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7枚目 子供じゃないもんッ!

村の名前を追加しました。2014.9.11


大幅に加筆や修正をしました

2014.10.29

2014.12.11

異世界に来て、最初に出会ったのは美少年でした。でも口調がおネェなんですけど……。


金髪の美少年は、人懐っこい笑みを浮かべている。

「これ、傷にとても効くお茶なの。熱いから気をつけてね。私はエル、よろしくね」

エルという美少年が、握手を求めてきたので琴花も握り返した。細腕なのに力強かった。

握手を終えると、琴花はお茶を受け取った。

「あ、ありがと……ございます。あたしは琴花。東海林(しょうじ)琴花(こいろ)です。あと横にいるのが()が……」

【馬鹿琴花、私の姿はお主にしか見えんとさっき説明したじゃろ】

「うぐっ」

ウリエルに指摘されて、紹介のためにウリエルのほうに伸ばしかけた手を元に戻し、「め……めが……めが……目の疲れにも効くんでしょうか……?」と無理矢理誤魔化した。


かなり無理があるが、エルという美少年は気にすることなく、「そうね〜眼精疲労の効力もあるわよ」と答えてくれた。

「そうですか。ありがとう、いただきます」

笑いを堪えているウリエルを無視して、琴花はお茶を受け取った。

フーフーと吹き、お茶をすする。


五臓六腑に染み渡るとは、このことだ。


「ショージとコイロ、どっちが名前かしら?」とエルが首を傾げた。

「えと琴花のほうで」

「ふーんコイロちゃんか、珍しい名前ね」

「いえ、そんなことはないと思います」

美少年なのに口調が女性っぽいほうが、すごく珍しいと琴花は思った。

日本ならオネェと間違いなく呼ばれる。

この美少年はどういう人生を歩んできたのかは琴花には分からない。

だが、初対面の人に口調についてとやかく言うのは失礼なので、そのままスルーする。


もしかしたら口調などは、琴花が住んでいた世界と違うのかもしれない。

「あのここは……?」


「ここはダムサス地方のオクジェイト村にある宿屋さんよ。森の中でジャンピンの変異種に襲われていたところを助けたの」

「じゃ……ジャンピン?」

【あの兎の名前じゃ】


「通常はあんなに大きな人参は持ってないの。でも変異種が持つ人参はぶっとくて大きいのよ。ちなみに個体での強さは普通のジャ……」【通常のジャンピンとあまり変わらんが、戦闘できんお前には脅威じゃの〜】「……の武器が脅威なのよね〜。あと通常のジャンピンは複す……」【奴等は群れることを常としておるが、お主が出会ったアレは変異種でソロを常としておる】「……い種ははソロで活動していて……」【まぁーあんな変異種が複数もいたらおっ死んでしまうわな。あっはっはっ】「…….の変異種が持っていた人参なんだけど、パープルヘイ…….」【ちなみにパープルヘイズというのは、お主の世界にある創作物語にある奇妙な冒険とやらとは全く関係ないぞ。ちゃんとそんな名前の人参があるのじゃ】「……の人参は貴重なアイテムで換金すると結構なお金になるのよ」

エルがジャンピンについて解説してくれているというのに、その横にいる女神のせいで全て台無しとなっている。


「……うぅステレオ放送になってるし」

怪我のせいもあって、全く話に集中できやしない。

琴花は聖徳太子ではない。

同時に複数の人間の話を聞けるほどのチートスキルなど持っていない。


情報提供してもらえるのはありがたいが……今しばらく外野である女神にはご退場を願うことにさせていただく。

「副音声シャットダウン」

ボソッと呟き、琴花は眼鏡をスチャっとかけた。

すると、ウリエルの言った通りに姿が見えなくなり、そして声も聞こえなくなった。

眼鏡をかけることでウリエルがいる次元の壁をシャットダウン。

つまり認識できないようになる。

まぁ眼鏡を外せば、また認識できるようになるので、存在自体が消えたわけではないのだが……。


とにかく、話に集中させて欲しいのだ。

決して仲間外れではない。


姿は見えなくても、そこにウリエルはいるのだ。


あとでちゃんと話を聞くからと心の中で呟く。届いたかどうかは知らないが、女神だし届くだろうと勝手に解釈した。

「あら、ごめんなさい。ついつい長話をしてしまって」


琴花が、全く話に集中できていないことに気づいたのか、エルが心配して琴花の顔を覗きこむ。


「あ、いえ……ボーッとしちゃってて」

「病み上がりなのに、つい話し込んじゃってごめんなさい」

ショボーンとするエルに、慌てて琴花は大丈夫ですからとフォローする。


「なぜ森の中にいたの? 武器も持たずに自殺行為よ」

「は、はい。そ……その武器を無くしてしまったので……」

もちろん無くしたというのは嘘である。

それに森にいたのは、自分のせいではなく、女神のせいである。

「あ……」

そこで琴花は、とある部分に気付く。

髪に微妙に隠れていて分かりにくかったが……。

そう耳である。

とんがり耳といえば、あの種族だ。

ファンタジーなら、かならず出てくる種族。 自由騎士とセットでついてくる。


「あの、もしかしてエルフ……?」

とんがり耳がピクピクと動いている。

「えぇ……そうだけど」


「初めて見ました。映画とか創作の世界でしか見たことがなかったんですけど、やっぱり本物のエルフって美形なんですね」


「初めて……?本物?」


エルフの美少年エルは首を可愛らしく傾げた。その姿だけで、世のショタなお姉様方にお持ち帰りされてしまいそうだ。


「あ、いえいえ。なんでもないです」

「ふふふ、まぁ無事で良かったわ。かなり出血してたから本当に心配していたの」


その時、木製のドアが豪快に開け放たれた。


豪快にドアを開けて入ってきたのは、赤い髪がトレードマークの青年だった。


顔に残る傷跡がワイルドさを醸し出している。さらに身体の作りからして、前衛職なのだろうと推測される。


「おぅおぅ、やっとお目覚めかーい」

手を上げてズカズカと部屋に入ってくる赤髪の青年。


その風貌や威圧感に圧倒される琴花。


「ちょっと、レイ。コイロちゃんが怯えてるから辞めなさい」

「るっせぇ〜って。別に脅かしてねぇよ。ただなかなか戻ってこねぇからよ、気になって見に来たんじゃねぇかよっと」

レイは琴花を眺めてほほぉーと頷く。

「さっきは薄汚れてたけどよ、綺麗にすっとなかっなか可愛いじゃねぇかッ! こりゃ〜数年後が楽しみだぜぃ」


「ちょっと、まだ子供なんだから脅かさないでッ! ごめんねコイロちゃん。見た目はこんなのだけれど、根は優しいから大丈夫よ」


「なッ! てめぇ見た目も十分優しいオーラバリバリ出てるだろうがッ!」


「残念だけど、子供が見たら泣いちゃうわよその顔じゃ」


そんな二人のやり取りに引っかかりを覚えた琴花は、

「あ、あの〜」

と恐る恐る挙手をした。


そして二人が琴花に視線を向けたことを確認する

何と無く嫌な予感しかしない。


さっきからエルに子供子供と連呼されているからだ。間違いは正さなくてはならない。

「私、これでも……21才で。一応大人なんですけど……」


恐る恐るそう切り出した。





しばらく間が空いて

「はぁっ?」

と、ものの見事に二人の声はハモった。

そんなハモらなくてもいいのに、と外見の幼さを呪う琴花であった。

外国の方から見て、日本人は年齢の割に若く見えるそうです。


いつもご愛読ありがとうございます。

感謝です。

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