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6枚目 ウリエルと琴花

大幅な修正や加筆をしました。

2014.10.29

2014.12.06

ここら辺で一度、今作のヒロインである東海林(しょうじ)琴花(こいろ)について簡単に語ろうと思う。


東海林 琴花は日本生まれの21歳。

実家は教会であり、父親は牧師である。

母親も、もちろん熱心な信者である。

幼少期からそういう環境にいたので、必然的に実家の手伝いや神様への祈りを捧げてきた。

高校を卒業して実家を出て、大阪か名古屋の企業に就職したいと思っていたが、親の猛烈な反対により、渋々実家近くの企業に就職した。

仕事と実家の手伝いを両立した生活も、3年経てば慣れてきた。

不満がないと言えば嘘になるが、異世界に降り立つ前の彼女は順風満帆は生活を送っていた。



そう、異世界の見知らぬ森に降り立つ前までは……。



パチリと目が覚めた。


「あ……あれ?」

気づくと琴花は、見知らぬ部屋のベットに寝かされていた。

「夢だっ……いたッ!」

ゆっくりと身体を起こすのと同時に背中に激痛が走る。 さっきまでの出来事は夢ではなく、現実だと物語る。

「あたし生きて……る。助かったんだ」

目に涙が浮かぶ。

死を覚悟したのに、生きてることに琴花は神に感謝した。胴体部分と右足に包帯がしっかりとグルグル巻きにされている。

適切な処置が行われた証拠だ。

一体誰がここに連れてきてくれたのだろうか……。


「そういえば……」

琴花は意識を失う直前に、誰かの声を聞いたのを思い出した。

その声の主が助けてくれたのだろうと推測する。

しかし、そこで引っかかる点が一つあった。その声はたしかにこう言っていた。


【しっかりしろ、琴花ッ!】……と。



なぜ、琴花の名前を知っていたのだろうか?

