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35枚目 ギルドマスター現る

いつもありがとうございます。

おかげさまで

25000PV突破しました。

ありがとうございます。

美味しい食べ物と麦酒を堪能し、楽しい時間を過ごした翌日。

異世界生活4日目。

琴花は窓から差し込む朝日に顔をしかめて目を覚ました。

清々しい朝だった。

昨日は色んな種類の魔物との戦闘をして疲れているはずなのに、その疲れは嫌な疲れではなかった。

月曜日の朝、仕事に行くときの憂鬱感は全く感じられなかった。

「おはようウリエル」

【よく寝ておったの琴花】












という風にはいかなかった。


「なぜ、あたしはここにいるんだろう」

眼鏡を外してボソッと琴花は呟いた。

とてもじゃないが、一人でいるには厳しい環境だった。

【さぁな。ひとつ言えることは良い話ではなさそうだな】

こうしてウリエルだけでも琴花の会話相手になってくれるだけで、かなり心強い。

今、琴花は狭い部屋で複数の人間に囲まれていた。

まるで尋問するかのように……。

いや、これは尋問そのものだった。

ドラマとかで大きなミスをしたときに招集される査問会のような空気を醸し出していた。

「まるで査問会みたい……」

「では、さっそく話を聞かせてもらおうか冒険者コイロよ」

細い目をした老人がペンをクルリと回した。


なぜ、こうなってしまったのか。

それは数分前に遡る。


「そういやコイロっち、これからどうするんでぇい?」

「これから? エル、あたしご飯ものが食べたいけど頼んでいい?」

「そうね、お茶漬けあたりだとサラサラと食べられて良いと思うわよ」

「俺はガッツリとしたチャーハンとかが食いたいな」

「なら両方頼んでシェアーすればいいわよ」

「悪い、聞き方間違えたわ俺っち」

好き勝手に会話をしていく3人にレイはポリポリと頬をかいた。


「俺っちが聞きたいのは、今後どういうルートで旅をするかってことだよ。例えば冒険者としての技量を上げたいとか、冒険者にも色々な種類があるわけよ」

どういう目的かによって進むべきルートが違うとレイは言いたいのだ。

「皆と一緒ってのはダメなの?」

「いや、別にいいけど……」

「なら、あたしは皆と一緒に行く。また一人になるのは嫌だから」

一人になったら間違いなく死ぬかもしれない。魔物のことや、この世界のことを何も理解していない。

今ソロで活動することは死を意味する。


「じゃあ改めてコイロちゃんを仲間として迎えるわ」

エルが手を差し出してきたので

「ありがとうエル」と琴花は両手でその手を握った。


「ならコイロ、目的地がないなら一緒に来て欲しいところがあるんだがいいか?」

「あらあらデートのお約束かしら? もう焼けちゃうわね」

「酔った勢いとは、お前さん実はヘタレだったんだなノイっち」

「ば、馬鹿言うな。違う、俺がコイロ……いやウリエルを探していた理由に関係してるんだ」

顔を真っ赤にしてノイッシュはグラスを煽った。

「そういえば、初めて会ったとき見つけたとか言っていたわね」

ノイッシュと初めて会ったとき、たしかにノイッシュはウリエルのことを探していた。

色々あってそのあたりを聞くの忘れていたことに琴花は気づく。

「そういえば、なんであたしを連れていこうとしていたんだっけ? 何で言わなかったの?」

「いや、そりゃだって、グワッパ退治するって息込んでいたじゃないか。それが終わったら言おうと思ってたんだよ」

バツの悪そうな顔をするノイッシュ。

そのノイッシュの頭をなぜか撫でるエル。

「な、撫でるなぁッ! 馬鹿エルフ」

「あん、 暴力はメッ!」

ノイッシュに叩かれた手を撫でながらエルは頬を膨らませた。

「イケメンがそんな顔をするなぁぁ、あーイライラする」

自分よりイケメンなくせに乙女みたいな仕草をするエルに腹がたち、プイっとノイッシュは顔を背けた。

「ガハハ、もうすっかりペース乱されてるなノイっち」

細かいことを気にしないレイが馬鹿笑いをする。

和気あいあいな雰囲気に琴花も笑い声をあげた。久しぶりの楽しい食事会に時間が経つのを忘れそうになっていた。

だが、その緩やかに流れる時は突如終わりを迎えた。


「失礼、この中にコイロという名の冒険者はいるか?」

「んぁ? なんでぇーギルマスじゃねぇか。そういやーいなかったな宴の時」

琴花の背後に現れた人物にレイが声をかけた。

宴というのは、先日魔物や魔人が襲撃してきた時に見事に撃退したお祝いにした祝賀会のことである。

琴花が豚の丸焼きを目の前にして焦ったことは、まだ記憶に新しい。

まぁ前日の夜のことだから当たり前なのだが……。

「ギルマス?」

人の名前だろうか?

「ここのギルドマスターのハルトよ」

「あぁお偉いさんだね」

首を傾げる琴花に説明してくれるエル。

ハルト。

ギルドオクジェイト支部のギルドマスターだ。年齢は40代前半だが、若々しい雰囲気のせいか10は若く見られることがある。

オクジェイト村に魔物が襲撃していた時、別の用事で村にいなかったが、もしいたら物理攻撃無効の固有スキルを持つ魔人戦はかなり有利に運べたであろう。

なんたってハルトは魔法剣を所持している凄腕の剣士でもあるのだから……。


「あの、あたしがコイロですけど?」

恐る恐る挙手する琴花。その姿にギルドマスターの目が一瞬だけ光るも、すぐさまスマイルになる。

「君がコイロか?」

「あ、はい」

「間違いないか?」

「はい、コイロはあたしです」

「なら別室に来て頂きたいのですが、よろしいですかな?」

質問系なのに、一緒に行かなくてはならない空気だった。

だが、今は楽しい夕食の途中だった。

後にしてもらおうと思い、

「別室ですか? でも今は食事ちゅ……」

ギルドマスターに言おうとするが、最後まで言わせてもらえなかった。


「ギルドマスター権限により、冒険者コイロの同行を命ずる」

「え……」

「あちゃーこりゃダメだ」

レイが額を手で抑えた。

「でもあたし、まだ食事中」

「諦めろコイロ、ギルドマスターの権限を行使されてしまった。大人しく従うしかない」

「断ったらどうなるの?」

「冒険者証明書の取り消しと罰金刑よコイロちゃん」

「え……は、はぁ?」

今日登録したばかりなのに、いきなり取り消されて、なおかつ罰金という言葉に琴花は思わず声をあげた。

「ちなみに罰金支払ったあと、しばらく冒険者の登録できないし、研修を受け直さないとダメだ」

レイの説明に思わず、自動車免許証みたいだなと思った。


「どうする? 断るかコイロ?」

そこまで言われて断ると言えるわけがない。

せっかく登録したのに消されるなんてそんな馬鹿な話はない。

本当にこの世界は琴花に優しくない。

「……分かりました。別室に行きます」

渋々と琴花は頷いた。

「では、こちらへどうぞ」

ギルドマスターハルトに促されるまま、琴花はギルドカウンターの奥へと足を進めた。

いつもご愛読感謝です。

感想や罵倒などお待ちしております。

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