表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/45

40枚目 暴食、街道で獲物を待つ

なんとか40枚目。

これにて文字数は約10万みたいです。


いつもありがとうございます。

30000PV突破いたしました。

感謝です。

「やべぇな、どこにいやがるんだ」

ガイが舌打ちをした。

エルがそっと琴花に近づき、耳打ちする。

それに頷き、琴花は眼鏡を外した。

すると四女神が1人ウリエルが姿を現す。

現すといっても見えているのは琴花だけだ。


「おいおいこんな時に内緒話してる場合じゃねぇぞ。アレだ」

ガイが前方を見ながら叫んだ。

街道の前方、大きい何かがドデーンと通せんぼするかのように寝っ転がっている。

毛並みは黒い。

「居眠りポケモンみたい、うーん笛とか持ってないよ」

昔やったゲームの事を思い出して呟く。


【また古いネタ持ってきたな】

「笛?」

「いや、なんでもない」

【冗談はこれくらいじゃ。琴花、気をつけろッ! あれは変異種じゃ】

「くそッ! 暴食だ。気をつけろよお二人さん」

ガイは舌打ちをしてドゥドゥと馬車を止めた。

大事な馬を食われるわけにいかないからだ。

かなり離れた所に馬車を止めて、琴花達は馬車から歩き出す。


そーっと歩く傍ら、琴花はエルに尋ねる。

「エル、暴食ってなに? ウリエルが変異種って言ってるけど」

「えぇ、あれはエチロウの変異種よ」

「え? イチロー?」

琴花の頭の中には10年連続200本安打の野手が頭に浮かんだ。だが、そんな事を知らないエルは「エチロウよ」と訂正する。

「ウリエル、エチロウって?」

琴花はボソっとウリエルにだけ聞こえるような声量で尋ねる。

【うむ。エチロウは、琴花の世界だとヤマネコという動物がおるじゃろ、エチロウの通常種は本来その程度の大きさじゃ。だが、時たま餌の美味さに目覚めた美食家タイプのエチロウが変異種になる】

「ところで変異種ってそんなにポンポン出てくるものなの?」

ジャンピンの変異種にボロボロにやられた時の記憶が蘇り、琴花は身震いした。

それを見てカッカッと笑うウリエル。


【そんなにたくさん出てきたらそれは変異種じゃなくてそれは通常種じゃ。安心せぇい」

「で、なんで美食家気取りのエチロウが変異種になるの?」

【うむ端的に説明すると、ようは食い過ぎるからじゃ。ほれ】

エチロウの変異種が寝っ転がってるところまで距離でいうと200Mのところまで3人は近づいた。

ちょうど隠れられるような手頃な岩に身を隠す。


「あれは食い過ぎのレベル超えてるよ」

【食い過ぎてデカくなって、それでもまだ足りないから食う。だから暴食とガイとやらが言うておったじゃろ】

「ラザニアが大好きな猫ちゃんみたい……」

昔読んだ漫画のキャラを思い出した。

でっぷりと太った体型のタビーキャットでラザニアの他に高カロリーな嗜好品を多数好むのが特徴だ。


「おいお嬢ちゃんッ! さっきからなに訳の分からねぇこと言うてんだ」

ボソボソと会話している琴花にイライラしたのかガイが吠える。だがそれをエルが優しく肩をポンと叩く。

「ガイさん、コイロちゃんは妖精さんと会話してるところだから邪魔しちゃダメよ」

「あ、あぁ見える目のスキル持ちか。そいつぁすまねぇ」

【とにかく、通常種のエチロウに比べて小回りや素早さは格段と落ちるが、蓄えに蓄えた脂肪が素早さの代わりに防御力が段違いに高くなっておるぞ】

「うわぁー守り特化型かー」

長期戦が予想されそうで琴花はため息をついた。


「戦わないっていう選択肢は?」

出来ることなら戦わずにスルーしたいと思っている弱気な主人公。

主人公ならあいつを倒すよと意気込みたいところだが、残念ながら琴花の戦闘力は雀の涙みたいに小さいものだ。

「そうしたいところだけど、アレを見てコイロちゃん」

エルが指を差す方向を見ると骨が無雑作に転がっていた。最初は動物の骨かと思ったが、明らかに人間のと思われる頭部の骨があることに気づき、

「ひぃッ!」

琴花は腰を抜かして座り込んでしまった。

足元の周辺が汚いにも関わらず。


「あんの野郎、家畜や魔物だけでも飽き足らず、人間にまで手ぇ出しやがって」

ガイがギリィっと奥歯を噛み締めた。

「コイロちゃん、あいつは生かしておくわけにはいかないわ」

一度味をしめたら次は襲わないという保障はない。残念ながら駆逐すべき魔物だ。

しかも、かなり早急に。


【放っておいたら誰か倒してくれると思うなよ琴花。冒険者は危険な魔物を討伐してこそ、その存在証明(アイデンティティー)があるからのぅ】

「やるしかないんだね」

【大丈夫じゃ、コインは本日のログインボーナス入れて2枚じゃ。まず最初に1枚使って琴花を含めた3人の戦闘能力を向上させるのじゃ】

「行くわよガイさん援護をお願いね。コイロちゃんは無理しない程度に攻撃を。みんな行くわよ」

エルの号令に琴花とガイは頷いた。



変異種のエチロウは先程襲いかかったジャンピンの骨をしゃぶっていた。

だが、まだ食い足りない。

しかし、この図体で動くのはかなり面倒だ。

変異種のエチロウはわざと街道にドカッと寝っ転がっている。

街道は人型がよく通ることを知っているからだ。

先日、たまたま襲撃をかけてきた冒険者を倒し、たまたま食べたところ、これまで襲ってきた魔物なんかとは比べ物にならないくらい美味だったので、また来ないかなと期待している。

