領主はさすがにあわてて医者を呼びました。
その医者に化けていたのは、なんと女と結婚した男でした。
女は呆然としました。
領主をだましたことが分かったら殺されてしまうと女は慌てて言いました。
男は、2人でどこかに逃げられるよう願いを叶えてくれといいました。
女は、愛している人の願いはかなえることが出来ないと涙を流しました。
男は、悲しそうな顔をすると女を逃がしました。
男は、振り返らずにどこまでもどこまでも逃げるんだよと手を振りました。
女は、人のためにしか力は使えませんでした。
けれども、たった一度でもいいから男と会いたくて、初めて自分のために強く強く願いました。
その結果女は、不老不死になりました。
10年立ちほとぼりがさめたのを見計らい女は村に立ち寄りました。
村の人に話を聞くと男は、魔女をめとった男として有名になっていました。
男は、いなくなった魔女を探しに村から出ていったとのことでした。
女は、何年も何年も男を探し続けました。
そうしてやっと見つけた時には男は、ちっぽけな墓石になっていました。
そこで、女は、いつか男が生まれ変わるのを信じることに決めました。
女は、今でも男と再会するのを夢見て彷徨っているといいます。