第一章 〜アルラ、あの子と出会う〜
ドンッ!
「あっ、すみま…」
「ちっ、ふざけんなよ…穢れんじゃねーか。」
…………はぁ。
これは、いつものことだ。
ボクには悪魔の他に、人間の血が混じっているらしい。(おばさんから聞いた。)
混血の者のことを不純血と言い、差別の対象となる。
それプラス、前に言った通り下級悪魔だから…
まだ、上級悪魔だったなら、ここまで避けられること無かったはず…うん。
ボクは自分が嫌いだ。
まぁ、こんなだから当然だよね。
学校もいきたくない…。
……はぁ。(本日二度目)
気が重い…。
「ねぇ、キミー。」
「…?」
…誰を呼んでいるんだろう?
「キミだよー、キミ。
そこの弱虫っぽい悪魔くーん!」
…弱虫………
「あっ、ごめん。弱虫っぽいじゃなかったや、
弱虫悪魔くーん!だねぇ。」
…………………。
「!?」
突然、背中に悪寒が走った。(例のおばさんみたく嫌な予感が………あ)
「さぁぁっさと、振り向かんかぁぁぁぁ!!!
ボケェェェェェェェェェェ!!!!!!!!!!!!」
(なぜ…関西弁?…やね…ん…)
バシィィィィィ!!!!!
「いっだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
「やぁっと、振り返ってくれたぁ。」
突然現れた彼女は、にっこりと笑みを浮かべた。
クリーム色のロングヘアーに、オレンジの瞳…そして(ゴクリ)これまたなんとも言えぬ大きな…
(ゴ、ゴホンっ…)
―不覚にも、ボクはその笑顔に惚れてしまった…
いやいや、冷静になるんだ、ボク。
見ず知らずの人に突然キックを入れられたんだぞ?―惚れてどーすんだっ!
心の中で自分にツッコミを入れる。
「…ねぇ…聞いてる?」
「…………………………えっ…あっ、はいっ!!」
「…ふぅん…まぁ、いいや。」
彼女は少しの間ボクを睨んで、話を続けた。
「…助けて…欲しいんだ。」
「……………………………は??」
「だーかーらー、助けて欲しいのっ!!」
…は、話の意図が見えてこないよ…
頭おかしいのかな?この悪魔は…
うん?悪魔?
よく見ると白い翼が見えるような…
「て、て、天使ぃぃぃい!?」
ボクは今、突然のことばかりで、頭がフリーズ中…………………である。
「おーい、おぉぉぉぉい!わかりますかぁ??」
彼女の声が遠くに聞こえる。
パンッ!!
「!?」
「ふぅー。やっとお目覚め…」
目を覚ましたボクは、彼女の言葉をろくに聞かず質問を浴びせた。
「てか、まず君は誰!?突然現れて、他悪魔を蹴っ飛ばすってどういうことさ!?どこから来たの!?
えっあっ、どうしよっ!冷静になって見れば(冷静になってない…)天使じゃん!?
なんでブラッデーにいるわけ…ふがっ!?」
彼女はボクの口を塞いで、
「はぁい、ストップー!」
「…!ぷはっ」
「まだ、何も言って無かったねぇ。理解しろって言うには、無理があるかぁ。ふむふむ。」
そう言いながら、彼女は自己紹介を始めた。
エーマと言う名らしい。天界から来た天使だと彼女は…エーマは言う。(やっぱりね。)
し・か・も!!その世界の王や、王妃に最も近いと言われる、最高位の天使なのだ!!
(まだ自称だけど…)
そして、何と言っても…可愛い…
クリーム色のロングヘアーにオレンジの瞳。
これは、全体的に可愛いと言われる天使の中でも特別だと思う…
だなんて、本人には言いたくないけど。
「じゃ、本題に入るね!私がここに来た理由と
突然キミに、助けを求めた理由をね。」
―まずは、大昔に起こった大戦争の話をしようか。
*
時は××年、悪魔、天使、魔族同士の戦争が起こった。それを、皆は、千年戦争と呼んでる。
名の由来は、長い歴史の中でも数えるほどしか無いと思われるほどの大戦争だったからだ。
じゃぁ…なぜ、千年なのか…一万年でもいいのではないか?と思う者もいるだろう。
まぁこれは少し雑談となるが、説明するとあまり深い意味ではない。
当時の王たちが、千年戦争の方が言いやすくない?