だが、今日に限って誰も街道を通らないので変異種のエチロウは不貞腐れていた。

だが、その時こちらに向かってくる3人の人影が見えた。それは琴花達である。

シメシメと変異種のエチロウは身体を起こして戦闘態勢になる。




「くそッ! 気づかれたか」

ガイは舌打ちをした。寝ている隙に倒してしまおうと思っていた作戦はこの段階でオジャンとなった。

「みんな行くわよッ!」

改めてエルが号令をかけた。

ガイは矢をセットして素早く放つ。

胴体にドスドスと刺さるが、あいにくの蓄えた脂肪。残念ながら致命的なダメージを与えるまでにはいかない。琴花は相手の視界に入らないように背後に回って攻撃するが、いまいちダメージの入りが浅い。

【琴花、コインを使って奴の守備力を下げるのじゃ】

「分かったッ! ウリエェェェルッ!」

変異種エチロウから距離を置いて、琴花がコインに願いを込める。


【その叫び方はなんじゃ】

ウリエルが突っ込みを入れるも無視する。

とにかく早急に倒さなくてはならない。

琴花一人ならば勝てない相手でも仲間がいれば何とかなる。

だが、なにも起こらなかった。

「あ、あれ?」

琴花は首を傾げた。

ウリエルはそれを見てため息をついた。

【こんシャイニング馬鹿小娘がッ! そんな汚れたコインが使えるかッ!】

「えぇ? これはダメなの?」

一見綺麗に見える女神のコイン。

だが、少しでも汚れているとウリエルは力を使えない。なんて不便な力だろうか。


【とにかく、急いで磨けッ! あやつを打破するにはまず守備力の低下が重要じゃ】

琴花が急いでコインを磨いている間も、エルとガイの攻撃は続く。

「くそッ! 脂肪が厚すぎてダメージ入らねぇぜ」

変異種のエチロウは、図体の関係上素早く動けないが、守りだけは固い。

ガイの放った矢は腹に刺さるも、すぐさま抜かれてしまう。

エルが持ち前の速さで撹乱するも、近づくと鋭い爪の攻撃が待ち受けていた。

しかも通常のエチロウの種族スキルには《毒付与》がある。そんなに高確率でもないし、致死量ほど強くはないが毒になると体調を崩して戦いどころではなくなるので注意が必要だ。


見た目はヤマネコなので、普通に爪攻撃を喰らったら充分危険であることには変わりない。

【琴花まだかッ!】

ウリエルが叫ぶ。

「これでいけるでしょッ!」

琴花がコインを見せるも、やり直しじゃと言われる


緊急事態なので多少の汚れくらい見逃して欲しいのだが、あいにくその辺の融通は効かない。

2人が戦っているのに、自分だけコインを磨くという異常な光景にどうしても焦ってしまい、満足にコインが磨けていない。

【えぇーい、もう一枚のコインはどうした?】

もう一枚のコイン。

つまり本日のログインボーナスのコインだが……。

「どこにあるか分からないわよッ!」

【威張って言うなッ! この馬鹿ちんがッ!】

そんなこと言われても仕方がない。

朝早くから起こされて、そのまま眠たい頭で荷馬車に乗って朝食のパンをもふもふしていただけなので、まだ本日のコインは一度も確認してもいないし、探してもいない。


【毎朝、ちゃんとコインがあるか確認するのは常識じゃろがぁぁぁぁぁッ!】

「耳もとで怒鳴らないでよッ! 集中できないじゃないのッ!」

コインをハンカチで磨きながらも負けじと吠える。今はコインをピカピカにすることが最優先事項なのに、なぜ邪魔をするのかトンチキ女神は。


琴花がウリエルと揉めている間にも攻撃は続く。

ガイは弓でエチロウ変異種の集中力を削ぐ。

そこを狙ってエルが攻撃をしかけていく。

溜まりに溜まった脂肪のせいで致命的なダメージは与えられないが、エルの攻撃によりエチロウの変異種のダメージは徐々に蓄積されていく。

蓄積されていく毎に変異種のエチロウが暴れ始める。


【よし、これでいけるぞ琴花】

コインの使用許可が降りたのと同時に、ズゥーンと何か大きな音が響く。

「あ」

【むむ】

音のした方向を見ると、眉間にナイフを突き立てたエルとガッツポーズをするガイの姿がそこにあった。


いつもご愛読ありがとうございます。

感想や罵倒などの意見お待ちしております。


近々、魔物の名前の由来について載せていきたいと思います。そこそこ種類が出てきたので。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