44枚目 ウリエル
更新が遅くて申し訳ありません。
今日は大晦日です、良いお年を。
来年は頑張るよ
「ここでテホン委員長がお待ちしています」
ミリルに案内されて到着したのは、冒険者ギルドダート支部。
ほぼ田舎にあるオクジェイト支部が2階建ての木造作りなのに比べて、ダート支部は王都にあるため立派な煉瓦上の造りで5階建てだった。
入口のウェスタン風のドアの隙間から賑やかな声が聞こえてくる。
空は夕闇へと姿を変えていて、建物の中から差し込む明かりが琴花達3人の影を作る。
「うわぁ〜すごい」
「ここが王都のギルドよ、コイロちゃん」
「エルは来たことがあるの?」
「えぇ、ここで初めて冒険者登録したのよ」
「では参りましょうか」
ミリルに促されて、琴花達はギルド ダート支部へと足を踏み入れた。
☆
「いいわね、私アルバード家のシェイミ=アルバートがリーダーなんだからよろしく。異論は認めなくってよッ!」
気持ちいいほどに『イタい』ヤツが立ち上がって宣言した。それを横目にサーシャは料理を食べていた。
忘れている人もいるかもしれないが、オクジェイト村での防衛戦に参加していた新人 冒険者だ。
得意な武器は槍で、見た目の幼さに比べて胸がボリューミーなのが特徴だ。
「僕は異論ないよ、どうぞ」
あとは一人称が僕なのも立派な特徴といえば特徴か。
彼女はオクジェイト村の防衛戦以降、武者修行がてら王都に流れ着いていた。
だが、1人ではできる依頼はそんなに多くなく、仕方なく仲間を探しにギルドダート支部に訪れていた。
だが、なかなか仲間は見つからない。
だから誰かいないかとギルド職員に聞いたところ、こんな痛いお嬢様と出会ったのだ。
これはニアミスではない。
シンプルにミスである。
イージーミスだ。
「……ふぁいとー。まぁやりたい奴がリーダーやればいいよ」
サーシャの隣でボソッと呟く声が聞こえた。
同時に紹介してもらったサラサ=ナスピカタだ。どうも彼女は表情がない。まるで表情筋がないのではないかと疑ってしまう。
とにかく紹介してもらったこの2人はいずれもサーシャと同じ新人の冒険者である。
近々、このメンバーで依頼をこなさなければならないのだ。
「あぁ先が……思いやられるわ」
サーシャは大きく溜息をついた。
サーシャのいるテーブルは各々が勝手なことをしている。
アルバード家のお嬢様はお家自慢を始めて、ナスピカタ嬢は適当に相槌をうちながら料理やお酒を楽しんでいる。
「このパーティ絶対アウトだよ」
サーシャが溜息をついたのと同時に、入口のドアからギルド職員と2人組の冒険者が入ってくるのが見えた。
「あれ? たしかオクジェイト村にいた貧乳とオカマ?」
サーシャの呟きは店内の喧騒にかき消された。
☆
賑やかな声がするフロアを抜けて、カウンターの奥へと案内される。何名かがカウンターの奥へと案内される琴花達に視線を向けるも、すぐさま食事や談笑に戻っていく。
奥の部屋に案内されると、テホン委員長がソファーに深く座っていた。その右隣に若い女性をはべらせている。
【む、狸ならぬ色ボケジジィかッ!】
眼鏡を外すととウリエルの声が聞こえた。
「たしかに色ボケは厄介だよね〜」
同じことを琴花も思っていた。
「おい、ワシは色ボケじゃないぞ冒険者コイロよ」
ボソッと呟いたつもりが聞こえていたらしい。
色ボケと地獄耳、ますます狸ジジイ度が上がっていく。
「コイロちゃん、そう思っていても、心の声は口に出したら駄目よ」
「おほん、まずはよくぞやって来た冒険者コイロと……エルで良かったか?」
「はい、間違いありませんわテホン委員長」
「まずは紹介しよう、彼女は《ウリエル》様じゃ」
「は?」
何を言っているのだろうか?
いよいよ認知が進んでしまったのだろうか?
だが、この世界に認知症の進行を遅らせる薬があるかは分からない。
「彼女が第96代目のウリエル様ですね。存じていますわ」
エルの言葉に頷くテホン。
「96代目? 何のこと?」
琴花は眼鏡を外してウリエルに問う。
【この世界では、女神の代理人としてその女神の名前を継承することがある。見えもしない者より実在する者のほうが祈りやすいじゃろ】
「ふーん、そうなんだ」
テホンの隣に座っていた若い女性が立ち上がる。
「初めまして、私は第96代目ウリエルです。どうかよしなに」
そう言ってぺこりと頭を下げた。
ウリエルの名を騙る女性が現れた。




