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裏1枚目 ???の視点

加筆修正しました。

2014.12.26

「え……えーと、どこ?」

【よくぞ、私の声に応えてくれた。感謝するぞ】

私は、目の前にいる女性にそう問いかけた。

髪型はセミロングで前髪を少し斜めに分けた感じじゃ。あとは黒縁の眼鏡をかけておる。

小柄な体型のせいか、女性というよりか少女と表現すべきか。

まぁ何はともあれ、私の呼びかけに応えてくれたわけだ。この際姿や形については文句は言わぬ。

そんなに醜くもないしの〜。

たしか、名前は東海林……琴花だったな。

【では、琴花よ。まずここがどこか説明しようか……っておい】

何ということか、私が話しておるというのに、こやつ横になりよった。

布団に包まって、まさか二度寝するわけではあるまいな?

仮にも女神である私を前にしてどういう神経をしておるのか?

全く親の顔が見たいわい。

私は琴花の近くに寄って、

【こりゃーこの馬鹿小娘ッ! こっちを向かぬかッ!】

耳元で思いっきり怒鳴った。

鼓膜に響き渡るほどの声量じゃ。

しかし、琴花(バカこむすめ)の奴全く反応せん。

まさかと思うが、耳が聞こえておらぬのか?

いや、待て?

それ以前に私のことが見えておらぬ……のか?

どういうことだ。まさかこちらに呼ぶ時に何かしらのミスでもあったんだろうか。

【こりゃ琴花ッ! 本当は見えておるのじゃろ? 無視とは大人気ないぞッ! おい琴花ッ!おーいッ!】

叫んでも残念ながらその声は琴花に届かない。

頭を掻きむしる。

なんてことだ、気付いてもらえないと意味がないではないかッ!

その後、私は琴花に呼び続けるも、残念ながらこの馬鹿小娘に想いどころか声すら届かなかった。


【くそッ! 駄目だッ! 疲れたッ! もう知らぬわ】

私は座り込んだ。何が悲しくて人間相手にここまでしているのだろうか。仮にも私は女神様なのに。

なんだこの扱いは……。

一方琴花はというと、私の苦労を知らずに呑気に水を飲んでおる。

さぞ冷たくて美味いじゃろ。

うん、その顔は美味しかった顔じゃな。

私はあぐらをかきながら、頬杖をついた。

「あたし、何か悪いことしたっけ? こんな所に放置されるほどの罪は犯してないと思うんだけどなぁ〜」

ポリポリと琴花は自分の頬をかく。

悪いことなら今しておるわ、この女神を無視しとるこの罰当たりめが。

しかし、困った。

見えなくては何も始まらない。

着の身着のままの状態では心許ないからのぅー。

だが、問題ない。ポケットに私自筆の手紙を入れておいた。

女神からの細やかな贈り物じゃ。

感謝の涙で溺れ死ぬと良いぞ。

あ、でも本当に死なれると困る。

目の前で死なれると目覚めが悪くなるからの。

【本来ならば、この役目は琴花ではなかったんじゃが……】

「ちょっと、すいません」

今度は何を思ったのか琴花の奴、鹿に話しかけておる。そやつは魔物じゃぞ。

まぁ穏やかな性格じゃから敵意がなければやられることはないが、武器もなしで魔物に近寄るとは、この世界の住人ではまず考えられん。

命知らずじゃ、全く。

「ステータス」

そして今度は空に向かって吠え始めた。


全く困った女子(オナゴ)じゃよ。

人が書いたメモにケチをつけたり、コインを投げ捨てたりと罰当たりな行為は続く。

まぁコインを磨いてくれたから結果オーライじゃ。

これでいつでも使用可能。

やっとこさ物語が動くってなもんじゃ。

さて本来コインに秘められた力について説明したいところじゃが、声が聞こえぬ以上何もできぬ。

歯痒いのぅ〜。

せめてすぐ使えるように契約できれば良いが、姿と声の問題が……。

むむ、今度はコイントスを始めよったわ。

「表なら左、裏なら右へ」

どちらか決められない時は女神様の言う通りってやつじゃな。

「よし、ここはシンプルに表で」

何がシンプルなのか分からぬが、琴花はコインを上に投げた。そして掌で隠す。

果たしてどちらが出るのやら。

「あれ? そういえばコインの表ってどっちだっけ?」

琴花が首をかしげておる。

それはな、琴花よ。

可愛い鳥が掘られているほうが表じゃ。

「10円と同じ考えでいくなら、この不細工な鳥は裏ってことになるのかな〜」

この罰当たりな小娘めッ!

この鳥は、けして不細工ではないぞ。

こんなチャーミングな鳥はなかなかおらぬぞ。

しかも裏じゃと?

