24枚目 オクジェイト村の攻防戦 いでよウリエル、願いを叶えたまえ
加筆や修正をしました。
2014.11.09
新しい朝がやってきた。
希望の朝が……もとい。
反撃の狼煙をあげるときがやってきた。
今、琴花の手には女神のコインが1枚ある。
不細工な鳥がチャームポイントのコインだ。
お待たせしました。
お茶の間の皆様。
今度こそ琴花のターンです。
「それがあると勝てるのか、コイロっち」
大方事情をエルから聞いたレイが、琴花の手にあるコインを覗き込む。
「しっかし不細工な鳥だよなぁー」
「可愛いとは言えないかしら」
「これ、何がモデルなんだよ。俺は好きじゃないな」
それに関しては他のメンバーも同意見なようで誰も否定的な意見を言わない。
琴花自身もこのコインに彫られている鳥を不細工だと思っている。
【全く、こんなに可愛いのに……】
ウリエルは頬を膨らませる。
女神と人間、美的感覚はかなり違うようだ。
「じゃあさっそくあいつをぶっ倒すッ！」
琴花はコインを握りしめて、魔人に視線を向けた。すっかり蚊帳の外状態の魔人さん。
畑に埋まっている人参をカリコリと食されて、そして驚く。
「オオ ビミデ ゴザイマスル」
うむうむと頷く魔人さん。
いつの間に洗ったんだろうか……。
「トコロデ マダカ？」
相変わらず律儀に待ってくれている魔人さんである。
「行く……よ」
琴花は一歩前に踏み出した。
「イツデモ イイゾ。カカッテコイ」
魔人は掌をクイクイと動かす。
最初に攻撃をさせてくれるらしい。
ありがたいことだが、そのまま立ち向かっては100%挽肉ルート確定だ。
いくら女神の加護が付与されたナイフを持とうが、いくら女神によって魔物を倒すために一時的に戦闘力を上げてもらおうが、あの魔人には勝てる気が全くしない。
だから女神のコインを媒介にして願うことは決まっている。
女神ウリエル様の召喚だ。
ここらあたりで女神様自ら、戦闘に参加をして魔人を倒してもらおうと考えている。
「いでよウリエェェェル」
魔人をキッと睨みつけて、琴花はコインを上にかざして叫んだ。
ウリエル対魔人の戦いは必見である。
【こんのシャイニング馬鹿たれがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ】
だがやってきたのは、なぜかウリエルの怒声だった。その衝撃で琴花は尻餅もついた。
「ひどいよ、ウリエルの馬鹿ッ！ 普通いきなり耳元で怒鳴らないよ」
左耳を抑えながら抗議する琴花。
思わず泣きそうになる。
【琴花よ。まさか私にあの黒っこいのと戦わせようと思っておらんじゃろうな】
ギロリと睨むウリエル様に、引き気味の琴花。だが、ここで言い争いに負けるわけにはいかない。命がかかっているのだ。
「……そのつもりですけど」
あんな化け物と戦えるわけがないじゃないか。琴花は、異世界に来るまでは戦闘経験が全くない会社員だった。
平和な日本で武器を持つことなく日々過ごしていたのだ。
魔物との戦い、通算1勝1敗。
しかもその1勝は、ウリエルの力によって勝ち取ったもの。
【ふむ、仮に私を召喚したとして話を進めるぞ琴花。で、次はどうするのじゃ】
「戦ってもらうに決まってるじゃん」
【琴花よ、最初にコインを使うときに説明したことを覚えておるか？】
「え……せ、説明……？ えーと？」
説明と言われて頭を働かせる。
魔人は放置プレイ。
「おいおい、コイロっち頭がイカれてしまったんじゃねぇのか？」
「たぶんウリエル様とお話中なのよ」
「大丈夫だ、ちゃんとウリエルと会話している。ただ何も知らない奴が見ると間抜けな光景だかな」
「便利な固有スキル持ってるなお前さん」
「いや不便だよ。見えてるだけだから」
「それ自慢にしか聞こえねぇぜ」
「……たしか、死んでる人は生き返らせることはできないだっけ……」
そう答えてから、あれこれ今は関係なくないと琴花は首を傾げた。
【うむ、ちなみに生きてるものを殺してくれという願いも女神は受け付けておらぬぞ。おっとそうではない、あのとき宿屋で説明したじゃろが】
「……そんな説明あったっけ？」
思い出せない。
【仕方ないのぅ〜。ヒントじゃ琴花。コイン1枚につき、願いは一つじゃ】
ウリエルの言葉に、琴花は嫌な予感がした。
この世界に降り立ってからというもの、嫌な予感しかしていないような気がする。
琴花は、正解しないでくれと願いながら言葉を紡ぐ。
「しょ……召喚に1枚、そして攻撃動作に移るのにさらに1枚必要……ってこと」
【そういうことじゃ。その1枚ではただ呼ぶだけで終わる】
「ゆ……友情出演とか」
【あれはノーギャラではないか。女神をただ働きさせるとはお主もワルよのぉ〜】
口元を隠しながら笑みを浮かべるウリエル。女神ではなく、悪代官だ。
「ウガアァァァァァァァァァァァ」
その時、魔人が咆哮した。
女神のコインについての説明は8枚目に収録しておりますので、気が向いたらご確認を。
いつもご愛読ありがとうございます。
感想や罵倒などがありましたら、お願いします。
魔人さん、さすがに待ちくたびれたようです。
