第四章 〜暗黒のモノ〜
「エーマ…何…してるの?」
「見ればわかるじゃない、殺してるのよ。」
「殺してるって…誰の命を奪ってるのか分かってるの!?」
「ふふっ…分かってるわよ…それぐらい。」
そこは、一面血の海だった。
色々な人種の死体が物のように積み重なり、転がっている。
「ねぇ…この景色、綺麗じゃなぁい?
一面真っ赤なの…。」
「…うっ…っ」
ボクは吐き気がしてきた。
「ア~ルラっ!!あなたも一緒にしましょ?」
「いっ、嫌だっ!!!! 」
「そう…」
彼女は一瞬、悲しい顔をし、
「なら…あなたも用済みねぇ。」
エーマ…なんで、キミがこんなこと…
彼女の振り上げた刀がボクの目の前に迫ってくる。
―ボクはエーマに殺された。
*
―ガバッ!!!
「はぁ…はぁ…」
ボクはベットから飛び起きた。
「…ゆ、夢か…」
できれば…一生見たくもない夢だった…。
まぁ、夢だよなぁ。あんなこと、現実には無いし。
まぁ…ある意味いつも、殺されかけてるケド。
「ア~ル~ラ~?起きてる?ご飯だよ~!!」
エーマの声が聞こえる。
「…分かった。今行くよ。」
まだ少し、気持ち悪い感じがしたけど、ボクは下に降りていった。
―ところでなぜ、エーマがいるのか。
実は、あの例のおばさんがまだ帰ってこないのだ。
なので、エーマが居てても大丈夫だろうと思い家にまだ置いている、という訳。
―!!!!!!!!!
「ふふん。どーよ?自信作よ!!!」
テーブルの上に、正体不明の黒い物体が乗っている。
エーマはご飯(らしき物)を作ってくれたらしい。
「なっ…何かなぁ?これは~…」
「?見ればわかるじゃない。これは、スクランブルエッグ。で、こっちはスープ。で、それから…」
エーマは黒い物体の正体を細かく紹介してくれた。
「へ、へぇ~…。」
「何よ、その気の無い返事は。」
これは…
―ボクはエーマの方を一瞬見た。
「…何見てんの。食べなさいよ。」
食べないと…だな。
―…も、もう、無理っ!!!
バタン。
「えっ、ちょっと!!」
黒い物体を食べた瞬間だった。ボクは倒れた。
遠くで、エーマの声が聞こえる。
こんな、無念な死に方…誰かボクの埋葬に来てくれるだろうか…。
ボクは意識が無くなる直前、こんなことを考えていた。
「―んっ…。」
あれ?
あぁ…そうだ。
ボク、倒れたんだっけ?
手で周りを探っていると、何かふわふわしたものに当たった。
「ん…んんっ…むにゃむにゃ…。」
…んん!?エーマ!?
…ずっと付いててくれたのか?
ま、まっさかぁね。あの、エーマだよ!?
エーマを起こそうと、顔をのぞき込んだ。
「…黙ってると、可愛いんだけどな。」
ピクっ!!
…ん?
今、エーマの体が動いたような…?
「エ、エーマ?」
ピクピクっ!!!
…………。
「もしかして、起きてた?」
…コクリ。
や、やばい…もの凄くやばい!?
「き、聞いちゃった?」
「な、な、な、な、な、な、な、な、な、な、な、何の事かしら!?」
エーマは凄い勢いで立ち上がり、ドアの方へ猛突進して行った。
ゴンっ!!!!!!
「!?いっ…っ…」
―バンっ!!!!
…………………さらば、平和なボクの人生。
まさか、起きていたとは。
しかも、あの感じじゃぁ…聞いてたよな。
まぁ、運が悪かったんだ。それだな、うん。
そんな、呑気な事をボクが考えている間に、一階では大変な事が起きていた事をボクは露知らず…
―な、なんなのあいつ!?