馬鹿者こっちが表じゃッ!

「あの不細工な鳥は表だね。日本の常識が通じないこともあるよ。うん」

私の念が通じたのか、表に訂正しよった。

だかのぅー琴花よ。不細工は取り消せ。こんなにチャーミングなのに不細工とは、お主の美的感覚を疑うぞ。この鳥の美しさを調きょ……もとい講義してやらねば。

【ようやく動き始めたか】

行き先を左側に決めたようで、琴花が歩き始めた。

するとピョコンと白い奴が顔を出す。

むむ、ありゃジャンピンじゃな。

「わぁ〜兎もいるんだ、水でも飲みに来たのかな」

そんなわけあるかいッ!

メチャクチャ戦闘態勢じゃ。

【馬鹿者、近づくでないわッ!】

私は思わず念を飛ばしながら、琴花の頭を叩いた。

触れられないことわかっていたのにだ。

触れられないのに琴花が痛み出した。

ふむ、私の愛が通じたか。

いや、そうではなかった。

しまった、うっかりコイン使ってしまった。

まぁー命あっての何とやらじゃ。

説明すれば分かってくれるじゃろ。

1枚くらいは許せよ琴花。

まだ所有権は私にあるが……くぅエネルギーの消費が激しい。連続でコインは使えぬか。

さて、ジャンピン……しかも変異種か。

つくづく運のない小娘じゃ。

さてどうするのじゃ。

「たぶん、ここでこのコインを使うんだ」

うむ、琴花よ。

着眼点は良いな。

まさにその通りじゃ。

コインがあれば変異種なんぞケチョンケチョンじゃ。

と言いたいところじゃが、まだ所有権は私じゃ。

そんなこと知るわけもない琴花がコインを空に向けてかざす。

「コインよッ! この不浄なる者を倒したまえッ!」

一昔前のラノベなどで使われる呪文の詠唱っぽいのを叫びよった。心なしか琴花の奴ドヤ顔になっとる。

だが、そんなのでコインの力は引き出せるわけもなく、琴花はジーっとコインを見つめておる。

次の瞬間、何を思ったか投げよったコインを。

罰当たりな小娘じゃ。

しかし、コントロールは良いのぅー。

ジャンピンの額に当てよった。

ガッツポーズしてるところ申し訳ないが、まだまだ試合は続行じゃ。

「も、もしかしてき……効いてない……とか」

うむ、残念じゃがその通りじゃ琴花。

ジャンピンを怒らせてしまったようじゃ。

今の私にできることは祈るだけじゃ。

頑張れ琴花、応援するぞ。


琴花もある程度ジャンピンに抵抗するも、残念ながらダメージを与えるまではいかなかった。

せめて武器があれば話は違うのじゃがのぅー。

どう見てもステゴロで戦うタイプじゃなさそうじゃ。

「人参がそんなに綺麗に地面に突き刺さるわけないじゃんかッ!」

叫んでもこれが現実じゃ。

ジャンピンが使う人参はよく斬れるのじゃ。

そこそこの刀鍛冶が作ったナイフよりよく斬れるぞ。

とと、頑張れ琴花。

うまく回避しておる。動きだけは大したものじゃ。

うむ、逃げ出したか。

しかし、ジャンピンも速さだけなら中々のものじゃ。

何とか出口まで……あ、こらッ!

そっちは出口ではないぞ。

あーもう世話のかかる小娘じゃ。

あージャンピンの固有スキルが発動しよった。

琴花、もろに背中にダメージを受けよった。

【立て琴花ッ! 立つんだ琴花ッ!】

駄目じゃ琴花の奴動けぬ。

【しっかりしろ琴花】

叫ぶも琴花の奴、反応せん。

諦めよったかッ!

ジャンピンが鳴き声をあげている。

トドメをさすつもりじゃ。

そんなことさせるかッ!

【ここで死なせるわけにはいかぬッ!】

私はコインの力を使い、琴花に物理攻撃無効化のシールドを張った。これでしばらくは持つ。

勝手にコインを使ってしまったが、仕方ない。

あとで説明して許してもらうしかない。

力を使った反動が返ってくる。

頭痛が激しい。

勝手に力を使用するとこうなるのが厄介じゃ。

【く、ジャンピンごとき雑魚に何もできぬとは……】

私は歯ぎしりをした。

これで琴花の命は守られた。

だが、このシールドは24時間しか持たない。

いや、それ以前に琴花の命が持つかわからぬ。

【ここに怪我人がおるぞッ! 誰か気づけぇえぇぇぇい】

私は誰か来てくれることを願うしかできなかった。

琴花を救って欲しい。

私、ウリエルはこの者を救ってくれることを残りの3人の女神に祈った。

祈らずにはおれなかった。

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