殿様は酒がお嫌い
ええい、もう限界だ。
この土居宗珊は今は亡き、大殿の名により粉骨の努力をしてきたがあのバカ殿来たら遊び呆けるばかりで何もせぬ。しかも酒の味を憶えたら一時も手放なさぬときた。今頃は起きて向かい酒よと呑んでいるに違いない。賭けてもいい。ぶ
「殿、居るか!」
えいと襖を開けるとなぜか箒を片手に首を傾げた件のバカ殿と出くわした。
頭が痛い。
青年はそう感じ体を起こすといきなり嘔吐感に襲われた、気持ち悪い。
風邪でも引いたかと思いきや考え直す、大学に入り、家を出て自由な生活をしていてもそこまでの生活はしていないはずだ。それに何だろうか妙にひらひらとした着物のような服を着せられている、しかもいつものぼろアパートと違いなにやら豪華絢爛たる和室だ。が
「部屋は主を表すか」
周りを徳利とお猪口や相撲でみるような大杯があちこちに転がり、空の酒樽と思わしきものまで散らかっている有様で乱行のあとのようだった。
どうやらここの主は大層な酒飲みらしい
それにしても、酒臭い。今の状況うんぬんよりもそれが青年は許せない。
酒は毒である、煙草も毒である。 これは自分の成人になってからの価値観であり、誰があんな不味い物を嗜むかという青年の現れである。
よって酒の類はこの部屋から放りだすことにした。部屋の主がなんと言おうとだ。
「酒だめ絶対」
がんらがんらと酒の類をかたす。放りなげられた徳利やお猪口や大杯も部屋の隅に追いやる。部屋の主かまたは家人がだしっぱの箒を見つけ、そのまま掃除にしようかと掴んだ時、ぱんと襖が勢いよく両脇に開いた。
唖然とした、サムライの様な何某を横目に青年は掃除を始める。まずこの奇天烈な状況よりも目先の事である。大事の前の小事をかたす、ペースを崩す事なかれ何事も流されることなかれである。そして、ついでに青年はいきなり初対面の相手のペースに巻き込まれる良しとはしない。
「…殿?」
「初めましてこんにちは、お侍さま。この部屋に何かご用でも? ここの部屋の人でなければ回れ右で永遠に来ない一昨日へどうぞ。用事が在るならば、こちとらは見ての通り片づけの最中ですのでガラクタと一纏めにされて燃えないゴミにされたくなくば部屋の外でお待ちください」
「な・・・!?」
「では」
開口と同時に無礼の速射砲を繰り出してお侍さま、土居が固まると同時に巻き戻すかのように開け放たれた襖を閉める。速射砲を放つことで頭痛のやつ
あたりを済ますと軽くきがはれた。