20枚目 オクジェイト村の攻防戦 魔人襲来
連載始めて一ヶ月となりました。
8000PVと2700ユニークPV突破。
これも皆様の愛のおかげです。
まさか、こんなにいくとは思っていなかったΣ(゜д゜lll)
ありがとうございます。
感謝です。
大幅な加筆や修正をしました
2014.11.05
2014.12.19
★
どうやら、まだこの戦いは終わらないようです。
☆
大地が大きく揺れた。
「うわッ!」
その衝撃で琴花は尻餅をついた。
「だ、大丈夫、コイロちゃん」
「は、はい何とか……あいたた」
痛みに耐えながら、琴花はエルの手を握り立ち上がる。お尻についた砂をパンパンとエルに払ってもらう。
「びっくりしたわね、いきなり揺れるなんて……どうしたのノイッシュ?」
「まずいな」
ノイッシュは片目を押さえながら苦痛の声を上げた。
「ノイッシュ君?」
「コイロ、すぐ眼鏡を外せッ! ウリエルと会話してくれ」
「わ、分かった」
言われるがまま、眼鏡を外す琴花。
すると苦虫を噛み潰したような顔をしたウリエルが現れた。
「ぐ、通訳してくれコイロ。ウリエル、これはヤバイ類の奴で間違いないよな」
質問……だが確信に近い。
ノイッシュは苦痛な表情のまま、村の奥のほうへ視線を向ける。
琴花達は知らないが、現在そこにはレイ達がいる。
【うむ、厄介な奴が来たものじゃ】
琴花はウリエルの言った通りに伝えていく。
「数はどんくらいだ?」
【ふむ、一体だけ。だが魔力は桁違いじゃ、たぶん魔人の類か】
「え? マジ……ん?」
「今は驚いてないで通訳に専念してくれコイロッ! で、何体いるんだよッ!!」
苦痛のためか、それともイライラのせいかノイッシュは声を荒げている。
「あ、はい。魔人が一体です」
「クソッ! 魔人様かよ……」
ノイッシュは舌打ちをした。
「エル……魔人って……?」
「魔人は、一言で説明すると村に攻めてきた魔物とは全く次元の違う強さを持つ魔物のことよ」
「じゃ……ジャンピンよりも」
【ジャンピンなんぞ下級な雑魚なんぞ、指先一つでダウン……もとい挽肉じゃ】
それを聞いてサーッと青ざめる琴花。
「かなりの強敵よ、もしかしたら……いえ、考えるのは辞めましょう」
「中途半端に区切るなよ。余計に恐ろしさが増すじゃねぇかよ」
「そ……そんな」
あれだけの強さを持つエルでさえ、そのような弱気な発言。
そんな中途半端に言葉を切られる方が、その恐怖さが滲み出てくる。
事態は急速に……確実にヤバイ方向へと向かいつつある。
「この村に大賢者並に強い魔術師いたか? いるならまだ何とかなる……強さによるが」
「分からないわ、少なくとも今日ギルドに寄ったとき、高名な魔術師はいなかったと思うわ」
高名ともなれば、顔を見間違えることはまずない。皆の憧れの的である。
「かなり厳しい戦いになるな、クソ」
ノイッシュは舌打ちをして走り出した。
魔人の気配がする方向へ。
琴花とエルもその後を追いかけた。
戦場は村の奥にある作物畑……。
道中、ジャンピンが屋根から何体か降ってくる。
「くそッ! 今は雑魚を相手している場合じゃねぇよ」
「駄目よ、ここで逃しては村人に被害が出るわ」
吐き捨てるように呟くノイッシュに諭すエル。数は2体。
「なら一気に片を付けるしかねぇよな」
人参を持って襲ってくるジャンピンを一撃て倒す。エルも一撃て倒していく。
「よし、さっさと行くぞ」
ノイッシュの声に一同頷き、駆け出す。
「やだぁぁぁ来ないでぇぇ」
だが、突然の悲鳴に一同立ち止まる。
小さい少女がジャンピンに襲われようとしていた。ジャンピンの武器は人参ではなく棒切れだが、戦闘経験のない少女には魔物は恐怖の対象だ。
壁に追い詰められ逃げ場を失っている。
「嫌だ、来ないでぇぇ」
ジリジリと少女に距離を詰めるジャンピン。
「させないわ」
持ち前の素早さを生かしてエルが少女を庇うように立ちはだかる。
ジャンピンが鳴き声をあげた。威嚇のつもりだが歴戦の盗賊であるエルに通用しない。
エルはナイフを構えてジャンピンを一撃で沈めていく。
「大丈夫お嬢ちゃん?」
「うん、ありがとうお兄ちゃん」
