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36枚目 査問委員会

皆様のおかげで25000PV突破です。

ありがとうございます。

「では、さっそく話を聞かせてもらおうか冒険者コイロよ」

細い目をした老人がペンをクルリと回した。

そして現在に至る。


ギルドマスターの権限という名の力により楽しかった夕食のひと時は奪われてしまったのだ。

【そいや、琴花よ。言い忘れておったが査問会という言葉は正確ではないぞ】

「え? ドラマとかで悪いことをした医師などが呼び出されて取り調べ受けるってのあるじゃん」

【正確には査問委員会じゃ。まぁ組織……この場合はギルドじゃな。それに何かしら問題のある行動を取った者や、または問題を引き起こした疑いのある者などの取調べをする。大丈夫じゃ言葉の意味までは間違えておらぬから安心しろ】

「うん、分かったよ」


「そこ私語を慎みたまえッ!」

向かい側の席に座る細身の男性が声をあげるも、細い目をした老人はまぁまぁよいではないかミルハルト書記長と手で制する。

この老人が一番の権力者のようだ。


査問委員会のメンバーはオクジェイト支部のギルドマスターハルトを加えたダムサス地方の各支部ギルドマスター5名、書記長が1名、そして……。

【あれが、おそらく査問委員会の代表じゃの。先程から嫌らしい視線を感じて吐き気を覚えるわい】

ウリエルが睨むその先に細い目をした老人の計7名。

これがギルド査問委員会7人衆であり、ギルドの治安維持法に基づき運営されている。

さらにその後方に何名かの姿が見えるが、この者達は神の目や、見えざる者達を認識できる固有スキルを持つスペシャリスト達である。

「な、なんか息が詰まる」

【こんな狭苦しい部屋にこれだけの人数がおれば仕方なかろう。もう少し良い部屋はなかったのかの〜】

琴花が住んでいた世界にも7人組で構成されているものがある。

7賢人や、7つの大罪、有名なところだと7大天使や7福神、7英雄などがあげられている。

「儂の名はテホンじゃ。まずはこんな夜分遅くに呼び出して申し訳ない。無理を承知で呼び出したのじゃが、快く引き受けて、この老体感謝の涙で溺れてしまいそうじゃ」

そしてヒョーッヒョッと笑い声をあげる。


【あやつはクソがつく狸じゃ。ちっともそう思っていない。呑み込まれるな、意識をしっかりと持て。だいたい食事中に強制連行する奴らじゃ、誠意の欠片もない。適当に聞き流しておけ】

ボソっと呟くウリエルの声に頷く琴花。

膝の上に置いた拳に力が入った。

一人ではこの空間は厳しいが、ウリエルがいるだけで精神的な安定感があった。


「まずウリエル様が宿っているのは本当か?」

「……」

「ちなみに黙秘権は処罰の対象じゃぞぃ」

琴花はテホンを睨みつけてため息をついた。

「……宿ってますけど、それが何か?」

「口の聞き方に気をつけろ。ちゃんときちんとした言葉を使いたまえ」

ミルハルト書記長が吼えた。

感高い声が狭い部屋に反響する。

喧しくて仕方がない。

「宿っておいでございますですッ! これでいいですかッ!」

ヤケクソ気味に、そして大声で喚くように答える琴花。

【怒れ怒れ、女神の名のもとに許可するぞ琴花。私もあの男は気に食わん】

後ろで爆笑するウリエル。

言われなくても、もうすでに怒っている。

「貴様ッ! 委員長に向かって何たる口の聞き方をッ!」

「これこれ、それくらいにしておきたまえ。話がややこしくなる」

ミルハルト書記長を宥めるテホン。

舌打ちをして着席する書記長。

その光景に舌打ちをする琴花。

何かあればすぐ権力を行使する。

力を持つ者の怠慢だ。

処罰とか言えば誰でも従うわけではないのだ。

だが、ここはおとなしく従うしかなさそうだ。早くこんな茶番を終えてエル達と楽しい食事会を再開したいのだ。

無駄な時間は一秒たりとも過ごしたくない。

「一体どういう経緯でウリエル様を身に宿したのじゃ?」

「目が覚めたとき、ウリエルが見えるようになっていました」

「それまでは見えていなかったのか?」

「はい……」

元の世界にいた時は見えなかった。

ウリエルの姿を認識できるようになったのは、この世界に来てからだ。


「そうか、では何か特別なことはしていたか? 例えばそうじゃの。生活習慣みたいなものでも構わんが」

「特にこれといっては。ただ両親は神様を信仰をしていましたが」

「ふむ、牧師や神父の家系というわけじゃな」

「まぁそんなところです。あたしもその手伝いなどをして育ちました」

「あい、すまなかった。ウリエル様といえば四女神の一人。その力はとてつもなく巨大。もしここでウリエル様の力を行使して反逆行為、または脱出を図ろうとしていたのならば殺すしかなかった。だが、お主は力を使おうとはしなかった。悪い人間ではなさそうじゃな」

「あ、はぁ……どうも」

力を使えるのならば使いたいと思っていたが、あいにくコインは1枚しかない。

くだらないことに使いたくないというのが本音だ。

たくさんあるならばミルハルト書記長にひとつくらい力を使っている、間違いなくそうするだろう。

もちろん死なない程度の威力で……。

「だが、巨大な力を持っていることには変わりはない。巨大な力を持つのだから、それなりの責任が付きまとうぞ。その事だけは肝に命じて欲しい。よろしく頼むぞ。くれぐれも間違った力の使い方だけは辞めておくれ」

「はい、わかりました」

琴花は素直にそう返事をした。

ここにいる査問委員会のメンバーからしたら、琴花が持つウリエルの力は得体の知れないものだ。

だからこそどういう人物なのかを試すために呼んだのだろう。

あえて夕食の時間を狙ったり、強制連行したりしたのも実は作戦だったのか、それは琴花には分からなかった。

何はともあれ無事に終わりそうな空気が流れてくる。

「これでやっと解放されるのね」

琴花は大きく息を吐いて、椅子の背もたれにもたれた。




「では御開きにしようかの」

テホンが指をパチンと鳴らした。

すると、琴花の両隣に屈強な男達が立つ。

次の瞬間、ガシッと両脇を固定された。

その姿は未確認生物を拘束した時の姿そのものだ。

「え? あの」

【な、なんじゃと】

何が起こったのかよく分からない顔で、琴花とウリエルはテホンを見る。

「すまんのぅ〜。査問委員会はこれにて終了なのじゃがの。次は一緒に来てもらいたい所があるのじゃ」

査問委員会の代表テホンの細い目が見開かれた。

いつもご愛読ありがとうございます。

感謝です。

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