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14.地下室と監視の輪

研究機関の夜は静寂に包まれていた。

研究員たちはそれぞれの部屋に戻り、実験室の明かりも落ちている。

だが、リクにとってはこれからが本番だった。

リンディータが集めた噂とシビウから託された地図を頼りに、彼は研究機関の廊下を慎重に進む。


「まずは、地下に行くんだったよな……」

手にした地図を懐に押し込むと、彼は小さな声で自分を鼓舞した。

リンディータの協力で電子錠のコードを手に入れたが、彼がこの探索に失敗すれば、彼女やシビウにも危険が及ぶ。だからこそ、一歩一歩を慎重に、そして確実に進む必要があった。


地図が示す地下への階段は、普段はあまり使われない倉庫の隅に隠されていた。

リクは埃をかぶった鉄扉を見つめ、ぐっと手を伸ばした。

リンディータの話では、この先に監視の中枢がある可能性が高いという。


「よし……」

電子錠のパネルにコードを入力する。リンディータが教えてくれた通りの数字を入力すると、低い電子音と共に扉が解錠された。

リクは小さく息を吐き、慎重に扉を押し開けた。


地下への階段を降りると、空気が一変した。

冷たいコンクリートの壁に囲まれた通路は、まるで現代の地球の地下施設のようだった。

無機質な蛍光灯が床を照らし、その光が壁に沿ってずっと奥まで続いている。


彼は通路の奥に目を凝らした。

地図によれば、目的の部屋はさらに先だ。

緊張で喉が渇いているのを感じつつも、彼は足を止めることなく進んだ。


やがて彼は、地図が示す「中央監視室」と記されたドアの前にたどり着いた。

ドアは分厚く、その表面にはさらなる電子錠が取り付けられていた。

だが、リンディータから渡された筆頭研究員用の端末を使うと、扉は驚くほど簡単に開いた。


「これが……監視室……」

リクが目にしたのは、壁一面に並ぶモニターだった。

それぞれのモニターには、研究機関内部や街の至る場所の映像が映し出されていた。

広場、貴族街の邸宅、果ては民家の中まで──。


「これ、全部……監視されてるのか?」

リクは愕然とした。この部屋がただの監視室ではないことは明らかだった。

モニターには、ドローンの映像や、リク自身すら存在に気づかなかった隠しカメラからの映像も送られていた。

思い立って、日付と時刻、住所を入力してみると、リクがこの街に来たばかりの時、通りがかりの露店で串焼きを買った映像すら比較的容易に見つけることができた。


「何てことだ……」


部屋の隅に視線を移すと、そこには山積みになった書類とメモがあった。リクはそれを手に取り、ざっと目を通した。その中の一枚に「電力供給システム」という文字が目に留まる。


「中央教会……発電所?」

メモには、電力の供給元が教会の敷地内にあることが記されていた。

彼は思わず息をのんだ。教会は人々に信仰を説く場でありながら、裏では発電所を秘密裏に運営していたのだ。


さらに読み進めると、電力供給に関する技術が、この国のものではないことを示唆する記述があった。

設計図や技術のメモには、彼がリンディータから学んだ魔族の国の特徴的な記号が散りばめられていた。


「これって……魔族の国の技術……?」

彼は瞬時に推理を巡らせた。

「この国が自力で発電所を建てるなんて不可能だ。王や貴族が秘密裏に魔族の国と密約を結び、技術供与を受けている……?」


彼の頭の中で、パズルのピースがはまっていくようだった。

人間の国の貴族たちは、魔族の国から得た技術で自らの権力を強化しつつ、市井の人々にはそれを隠し、あくまで自分たちの手柄と見せかけていたのだ。


「リック!」

突然、聞き慣れた声が耳に届いた。振り返ると、リンディータが息を切らせて立っていた。


「なんでここに……!」

リクが驚きの声を上げると、彼女は険しい表情で言った。

「警備員がいつもと違うルートで大勢巡回してるのが見えたの。早く出ないと捕まるわよ。」


だが、リクはモニターを指差し、必死に訴えた。「見てくれ! これ、全部監視されてるんだ。しかも、教会の発電所まで関係してる。」


リンディータは一瞬戸惑い、そしてモニターとメモを確認した。

彼女の目が鋭くなり、低い声でつぶやいた。

「やっぱり……あいつら、魔族の国の技術を盗んでただけじゃない。本当に……」


「どういうこと?」

リクが尋ねると、リンディータは短く答えた。

「後で話すわ。今はここから出るのが先決よ。」


二人は監視室を後にし、足音を殺しながら通路を引き返した。

やがて階段を駆け上がり、ようやく研究機関の外に辿り着いた。

リンディータはリクに向き直り、冷たい汗をぬぐいながら言った。


「あなた、よくやったわ。でもこれで終わりじゃない。これからどう動くかが大事よ。」


リクも同じ思いだった。この国の裏側にある秘密を暴くため、次の行動を考えなければならない。そして、それをするには、シビウの助けが不可欠だった。


「分かった。次はシビウに相談しよう。」

リクの言葉に、リンディータは力強くうなずいた。


彼らは再び動き出す決意を固めた。この先に待ち受けるのはさらなる危険と謀略の渦中だった。

ここまでお読みいただきありがとうございます!

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作者のモチベが上がりますので、ぜひよろしくお願いいたします!


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