校正者のざれごと――フリーランスの確定申告
私は、フリーランスの校正者をしている。
とうとうやってきましたね。この時期が。令和7年分の確定申告。締め切りは3月16日。
私はふだん、確定申告や青色申告、税金の本の校正の仕事をよく受けている。そのつど税制改正の内容なども調べている(ちなみに令和8年度税制改正大綱はかなりシビれる内容だ。ぜひご一読を)。おかげでこの憂鬱な時期も何とかやり過ごせる。
ただ、ひとつだけ毎年頭を悩ませていることがある。それは、校正プロダクションの社長が、支払調書をなかなか出してくれないこと。仕事をもらっている他の会社は、1月の終わりくらいにはちゃんと送ってくれているのに。
「あの、すいません、そろそろ支払調書を……」
3月も1週目を過ぎたころ、納品に来たタイミングで社長に声をかけてみる。毎年のことだ。しかし忙しい社長はなかなか動かない。ゲラ(校正紙)のチェックや出版社とのやりとり、メールの確認などとにかくいつもバタバタしている。
「うん、そうだねえ……」
ぼそぼそと言い残して立ち去ろうとする。申告の締め切りは3月15日。つぎの出社のタイミングでは遅い。逃がすものか。「今日出していただかないと間に合わないので、(出していただくまで)待ってますね」笑顔をつくり、ちょっと強めに言ってみる。そして、社長がパソコンの前に座り調書を印刷し終わるまで横に張りついて待つという荒業に出る。まあ、例年通り(追記:ところが、今年は社長が支払調書の作成を誰かに依頼したらしく、2月の初めには届いた。衝撃だった。あの毎年の攻防は何だったのか)。
個人事業者の申告方法には青色申告と白色申告がある。青色申告が選択されることが多い。青色申告にはたくさんのメリットがあるからだ。いくつか簡単に挙げてみる。
① 65万円の青色申告特別控除。その年の所得を65万円下げることができ、その分所得税を減らすことができる。翌年の住民税なども下げる効果がある。
② 純損失の繰り越し控除。損失を翌年以降に繰り越して、将来の所得から差し引ける。
③ 青色事業専従者給与。家族に支払う給与を全額経費にできる(白色は上限あり)。
④ 減価償却の特例。30万円未満(令和8年4月以降40万円未満)の減価償却資産を一括で償却できる など。
この時期になると校正者の間でも確定申告が話題に上る。やはり青色申告の人が多く、複式簿記の帳簿つけにみんな苦労している。「小山さんも、青色ですよね」と聞かれ、いつも曖昧に返事している。なぜなら、私は青色ではなく白色申告なのだ。
言わせてもらえば、あえて青色申告はしていない。私のような校正者は、まず仕入れ等がないので損失が発生しない(すなわち、純損失の繰り越し控除は使えない)。ひとりで仕事をしているので専従者給与の特例もない。減価償却も、車や応接セットのような大きな設備は必要ないので該当しない。メリットとしては65万円の青色申告特別控除のみ。ややこしい帳簿つけと天秤にかけ、白色でいいか、という結論に至った。
まあ言い訳ですね。本当の理由は、複式簿記が面倒だから。いくら勉強しても、複式簿記というしくみがどうしても頭に入ってこない。苦手なのだ。
校正料や原稿料などは、振込の際に10.21%源泉徴収されることになっている(一度の支払いが100万円を超えると20.42%。該当したことはないが)。10%ではなく10.21%と半端な数字になっているのは、復興特別所得税が含まれているためだ。2011年の東日本大震災の復興にあてるため、2013年に創設され、2037年まで所得税の2.1%が追加で徴収されている。
復興税についてちょっと脱線すると、株式などの譲渡所得にかかる税金は20.315%となっている。何とも中途半端な数字だ。0.315%って何だ? 譲渡所得にかかる税金は、所得税15%と住民税5%の合計20%で、この所得税15%に2.1%の復興特別所得税がかかるので、所得税は15.315%。住民税5%との合計なので20.315%となる。何ともややこしい。
校正料に対し一律に源泉徴収されているが、実際はさまざまな控除などがあり税金が還付されることになる。青色申告の65万円の控除もそのひとつ。そして、以前「校正者のざれごと――年収の壁が複雑すぎる」で取り上げた基礎控除もそう。令和7年分の基礎控除は従来の48万円から大幅に引き上げられ、最大95万円になった(令和8年度税制改正大綱によると、今後さらに上がるらしい)。税金というのは収入から経費や控除を引いた残りの金額(所得)にかかるので、所得が少ないほうが税金が安くなる。
参考までに、経費については「家内労働者等の必要経費の特例」というのがある。必要経費が65万円に満たない場合に、65万円(令和8年分からは69万円)を収入から控除できるしくみだ。校正者の経費は交通費のほか、筆記用具やコピー用紙、携帯料金などもあるが、計算しても年間65万円までになることはない。
今年も簡易な帳簿つけですむ白色申告で難なく確定申告を終えた。今年は基礎控除の引き上げの影響もあり、収入と比較して還付される金額が多い。よしよし、何に使おうかな。休みをもらって旅行でも……いやいや、この還付金から来年度分の国民年金保険料やその他支払いもある。しかも仕事の締め切りも迫っている。とほほ。まあ、これも例年通り。