私は、エーマ。
ついさっき、例のあいつから逃げてきたところ。
「か、可愛いって何よ!?ば、ばっかじゃないの!?」
あ、あいつ、寝ぼけてたんだわ…。そう、きっとそうよ。
ガチャ。
すると突然、ドアの開く音がした。
…誰か入ってきたのかしら。
「あの、どちら様ですか…」
そこには、あいつが話していたお世話になっているというおばさんが立っていた。
しかし、どこか様子が変だ。
「あっ、初めまして。私ここに泊めさしてもらっている者です。」
「…………………。」
彼女は喋らない。
…何か…引っかかるわね。
「あの、どうかなされましたか?」
すると、彼女は一言こう言った。
「…オマエタチニハ、テンバツガクダラナケレバ、ナラナイ…」
…そういう事ね。
エーマは一瞬にして理解した。
こいつ、憑かれてる。
しかも、少々厄介かも知れない。
はぁ…しょうがないわね。
「…来なさい。私が相手になってあげるわ。」
―その時、ボクはと言うと…
はぁ…。
どうやってエーマとの関係を元通りにするか、悩んでいた。
「うーん…意外と、反応大きかったからなあ。
…まぁ、可愛かったけど…さ…。」
ボクにも意外とSな部分があるのだろうか…?
まぁ、こんなことを本人の前で言ったら殺されかけるじゃ済まないから、言わないけどね。
すると、突然一階からもの凄く大きな音が聞こえてきた。
ビ、ビックリしたぁぁ!!!
な、何だろ…エーマがまた何かヘマでもやらかしちゃったのかな…。
まだ、少し気持ち悪かったので立ちたくなかったが
見に行くことにした。
また何か、作られると絶望的だからね。
「―エーマ?何か大きな音がしたけど…
どうした…!?」
一階は無残なことになっていた。
家具があちらこちらに飛び、窓ガラスが割れていたり…とにかく、これはヤバイ!!!
エーマが何したか知らないが、例のおばさんが帰ってきたらと思うと…
ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ!!!!!!
しかも、当の本人がいない!?
「どこに行ったんだよぉぉ!?」
ボクは急いで探しに行った。
―はぁ…はぁ。
「ちょ…思ってたより…強い……」
私たちは戦っている間に家から飛び出し、人目(悪魔目?)のつかない所まで来てしまっていた。
いや…まぁ、誰もいないのは不幸中の幸いね。
「ふふっ…これで、本気が出せるわぁ…あ?」
何か…声が聞こえたような…
空耳…?
「…エェェェェェェマァァァァァァァァァァ!!!!!!」
「じゃなかったぁあ!?…って、なっなんであんたがいる訳えぇぇぇぇぇぇぇぇぇえ!?」
後ろを見ると、あいつが来ていた。
「―ちょ、なんであんたが…」
「なんで!?おばさんもいる訳ぇぇぇえ!?」
バシィ!!
「聞きなさいよ!!人のは・な・し!!!!!!」
「えっ!?エーマ!?なんで…」
「私を探しに来たんでしょうが!!今気づく奴がおるかぁぁぁい!!」
バシィ!!
「…とにかく、冷静になるわよ…」
そ、そんな無茶な…
すると、エーマはボクに気付かうことも無く、これまでの経緯を説明し始めた。
「あれは、あんたの知ってるおばさんじゃないわ。雷霊と呼ばれる魔族の使い魔にどこかで取り憑かれたみたい。」
「ら、雷霊?」
「えぇ、そうよ。今からあんたにも見せてあげるわ雷霊を。」
するとエーマは、聞いたことのない言語で何かを唱え始めた。
「OKよ。」
「…何が?」
エーマはおばさんの方を指さした。
なっ!?嘘だろ!?あ、あれは……………
「魚ぁぁぁ!?しかも、手と足付いてますケドぉぉ!?何あれ、キモいんですけどぉぉぉぉぉ!?
しかも、何!?魚なのに名が無駄にカッコイイ!?
(パニック中)」
「あんたがキモいわっ!!!」
すると、見事なツッコミが飛んできた。
―じゃなくてっ!!
「あれ…憑くとどうなるの…?」
「魔族みたいに人を殺し、食べる、
化け物になるわ。」
ボクは一番気になっていたことを質問した。
「憑かれたんなら…祓えるんだよね?」
「えぇ。祓えることは祓えるわ。けどね…」
そして、エーマの口から一番聞きたくなかった答えをボクは聞くことになってしまった。