嘘つき
彼は照れた様子で、
「ありがと、なんか悪いな…まだ付き合って2ヶ月なのに」
明らかに、プレゼントを期待してる。
さっきまでは、オロオロしてたのに…
わたしが死んだこともう忘れてるのかよ?
やっぱりそんなやつ、か。
了解。
「ちょっと待ってて」
と言って、わたしは隣の部屋にいく。
楽しみに待ってる、あいつ。
また、高価なものが用意されてる。
なんだろう、ってわくわくだよね?
ごめんね…
そのバカみたいに単純な期待は裏切るよ。
それよりもっと、スゴイもんだからね。
この世で一番、高価なもの…
「おまたせ」
戻ってきた、わたしを見て、
「な、なにしてんだ!」
あいつは、また慌てだした。
わたしの手には、
ギラギラと光る、包丁が握られてた。
あいつは、手を上げて身構える。
ここで、おまえを殺したら…
せっかく取り憑いた意味ないし。
殺すなら、自分のままやってるよ。
やっぱり、頭わるいやつだねー。
「わたしからのプレゼント…わたしのすべて、命をあげる」
ゆっくりと、身構えてた手を下げていく。
でも…あいつの顔は真っ青なまま。
「さっきの見て、おかしくなったのか…」
わたしは、冷静に応える。
「わたしと一生、一緒だよね?」
「ああ、一緒に、決まってるさ」
ひきつり顔で、言う。
「…嘘つき」
わたしは、胸元に包丁を持っていく。
「何してるっ」
「だって、嘘ついたから。金目当てなだけよね」
「…」
反論が、ないか。
わかりやすいやつ。
包丁を胸に突き刺す。
ゆっくりと…
彼女の身体だから…
死なないように、
急所ははずして、きっちりと加減して。
ちょっとだけ、ごめんなさい。
「ばか、やめろよ」
ばかは、どっち?
あなたの嘘なんて…
世の中じゃ通用しない。
わかりやすいんだよ。
「彼女と、浮気してたんでしょ」
「ち、違う。おれは浮気なんかしない」
また、嘘。
最後くらい素直になれよ。
「ばか」
彼は何も言い返せない。
こんなやつのために死んだ。
そんなわたしも…
同じ、ばか。