3.ギルド講習と魔石
リクはその日の午後から初心者講習を受けることになった。
講習はギルド内の訓練場で行われた。
参加者はリクを含めて5人ほどで、講師はローブ姿の女性だった。
「冒険者デビューのみなさん、私はこちらのギルドで薬草の鑑定やポーションの生成などを担当しているミルナです。よろしくお願いいたします。
今日はみなさんに、Fランクのクエストで採取をお願いしている基本的な薬草の種類をお教えします。」
ミルナさんがそういうと、参加者が前に集められる。
ミルナさんの前には4つの鉢植えがある。
「左から順番に、ニガニガ草、カラカラ草、ネムネム草、アワアワ草よ。
ニガニガ草は口に含むと苦いけど、解毒作用があるのよ。食べ過ぎると下痢を起こすから気を付けてね。
カラカラ草は赤い実を食べるととっても辛いけど、食欲がないときにとてもいいの。体が温まるから風邪の引きかけの時なんかにも使われるわね。
ネムネム草は眠れないときや気分を落ち着けたいときに、花の部分を乾燥させたものをお茶にして使うわ。といっても、効果は弱いけどね。
アワアワ草は茎を煮ると泡立つ液になって服を洗うのに役立つのよ。汚れたままの装備を着ていると病気になるから注意してね。」
ニガニガ草はヨモギに見える。カラカラ草は唐辛子っぽいな。
ネムネム草は白い花だ。花に詳しくはないけど、日本にあっても違和感がなさそう。
アワアワ草は見たことがないけど、丸い葉っぱが付いた背の高い草だ。石鹸も貴重なのかもしれないな。覚えておかないと。
その次に来た解体の講師は筋骨隆々の中年の男性だった。
「俺はゼノ、ここで解体や買取をしてる。よし、新米ども。今日は魔物の解体を教える。これができなきゃ、冒険者としての稼ぎはゼロだ」
訓練場の中央に、布をかけられた物体が運び込まれた。
「なんで今更解体の講習なんて聞かされるんだってツラだな。これを見ろ、これが魔物だ」
ゼノがそういうと、覆いが取られた。なぜだか周囲がざわついている。
異世界の住人には獣に見えるらしいソレの正体が、リクには一目でわかった。
(…これ、車のおもちゃじゃないか?)
「お前たち、こいつの腹にあるブツを取り出してみろ。魔物の中には『魔石』がある。こいつが金になるんだ。丁寧に取り出せよ」
と言いつつも、ゼノが解体に使うのはハンマーだ。どうやら、軽い力で複数個所を叩き、ヒビを入れて分解しているらしい。
リクは手本を見ながら、おもちゃのボディを慎重に分解した。他の参加者がやたらとおっかなびっくりしているのが気になるが、日本で暮らしていたリクにとってはどうということない。
中からゴロリと転がり出たのは、手のひらに収まるサイズの青白い石だった。
「これが…魔石…?」
リクはその石を手に取り、目を凝らした。
石の表面は奇妙な光を放ち、細長く、両端は平らな面と凸の面がある。どこか見覚えのある形状だった。
(これ…まるで…電池だ…)
リクの心臓が高鳴る。
日本で使っていた単三電池そっくりなその石を見つめながら、リクの脳裏には次々と閃きが浮かんだ。
(もしかして、この魔石を使えば…!)
講習が終わった後、フラーカがリクに声をかけた。
「どうだった?初めての解体作業は」
「うん…『魔物』を見るのは初めてだったからびっくりしたけど、でも魔石を見たとき、なんだかすごく興味が湧いたよ」
「そうね…『魔物』はびっくりするわよね。でも、リックって、ちょっと変わってるわね。普通の人は、魔石を見てそんなふうに思わないものよ」
フラーカは不思議そうにリクを見つめたが、それ以上は突っ込まなかった。
リクは街の冒険者ギルドで新しい一歩を踏み出す。
魔物の解体作業で「魔石」を手にしたリクは、その石が持つ可能性に胸を躍らせる。
異世界での生活が本格的に始まる中、リクの冒険は大きく動き出そうとしていた。