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10枚目 異世界2日目の朝

大幅な加筆と修正をしました。

2014.10.29

2014.12.12

この年になって食べさせてもらうのは、とても恥ずかしい。


窓から光が射し込む。

その眩しさに耐えきれなくなった琴花は、布団を頭までかぶった。

「朝よ。コイロちゃん起きなさい」

「嫌だ〜まだ寝てる」

だが、それも束の間。

布団を剥ぎ取られてしまう。

「もう……ちょっとだけ〜」

「ダメよコイロちゃん。怪我人でも規則正しく起きないと」

エルフの美少年エルに起こされ、琴花は渋々と身体を起こした。


異世界2日目の朝である。

朝日が差し込む中、エルフの美少年であるエルの髪がキラキラと光っていた。



「はい、あーん」

朝食もなぜか、エルに食べさせてもらっていた。琴花は、昨日逆らえないと判断したため、今日は比較的に大人しく従っている。

朝食は女将さん特製のお粥と漬物である。

「しっかり食って早く元気にならねぇとなコイロっち」

横からヒョイっと漬物一切れを摘み、「かぁ〜やっぱ美味ぇぜ」とレイ。

「レイ、コイロちゃんのご飯を取らないでッ!」

「いいじゃねぇかよ、減るもんじゃなし」

「いや、減ったし」

「おぅ言うねぇいコイロっち。元気になってきた証拠だぜぃ」

レイは琴花の頭をポンと叩いた。

「はい、これで終わりよ」

最後の一口を琴花が咀嚼し、飲み込むのを確認すると「はい、お粗末様でした」と琴花の代わりに手を合わせる。

「あ、ありがとう、ごちそうさまです」

ぺこりとお礼を述べた。


「そういやよぉ〜コイロっち。旅の目的地はどこだ?」

「え……」

食事を終えて、お茶をひとすすり。

異世界でも食事は美味しいなと、しみじみ心の中で呟く琴花に、レイが話題を切り出した。

どこに行くか琴花は考えていなかった。

というよりこの世界について全く分からないから考えようにもさっぱりわからない。

一体どこへ向かえばいいのだろうか。

食後の至福のひとときが、まさか詰んだ状態へと変貌するとは思いもよらなかった。


「えーと……特に決めてはないです」

正直、場所なんてわからない。

下手な事を言って怪しまれるのは困る。


「そうか、目的地もない気ままな一人旅か。悪くねぇな」

レイが満足そうな笑みで頷く。

「あの、エルやレイさんは何か旅の目的でも?」

「んぁ? レイさんってかたっ苦しいじゃあねぇかッ! 呼び捨てで構わねぇよ。目的か、あるっちゃあるし、ないっちゃないわな。がははははは」

「レイは魔物を退治しながら旅をしてるのよ。私は道中たまたま同じ魔物退治に参加して、なぜか知らないけどついてくるのよ」

「あぁ? なんだよ金魚のフンみてぇに言いやがってよッ! こいつ見た目は細いけどよ、こう見えても凄腕なんだよ」

「へぇ〜」

前衛と後衛、非常にバランスが取れていると琴花は思った。

エルフは魔法で戦士を援護したりするからパーティー編成としては悪くないだろう。

「やっぱ色々と契約してるんですか? 精霊とか」

ワクワクしながらエルに尋ねる。

琴花が読んでいたファンタジー小説で、エルフが風の魔人と契約するシーンがあったのを思い出す。

だが、答えは予想外であった。

「あ? 契約? んなもんしてねぇよ」

レイは眉を潜める。

「森に住んでるエルフで、精霊と契約している優秀なエルフもいるけど、私は落ちこぼれだったからできなかったの」

「え? じゃあエルは何を?」

「おぅ、エルはこう見えても凄腕の盗賊なんだよ」

「え? 盗賊……ですか」

当たり前のようにエルフは魔法を使うと思っていたので琴花は驚く。


「じゃあ魔法は……?」

「ふふ、全くダメなの。でも魔力や気配の察知は得意なのよ」

片目でウィンクする。

エルは天然の女たらしだと琴花はそう認識する。

「おぅよ、だから呪いのアイテムとかあると注意してくれるからありがたいんだわ、がはははは」

レイは豪快に笑う。


「で、これがその呪いのアイテムだぜぃ」

机の上に真っ黒な鞘に入ったナイフをゴトリと置いた。

「ッ!!」

持ってるのかよッ! と琴花は心の中でツッコミを入れつつ、ベッド上で後退する。


あと少しでベットから落ちずにす……いや、残念。


琴花は頭から落ちた。

【おいおい、琴花なにをしているのだ】

落ちたときに眼鏡も外れてしまったようで、困った顔をしたウリエルの姿が見えた。

高さ的に大怪我するほどではないが、エルが悲鳴をあげた。

「ちょっとレイッ! 嘘を言わないのッ! コイロちゃんが落ちちゃったじゃないのッ! コイロちゃん大丈夫?」

「んだよ、ちょいとからかっただけじゃねぇかよッ! まさかよ、落ちるとは思わなかったけどよ〜」

琴花の頭をよしよしするエルに、困ったように頭をポリポリとかくレイ。


「あいたた、じゃあこのナイフは……」

「大丈夫よ、コイロちゃん。これは彼自作のナイフよ」

【うむ、呪いなんてものは全くないぞ琴花】

「もう驚かさないでください。ということは鍛冶屋さんですか?」

「おうよ、ガキの時分から二年前まで弟子入りしてたからよ、簡単な武器なら作れるぜぃ。ただし、ちゃんとした設備がねぇと作れねぇがな」

レイはさらに鞄の中か黒いナイフを数本取り出して机に置いた。


「とりあえずコイロっちが、何を得意とするかは知らねぇが、護身用として一本持っておくことは勧めておくぜ」

「でも……」

「なーに、遠慮すんなって。旅のお供に一本くらいあっても邪魔にはなんねぇよ」





「でも……お金ないです」

良い商品を勧めるレイの気持ちは分かるが、今の琴花ではその気持ちに応えることができない。


「そっか〜ゼニがねぇんなら仕方ないわな」

レイはポリポリと頬をかいた。

「はい、せっかくですけど……そのナイフをしまってください。ごめんなさい」

琴花はレイから視線を外す。とてもじゃないが顔を見れない。


「うーん。なら、こうしたらどうかしら?」

エルがパチンと両手で叩く。

その音に反応して、琴花そしてレイはエルに視線を向けた。

いつもご愛読ありがとうございます。


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