その言葉に苦笑しながらエルは少女の頭を撫でる。
「ここは危ないから、すぐ建物の中に逃げるのよ」
「うん、分かった」
少女がニコリと微笑むのを見てエルも微笑む。
「さぁー行くわよみんな」
エルの号令に琴花とノイッシュは頷いた。
☆
「おいおい、何だよこれは?」
レイが叫んだ。
事態は急に起こった。
大地がドーンと激しく音を立てた直後、黒い影が突如姿を現し、それは徐々に形をつくっていく。
「ひぃっ……」
サーシャが小さく悲鳴をあげた。
「これはまさか魔人……ですか」
オルガンは読書家でもある。
黒い影というキーワードを元に答えを導く。できることなら当たって欲しくはない。
だが、答えは残念ながら正解だった。
「ゴメイトウダ、ニンゲン」
オルガンの呟きに、黒い影だった者〈魔人〉が答えた。
「なぜここに?」
「フウインガ トケタカラニ キマッテルダロ」
オルガンは「一体、誰がそんな馬鹿な真似を」と舌打ちをした。
かつて魔人と呼ばれる種族がいた。
だが、あまりの凶暴さや極悪非道な振る舞いに、世界は一度崩壊の一途を辿る。
その時、神が遣わした者達により、魔人は成敗される。
しかし、全てを成敗するには至らず、仕方なく封印した魔人もたくさんいる。
弱い魔人は封印する前に倒せたので、残っているのは残念ながら強い奴、もしくは弱くてもクセのある奴しか残っていない。
この魔人がどれに分類するかは分からない。だが、片言の口調からして知識はそんなに高くはないと推測できる。
だが、それと強さは全くの別問題である。
「一体この村に何の用が?」
「タタカイノケハイ。ツヨイヤツガイルヨウナキガシタ。ダカラ キタ」
「けッ 帰れ帰れ。今はそんな暇ねぇんだよ」
レイが大剣を肩に担ぎながら威嚇する。
「ダマレ オマエトハ ハナシテイナイ」
「ぐッ……」
大気が震える。
魔人の一言一言にまるで何かの力が働いているようだ。
「お引き取り願うことはできないか? 今、村はこんな有様だ。魔物達もまだ村を徘徊している」
少なくとも会話はできるようなので、オルガンは魔人を説得してみる。
できることなら戦いたくない。
高名な魔術師がいるのなら話は別だが。
ギルド店員であるオルガンは、現在村に滞在している冒険者リストを思い出す。
残念ながら、リストに該当しなかった。
「フム……」
魔人は頷く。
そして周囲を見回すと、フワっと浮き上がった。
「にゃろッ! 逃げるってか」
逃げてくれるならそれに越したことはない。
両手を挙げて万歳三唱だ。
だが、魔人はレイを無視してフワフワ浮いているだけ。
「無視すんじゃねぇぜぃ」
しばらくフワフワ浮いていたかと思うと、そのままスチャっと着地した。
「モンダイナイ ホボ マモノハ イナイ」
「そんな言葉信用できっかよッ!」
大剣を魔人に向けるレイ。
だが、オルガンはそれを手で制する。
「お前は強い奴と戦うだけでいいのか?」
「モチロン ツヨイヤツトタタカイタイ。ダガ マモノ ゴトキ二 ジャマサレルノハ イヤダ」
「村には被害を加えないと約束できるか?」
「ヤクソクスル オレハ ヤクソクハ マモル」
魔人はただ強い奴と戦いたいだけらしい。
「……信じていいんだな?」
「シツコイゾ サア ハヤク タタカウノダ」
魔人が怒声をあげた。
早く戦いたくてウズウズしているようだ。
「構わねぇ、さっさとやっつけてやらぁ」
レイの先制攻撃。
魔人はまだ戦闘の構えを取っていない。
アンフェアだが、そんなことは言ってられない。
オルガンは大剣を構えて一呼吸。
「どぅるぇぇぇりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぉぁぁぁぁぁぁぉぁぉぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!)
そして、魔人の懐へと飛び込んで渾身の一撃を放った。
ご愛読ありがとうございます。
魔物やスキル名とかユニークなのを読者様より随時募集中です。
はい、オクジェイト村の攻防戦もいよいよ佳境となってきました。




