3枚目 感じる視線
さっそくブックマークに1件。こいつぁ嬉しいものですね。
あ、本編をどうぞ。
大幅に修正と加筆をしました。
2014.10.29
2014.12.06
★
明らかに油汚れっぽかったけど、磨いたら普通に汚れが取れちゃったから拍子抜けしました。台所の油汚れもこれくらい簡単に取れるとありがたいんだけどなぁー。
☆
「油汚れにぃ〜J◯Y……ん?」
ふと視線を向けると、白い人影か何かを感じた。
森の向こう側にある草むらから、こちらを見ているような気配。
琴花は見間違いかと思い、眼鏡を拭い装着するも、そこには誰もいなかった。
「気のせい……か」
どうやらただの見間違いのようだ。
「よし」
コインを磨き終えた琴花。
コインを太陽にかざすように眺める。
一仕事を終えたような満面な笑みを浮かべて……。
「5枚とも綺麗になった。凝縮J◯Yもビックリね」
我ながら綺麗に磨けたと琴花は思っている。
ちょいと待て。
コインは1枚だけではなかったのかと。
そう、話は少し前に遡る。
少し前、琴花はコインを磨くためにバックに手を入れたときに、何の偶然かはわからないが、汚れたコインを引き当ててしまった。
「うわッ」
琴花は、反射的に汚れたコインを草むらに投げ捨てた。本日二度目の反応である。
「え? どいうこと?」
さっきバックの中を確認したときは、たしかに入っていなかった。
いつの間にしのばされていたのだろうか。嫌がらせにしてはたちが悪い。
「なんか、気味が悪いな〜。まだ出てくるんだろうか」
琴花は恐る恐るバックを逆さまにして、中身を出す。
バックの中にはコインらしきものはない。一旦ホッとしようと思うも、琴花は何となく引っかかりを覚え、スマートフォンのケースに手を伸ばす。
「あぁあった」
げんなりとした表情で、琴花はケースからスマートフォンと汚れたコインを取り出した。
さすがに3枚目ということもあってか、草むらに投げ捨てることはしなかった。
その後、2枚ほどコインを見つけた琴花は、予定通りにコインを磨くのを再開し、試行錯誤のうえ今に至る。
「これ7枚集めると、願いを一つ叶えてくれるとか……いでよッ! なんてね」
コインを眺めながら呟くも、残念ながらコインには星の形が彫られているわけではなく、何やらよく分からない鳥みたいなものが彫られている。
何となくペンギンに見えなくもないが、こんな不細工なペンギンを琴花は水族館でも見たことがない。
誰かがノートの隅っことかに書くような落書きといったほうがいいだろう。
たぶん美術の成績は下から数えたほうが早いかもしれない。
「よほど授業中、暇だったんだろうな〜」
かつては学生だった琴花は、しみじみと感想を呟く。
50分も机にかじりついて、黒板の文字をひたすら書き写す作業、そしてたまに日にちと同じ出席番号だからという理由で、前の黒板に答えを書きに行く作業。
どれもこれも苦痛でしかなかった。
その苦痛を紛らわすために、好きな作品の世界を妄想したり、ノートの隅に落書きしたりして時間を潰すのは仕方のないことだ。
「……と回想に浸るのは後にして、どうしようっかな」
コインを磨き終えても、まだ進むべき道が分からなかった。
まだまだノーヒント。
琴花は森の中。
コイン 5枚
読んでいただき、ありがとうございます。