と、物凄く軽い感じで決めてしまったからだ。
とはいえ、戦争の規模は大きく、多くの被害が出たことに間違いはない。
絶望的で残酷なものだったと千年戦争を経験した者は語る。
そして、戦争は幕を閉じた。
が、戦争が終わってからも絶望は続く。
魔族が悪魔、天使だけでなく、人間をも襲い始めたのだ。
しかも、襲った者の記憶を消し、魔族の仲間にしているのだと言う。
そこには、ある経緯があった。
千年戦争が起こる原因になったのも魔族だった。
戦争が起こる前、世界が共存していた頃。
魔族の中の共存反対派が反乱し、いつの間にか目的の無い戦争が始まってしまった。
天使と悪魔は魔族を誰ふり構わず殺していった。
共存を望んでいた魔族も、だ。
そうして戦争が終わる頃には、反対派の魔族ばかりになってしまっていた。
魔族は今も人を、そして、天使や悪魔も襲っているのだという。
*
「…………なんか、途中…凄く軽い話が…」
「…あ、あぁ…気にしない、気にしない。」
千年戦争はボクも知っている。
一応、両親を千年戦争で亡くしたから、被害者だよね。
まだまだ、幼い頃だったからあまり記憶には残っていないけど…。
魔族が者を襲っていることは、多分どの世界の人も知っているだろう。
いや…人間は知らないかもしれない…。
行方不明扱いになっているか…
もしくは、襲われた人間の記憶がある周りの人間の
記憶を改ざんしているかも…。
「―で、ボクに何をして欲しいんだ?―うぉ…」
キラキラキラ~。
めっ、目が輝いてる…!?
「助けてくれるのっ!?」
「う~ん…まぁ…ボクに出来ることなら…」
ガシッ!!
「ありがとぉぉぉぉぉ!!!!!!」
「うおっ!!ぉあっ…ちょっ…」
エーマはボクの手を握り、ちぎれそうな程振りまくった。
「ゴホン…えーでは、本題に…」
「…う…ん…(気持ち悪い…)」
エーマは、先程とは比べ物にならないくらい真剣な顔をし、
「者を襲う魔族の殲滅に協力してほしいんだ。」
「殲…滅…」
「うん。」
「…え…でも、ボク弱いよ!?」
「知ってる。」
「!!…ま、まぬけだしっ」
「それも、知ってる。………キミじゃなきゃ
ダメなんだ。」
すこぉし…傷ついてます…
そりゃあ弱いことは自覚してますよ。
ですけど!!そこまで言わなくてもいいでしょうよ?
うぅ………。
―最初、殲滅なんて冗談だろ?と思った…
けどボクは強い意志を持つその瞳に、冗談だろ?と言えるわけもなく…
そして、その頼みを断れるほど強くはなかった。
「なんで…なんでそんなに、殲滅を望むの?」
ボクは、家の方へ歩きながら質問した。
エーマは一瞬、悲しそうな顔をしてわけを話してくれた。
「…私の両親は魔族に殺されたの。
だから…」
「復讐するの。」
ドクン…
…嫌な…感じがした。
「…あはは…ごめんね。こんな話しちゃって。」
「え…あ…いや……と、ところでさ…今日帰るところある?」
ボクは話を変えようとした。
「あっあぁ…無い…ねぇ…どーしよ…」
エーマもボクの意思を読んでくれたのか、ボクの話に乗ってくれる。
「ボクがお世話になってるおばさんの家あるんだけど…来る?」
「えっ!いいの!?」
「うん…まぁ、今日おばさん帰ってこないし。
大丈夫だよ。」
「おぉぉぉ!!!!行く行く~。」
ボクはこの時、これから先エーマがあんなことになるなんて想像すらつかなかった…。
「―あっ!?」
「?…どうしたの?」
「…あのぉ…キミの名ってなんだっけ?」
テヘッ。
(い…今頃かよっ!?)
これが、ボクとあの子との奇妙な出会い方。