27枚目 オクジェイト村の攻防戦 私のターン
寒い朝と夜で体調壊してませんか?
気をつけたいところです。
さて、コイン磨きの聖女様ですが
皆様のおかげで
14000PV突破
4500ユニークPV突破
32ブックマーク突破
となりました。
皆様、ありがとうございます( ^ω^ )
「ナ、ナニヲシタ」
琴花の手が光り輝く。
魔人の声は驚きを表しているが、顔はもう劇うきランラン丸である。
「ヤットホンキヲ ダシタカ」
強い奴と戦いたくて戦いたくて、ウズウズしていた戦闘狂の魔人。
【喰らうがよいわッ!】
琴花の手より収束された光が魔人に向けて放たれる。
それは美しく輝く金色の光。
コインを愛する女神が放つ至高の一撃。
だが、魔人はそれをスイッと回避する。
人混みの中で人を避けて歩くような……そんな動作。
「え……」
避けられた……。
琴花の顔が絶望に包まれる。
これが最期の一手。
光を掴むウリエルの力……。
「イイゾ、ソンナモノヲ カクシテイタカ。ダガ ザンネンダッタナ」
「そ、そんな……」
【安心せぇい琴花ぉ、まだ終わっておらんわ】
ウリエルがニタリと、女神とは思えない邪悪な笑みを浮かべる。
スッと軽やかにステップを踏んで踊り始める。それは指揮者のように、または踊り子のように。
琴花の手より放れた光は軌道を修正し、魔人に再度向かっていく。
「ムム ツイセキガタカ オモシロイ。ダガ ソウソウアタルモノデハナイ」
魔人はギリギリまで光を引きつけてから回避する。蝶が舞うように……。
【ぐぬぬ、ちょこまかと避けるでないわぁぁ。実体化しておったらビンタをかましてやりたいところじゃ】
どす黒いオーラーを出しながら、ウリエルは踊っていく。着実に魔人を追い込むように光の角度や軌道修正をするも、あと少しのところで避けられてしまう。
すぐに終わるかと思ったウリエルの攻撃が、予想以上に抵抗されている。
「パッと当たるんじゃないんだね」
「コイロちゃん、あの光はウリエル様の?」
「うん……そうだよ。ごめん、エルお願いが……あるの」
「なにかしら?」
「あそこに……エルからもらったナイフがあるの……あれ、ウリエルの加護つけてもらったんだ」
「ウリエル様の? あ、もしかしてコイロちゃんがそのナイフを持っていたから勘違いしちゃったのね」
なるほど納得がいったとエルは頷く。
「ところでコイロちゃん、あの飛んでる光は当たれば魔人を倒せるのかしら?」
「うん、物理攻撃無力化を解除するように念じたから当たれば倒せると思う」
「すごいわね、固有スキルすらも封印できちゃうなんて、さすがは女神様ね。わかったわ、まずはあのナイフを拾ってくるわ」
エルはサッとナイフが落ちているところまで走っていく。
魔人は光を避けることに集中していて、エルの動きにまで気が回らない。
【琴花ッ! 口を動かせるなら、さっさと身体を動かせ。だいぶ呼吸も整ってきたじゃろ】
ウリエルが叫ぶ。
呼吸はたしかに整ってきている。
「だいぶ……ね。まだお腹は痛いけど」
これもウリエルにより一時的に身体能力向上のおかげか、通常より回復速度が速い。
【お主の手から出た光じゃッ! 責任を持って始末せんかぁッ!】
あまりにも当たらないので、ついに八つ当たりをし始めたウリエルに、琴花はため息をついた。
「てか、まだ当たらないの?」
琴花は呆れた顔をした。
どんだけコントロールが悪いのだろうか。
いや、それとも魔人の身体能力のほうが上なのか……。
【このシャイニング馬鹿たれがッ! 当たるようにフォローするのも役目じゃろう。願い叶えました、はい終わりで済むかぁぁぁッ! むきぃぃぃ】
「分かりましたよ」
いよいよ人格崩壊を起こしそうな女神のために、琴花はゆっくりと立ち上がった。
そこにエルがウリエルのナイフを持って戻ってくる。
「はいコイロちゃんどうぞ」
手渡されたウリエルのナイフ。
琴花は魔人とエルを交互に見て、
「ありがとう、エル。でもそれはエルが使って」
「コイロちゃん」
「私よりエルが使うほうがいいと思うの」
一度受け取ったウリエルのナイフをエルに返した。
戦闘能力も身体能力も、はるかにエルのほうが上である。強い者と戦うのだから、強い人に強い武器を持たせたほうが、より戦闘が有利に運ぶ。
「駄目よコイロちゃん」
「え……」
エルは首を横に振って、ウリエルのナイフを琴花に押し付けた。
「ウリエル様は、あなたためにこのナイフに御加護を与えてくださったの。だから、このナイフは使えないわ」
「でも……」