【ようやく目覚めたか、この馬鹿娘が】

「え?」

声が聞こえた。

そう、琴花が意識を失う直前に聞こえた声。

周囲に目を配るも、誰もいない。

「空耳……?」

【馬鹿者、こっちじゃ】

声がまた聞こえた。それと同時に、琴花の目の前に白い何かが現れ始める。

それはだんだんと人の形を作り始める。

しばらくすると、そこに10代半ばくらいの少女が現れた。

「え……えッ?」

どんな手品使ったのか分からないが、突然現れた少女に驚く琴花。

だが、次の瞬間さらに驚く結末が待っていた。

【なぜずっと呼びかけているのに返事をしなかったのだ琴花ッ!】

いきなり少女は琴花に怒鳴り始めたのだ。怪我人である、さらに初対面である琴花に。

一体どんな教育を受けてきたのだろうか、親の顔が見たいものだ。


「くぅ〜いきなり怒鳴らないでよ」

なぜそんなに機嫌が悪いのか、残念ながら分からない。

その睨みだけで、簡単に人を殺せてしまうのではなかろうか。

先程まで死にかけていた琴花に何たる仕打ち。怪我の心配よりも返事をしなかったことに対する罵倒。

全く親の顔が……以下省略。


【ちゃんと返事をしていれば、少なくとも大怪我せずに済んだものを……お主は馬鹿なのか……】

「あのーさっきから何を怒っているのかサッパリなんですけど……」

八つ当たりはご勘弁願いたい。

【まぁ怒鳴ってしまったのは心配していたからということだ。どっちみち琴花が呼びかけに応えられなかったのは、私がミスしたというのもある。許してくれ】

ということは返事をしなかった琴花が悪くはないということになる。

やはり八つ当たりだった。

迷惑な話だ。


「え、えーと……ところであんたは誰? なぜあたしの名前を知ってるんですか? 名乗った覚えはないはずですが……」

理不尽な八つ当たりのことは一旦置き、素朴な疑問を少女に問う。

なぜ、この目の前にいる少女は琴花の名前を知っているのだろうか……。


【こほん、紹介が遅れたな。私の名はウリエル。四女神の一人だ】

「女神様? あんたが?」

自分で女神を名乗る痛い人かと言ったら、怒られる気がするので黙っておく。

とりあえず待ちに待ったキーパーソンの御登場だ。

遅すぎる御登場。重役出勤だ。

【名前を知っているのは。私の呼びかけに琴花が応えてこの地にやって来たからだ】

「……いやいや、応えた覚えないですけど」

少なくとも初対面で、いきなり怒鳴り散らす相手の要望に頷いた記憶はない。


アルコールが入って記憶が混乱しているのだろうかと思うも、すぐにその考えを否定する。

昨夜は、仕事終わった後、実家の手伝いをして買ったばかりの新刊を読んでいたという確かな記憶があった。

だから昨夜は飲んでいない。

そう、昨夜は飲んでいない。

大事な事なので二回言いました。

もちろん、危険な薬物にも手を出してはいない。

両親が熱心に信仰してる中、一人娘がそんな馬鹿なことはするわけがない。

しぇしぇしぇのしぇ。


【私の呼びかけに琴花の魂が応えたのじゃ。だからこの世界に呼んだのだ。感謝するが良いぞ】

なんて傍迷惑な魂であろうか、せめて肉体にも相談して欲しかった。

その場合は満場一致で肉体は、拒否の札を上げていたであろうと琴花はため息をついた。

感謝の言葉も出ない。

「えーと……ということは、あたしをここに連れてきた犯人ってことでいい?」

【むむっ! 犯人とは聞き捨てならんが、まぁそういうことにしておこう。この程度で怒っておっては女神なんぞやっておれんからのぅ〜】

女神ウリエルは眉をひそめた。

微妙にピクピクと眉が動いていることを琴花は見て見ぬ振りをした。


とにかく琴花をここに連れてきたのはウリエルという女神様らしい。


「あとあんたのウリエルって名前だけど、もしかして四大天使様からきてたりする?」

【うむ、なかなかの博識だな。この世界では四大天使の役割を四女神が務めている。馬鹿と言ったことは撤回しよう】

女神ウリエルは笑みを浮かべた。

「ど……どうも」

両親からよく神様や天使の話を聞いたり、神話を読んでいたことが幸いした。

琴花は目頭を押さえた。

さすがに眼鏡なしでは、目が疲れてきた。

琴花は、ベットの近くに置いてある眼鏡を取り、装着しようとして、

【ま、待て。琴花その眼鏡はストップ、ストップじゃッ! 】

慌ててウリエルに止められた。

手をバタバタさせて、本当に焦っているように見えた。

「え? なんで? 目ぇ疲れたんだけど」

【そのアレじゃ、さっき説明したミスと関連している話があるのじゃ。よーく聞くのじゃ】

神妙な顔をしてウリエルは語り始めた。

【まず、私と琴花は違う次元に存在しているため、普段は見えもしなければ声も聞こえない。それでは案内人として役に立たない。だから私は、琴花のアイテムに細工をしたのじゃ】

「アイテム?」

琴花はそう呟いて、近くに置いてあるバックからコインを取り出した。

あの不細工な鳥がチャームポイントのコインである。


5枚あったのだが、1枚は兎に投げてしまったため、現在は残りは4枚。

「あれ、2枚しかない」

4枚のはずが、2枚しかない。

なぜだろうと琴花は首を傾げた。

もしかして全滅すると半分になるのか?

【その説明も後でする、今は後回しじゃ。そう、その眼鏡じゃ】

ウリエルは、琴花が持つ眼鏡にビシッと指を突きつけた。

赤◯堂で安く購入したフレーム。だがレンズの加工の関係上そこそこ良いお値段となっている眼鏡だ。

【その眼鏡に、私の姿や声を認識できるように細工したのじゃ】

「へぇ〜すごいね。そんなことできるんだ女神……ってあれ?」

ウリエルの説明に頷きつつ、琴花はまた首を傾げた。

「でも今、眼鏡かけてませんけど?」

かけてもいないのに、ウリエルの姿や声も認識できている。それでは、わざわざ眼鏡に細工する必要が全くないではないか。


【うむ、そして本題に入る。実は眼鏡に細工するつもりが、間違えて琴花の眼に細工をしてしまったのじゃ】

「…………はぁ? 人の目玉に何勝手なことをッ!」

レーシックするならちゃんと手続きを取って欲しい。副作用がとても大変なことになっているのだ。

【つ、つまりだ。間違えてしまったばっかりに、私の姿や声を認識できず、死にかけてしまったというわけじゃ。すまぬ、大変申し訳ない】

ウリエルはぺこりと頭を下げた。

「で、何でコインの枚数の数が合わないの?」

磨いた時は、たしかに5枚。

そのうち1枚は投げてしまった。

だから計算上4枚となる。

しかし、残念なことに何回数えても2枚しかない。

【うむ、実は使ってしまったのだ。許せ琴花よ】

それにしばらく放心してから、琴花は思いっきり叫んだ。



琴花が叫び声を上げたのと、ほぼ同時に木製のドアがガチャと開けられた。

ドアを開けて慌てて入ってきたのは、サラサラの金髪がトレードマークの美少年だった。


線が細くて、肌の色も白く、どことなく儚い雰囲気を持つ少年だった。

手にはカップを載せたトレイを持っている。湯気が出ているので温かい飲み物だろう。

「どうしたの? 大丈夫?」

「あ……は、はい」

叫び声を聞かれてあたふたする琴花。

その横で笑うウリエル。

「良かったわ、目が覚めて。改めて聞くけどお加減はどうかしら?」

と少年は琴花に問いかけた。

女神様の次は、女性口調の美少年が現れた。



そして物語が動き始める。

コイン 4→2枚


おやおや、女性口調の美少年が出てきました。

いつもご愛読ありがとうございます。

感謝です。


ウリエル様は何にコインを使ったんでしょうかね?

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