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8枚目 自称女神は伊達じゃない

大幅な加筆や修正をしました。

2014.10.29

2014.12.11

これでも見た目を気にしているのだ、だから笑わないで欲しい。


【あっはっはっはっは、あのハモり具合はなかなかのものだった。あの二人は相当息の合ったコンビじゃの】

エルとレイが部屋から退室した直後、眼鏡を外した琴花の前に現れたウリエルは、爆笑していた。

10代半ばの少女の姿をした自称女神のウリエル様だ。

「笑うな、気にしてるんだ。この外見とか」

頬を膨らませて抗議する。


身長や体格の関係上、年齢より若く見られることはあっても、日本では子供扱いされたことはない。

まぁたまに買い物したときに免許証拝見と言われるくらいだ。

主にアルコールを買うときの年齢確認のときが多い。

【まぁそう怒るな琴花。あの二人のおかげで助かったのだ。それでよしとすべきだろう】

「まず根本的な話に戻すけどさ。森の中に放置した女神が絶対悪いと思うんだけど」

【むっ……たしかに襲われたのは悲劇じゃが、いきなり街の中で出てきてみろ。あっという間に不審な人物として連行されておったかもしれんぞ。そこをちゃんと考えてだな】

「でもそれなら、森の入口近くでも良かったんじゃないの」

【どうせ最初に見るなら、神秘的な場所がいいかなと思ってな。湖の水、冷たくて美味かったろ? あの水はなかなかの美味でな。なかなか飲めるものではないぞ】

「それで使わなくてもいいコイン2枚と投げた1枚が行方不明なんですけど?」

ジトーっした視線をウリエルに向けるも、ウリエルは知らん顔だ。


【コイン2枚に関してはお前を助けるためじゃ。投げたほうの1枚は知らん、女神は民事不介入の中立じゃ。さてお待ちかねのコインについて説明するぞ。まずコインを握りしめるのじゃ】

ウリエルの言われる通りに、バックからコインを取り出して握りしめる。


ウリエルは何やら呪文みたいなのを唱える。すると、琴花が握りしめるコインが強い光を放つ。


しばらく光を放つと、そのまま収束する。

【これでお主はコインの持ち主じゃ。もう私は勝手に使うことはできぬ】

「へぇー役に立つのこれ?」

不細工な鳥が彫られているコインを眺める。

【これ扱いとは……罰が当たるぞ。試しにその持っているコインに祈ってみよ。そうじゃな……傷を治してくださいあたりで行ってみようか】

「は、はい」

琴花はコインを握りしめて、目を閉じる。

そして願う。

ジャンピンにやられた傷の回復を……。









「ウリエル、何も起きないけど……」

しかし、何も起こらなかった。

うんともすんとも何もいいやしない。

また誤作動か……。

「ところで不良品はクーリングオフできるの?」

【ば、馬鹿者め。不良品じゃないわッ! ちゃんと願ったか?】

「願いましたッ! 痛いの嫌なので、早く治してください」

【おかしいのぅ……ちょいとその握りしめておるコインを見せてくれぬか?】

言われるがまま、コインをウリエルに見せる。


【ふむふむ】

それを見たウリエルは一人で勝手に納得する。



【琴花……】

ウリエルは真剣な表情でこう言った。





【このコインやり直し】

「ふぇっ?」


「これでいいの?」

【うむ問題ないぞ。あぁ美しい、ピカピカじゃ】

綺麗なコインを見て、満足げに頷くウリエル。

その姿に琴花はため息をついた。

怪我人にコインを磨かせる女神が、一体どこにいるというのだろうか……。

しかも何度も磨き直しを要求される始末。


【すまんな琴花。コインを媒介にして女神の力を引き出す仕組みとなっておる。媒介するコインが汚れていては意味がない。むしろそんな汚らわしいコインで力を使わせようなんぞ言語道断であろう】

「じゃあ最初(はな)っから綺麗なコインをください」

【このシャイニング馬鹿たれめがッ!! それだとありがたみもへったくれもないじゃろ。それ相応の力を使わせてもらうのじゃ。そのことをコインを司る女神に感謝する。その証明として綺麗にコインを磨かせてもらうわけじゃ】

「あーはいはい、感謝の気持ちを込めて綺麗にするわけですね」

【投げやりになるな、まぁそういうことだ。ではもう一度願うとよい】

もう一度、琴花はウリエルの言われるまま願う。

すると、どこからともなく優しい光が琴花を包む。

暖かい光だった。

みるみるうちに背中や足の痛みが和らいでいく。


光が収まると、嘘みたいに怪我をした箇所の痛みが和らぐ。


「あ、痛くない」

斬られた右太腿も、背中も痛みがだいぶひいている。


「な、治った……やっ……あいたた」

だが完治したわけではないので、わずかながら痛みは残る。それでも動くだけでも厳しかった先程と比べたら雲泥の差だ。

【回復したといっても、無理してはならんぞ……と少し遅かったか】

「いたた……でもすごい。伊達に女神を名乗ってないね、さすが女神様」

初めてウリエルの優秀さを琴花は感じた。

それまでは正直、ただのうるさい外野扱いだった。

【ふん、仮にも女神と名乗っておるのじゃ、これくらいはお茶の子さいさいじゃ】

「この力って攻撃にも使えるの?」

【うむ、女神の力に不可能はないぞ。ただし死者を蘇らせるというのはできんがな。それ以外ならだいたい可能じゃ】

そのことが分かっていれば、ジャンピンにやられなかったのに……。

琴花は喜び、握りしめた手を広げると、そこにコインはなかった。

「あ、あれ? コインが消えちゃった」

【使えばそりゃなくなる。だから大事に使ってくださいとメモを残したのじゃ】

「あのメモはウリエルが書いたんだ」

ということは……。


「え、えーと使える回数は……」

嫌な予感がした。


【うむ、最初に5枚あったが、私が緊急時のために2枚使って、琴花かジャンピンに1枚投げて所在不明。そして今使ったのが1枚。となると残りはいくつかの?】

「……1枚。つまり1回だけ?」

小学生でもできる簡単な計算。

ガックリと肩を落とす琴花。


【うむ、よくできました。大事に使うとよいぞ琴花】

そう言ってウリエルは微笑んだ。

せっかく力を手に入れたのに、使用回数が残り1回とは、これいかに。


「……残り1回」

琴花は、腕を組んでうーんと唸る。

【琴花、そんなに慌てなくとも大丈夫じゃ。何に使うかゆっくりと考えたら良い】


「あ……」

【ん? 何かあったか?】








「ちなみに……」

【……ん?】

「叶えられる願いを1枚につき2回にしてください……というのは?」

【そういう願い事をたくさんというのは例外じゃ。無論、却下じゃ】

死者を蘇らせる以外で、もう一つ叶えられないリストに追加された。

コイン 2→1枚


いつもご愛読ありがとうございます。

感謝です。

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