あんなのと戦えというのは無理がある。
琴花は不安気な表情を見せる。
それにエルは優しく微笑む。
「大丈夫よ。心配しないで、私がコイロちゃんを守るから」
エルはポンポンと琴花の頭を撫でた。
今はこの手の温もりを少しでも長く感じたかった。
【むきぃぃ、おのれぇぇちょこまかちょこまかと。おいラブシーンは後にして手伝え琴花ぉぉ】
人格崩壊した女神のウリエル様が、髪の毛を逆立てながら踊っている。その姿はもはや狂気。
この物語はホラーではない。
断じて……。
魔人は相変わらず、巧みに回避しているが攻撃するほど余裕はない。
あったら、今頃琴花なんぞ挽肉だ。
物語の終焉を迎えてしまう。
今までご愛読ありがとうございましたとなる。
「コイロちゃん、私はどうすればいいの?」
エルが手首や足首を伸ばす。
「え、えーとどうしたらいいウリエル?」
髪の毛が尋常じゃない女神様に尋ねる。
どうしたら良いのか分からない。
【うがぁぁぁ、これでも当たらんかッ! そんなの自分で考えろ。あえて言うならば、エルが持ち前の脚の速さで魔人を足止めにして、光が当たったら琴花がそのナイフで魔人をひと突きにしてやれぇい】
「わかった、ありがとうウリエル。エル、魔人を足止めして」
「了解よコイロちゃん」
エルが駆け出していく。
琴花もその後を追いかける。
光は角度を変えて、魔人に降り注ぐ。だが、魔人は難なく避けていく。
「ナカナカ オモシロイゾ」
むしろ楽しんでいる。
エルがステップを踏んで、魔人の背後に回り込む。そして魔人の背中に強烈な蹴りを叩き込んだ。
「グヌッ! シンセイナル タイマンニ ジャマヲ……」
【よし、いけぇぇ】
エルの蹴りで気が緩み、避けるための集中力が切れた。
それと同時にウリエルの操る光が魔人に向かって降り注いだ。
ようやく魔人に攻撃を当てることに成功した。
「やったわ」
「クソ、アタッテ……。ナ、ナンダ。ゼンゼンイタクナイゾ」
魔人はニヤリと笑いながら、指をパキパキと鳴らす。そして琴花を睨みつける。
キュピーンと光る魔人の目に怯える琴花。だが立ち止まるわけにはいかない。
一人で戦っているわけではない。
仲間がいるのだから……。
「それはどうかしら……ねッ!」
エルが魔人の腹部に蹴りを入れた。
すると先程までビクともしなかった魔人がよろりとよろけた。
「グ、イタイ……キサマ、ソンナチカラガアッタノカッ!」
「私の力じゃないわよ」
エルはナイフを抜き、魔人を切りつけた。
「グッ、バカナァッ!」
物理攻撃無力化を解除されたことを知らない魔人は、今起こっている現状を理解できていない。
「何か知りませんが、これはいかがです?」
魔人にいつの間にか接近していたオルガンが炎を纏った蹴りを叩きつけた。
その衝撃で魔人は転がっていく。
「グ、ジャマヲス……イタイイタイ。ナンダ コノイタミハ」
今まで感じなかった痛みが魔人を襲う。
さっきまでは全然効いていなかったオルガンの技が……今は痛い。
【うむ、しっかりと効いておるようじゃの】
満足げに頷くウリエル。
その姿は先程までの狂気に満ちたものではなく、慈愛に満ちていた。
「コイロちゃんッ!」
【琴花ッ!】
琴花はコクっと頷いてナイフを握り直す。
「【いけぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!」】
ウリエルとエルの声が重なる。
「やあぁぁぁぁぁぁ」
その声を背中に受け止めて、琴花は魔人に向かって駆け出す。
魔人はオルガンと戦闘中。
こちらを見ている余裕はない。
ウリエルのナイフを握る指に力が入る。
ウリエルのナイフを魔人の背中に勢いをつけて突き立てた。
魔人が断末魔をあげる。
「ナメルナァァァァァァッ!」
「ひぃっ……」
魔人は最後の抵抗として、琴花の細い首に手を伸ばす。
だが、それは阻止された。
「どこを見ているのですか? 私はここですよ」
トドメと言わんばかりに、オルガンが魔人の頭に炎のかかと落としを放つ。
魔人の身体がグラリと傾く。
「せぇーっいッ!」
傾いたところを畳み込むように、オルガンが魔人の腹部に炎の拳をめり込ませた。
「……ガ」
足から崩れ落ちていく魔人。
人の形から黒い霧へと変わっていく。
そして、黒い霧は青い空へと消えていった。
ご愛読ありがとうございます。
これでオクジェイト村の攻防戦、やっと終わったかと思われますが……。
いえいえ、実はまだちょーいっと続くのです( ^ω^ )
魔物の名前や、ユニークな名前のスキルは募集中ですよ♩




