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10.研究機関と生意気娘

リクは、白亜の建築物の前に立っていた。

巨大な石柱が空に向かってそびえ立ち、そこから放たれる光のように、建物はまるで天に届くような印象を与える。

白く輝く壁面と、複雑な幾何学模様が施された門扉。入り口には、古びた装飾が施された扉がある。

ここが、あのシビウが所属していたという「魔法使いの研究機関」だ。

だが、リクの胸中には、ちょっとした不安もあった。自分がただの冒険者であり、この場所に足を踏み入れるのが不釣り合いなのではないかという気がした。

しかし、シビウから受け取った紹介状を手に握りしめ、息を整えると思い切って扉を叩く。


どこかから、賑やかな声と何かを動かす機械音が漏れてくる。

「ここがシビウが言ってた研究機関か……なんだか、大学みたいだな。」


リクが門をくぐると、受付のカウンターで書類を整理していた女性が顔を上げた。

彼女はリクを一瞥するが、声はかけられなかった。

あまりにも露骨に無視されるのは心外だ。

「あの!」

「用件は何かしら? 見学なら受け付けていないけど。」

女性は事務的な口調で告げる。

リクは慌ててシビウからの紹介状を差し出した。

しかし、それをざっと目で追った受付の女性は冷たい表情を崩さない。


「シビウ…?あの人、今さら誰かを紹介するつもりだったの? それにしても……子どもじゃない」


リクはむっとしながらも、「子どもじゃないです」とだけ反論する。

リクが必死に反論するが、受付の女性は書類を返しながら首を横に振る。

「悪いけど、ここは遊び場じゃないの。お帰りなさい。」


その時、奥の廊下からローブをまとった中年の男性が現れた。

彼はリクと受付のやりとりを耳にし、紹介状に目を留めると興味深そうに笑みを浮かべた。


「ほう、シビウの紹介状とは珍しい。懐かしい名前だな……それにしても、ずいぶん若いお客さんだ。」

リクをじっと見つめた後、男性は受付の女性に向き直る。


「一度くらい様子を見てやってもいいんじゃないか? シビウの名を軽んじるのは、我々にとっても損失だろう。」

彼の言葉に女性は渋々ながらも頷き、リクはようやく施設内に入ることを許された。


白亜の建築物の内部は、外観から想像できないほど活気に満ちていた。

広大な中庭では、若い研究者たちが魔導具を調整したり、実験を行ったりしている。

小型のドローンが空中を飛び交い、それを追いかけるように動く自律型ロボットが歩いている。


「ここ、学校みたいだ……。」

リクは目を輝かせながら辺りを見回した。

その視線の先に現れたのは、ピンク色の髪をツインテールに結び、小柄な身体に高級そうな服を纏った少女だった。


「誰?」

少女は鋭い声でリクを呼び止めた。

リクが振り返ると、彼女は腕を組みながらじっとこちらを睨みつけている。

彼女は冷徹で、少しも周囲に気を使う様子がない。


「私はリンディータ。ここで一番の天才よ! ……で、アンタみたいな田舎臭い奴が何しに来たわけ?」

その少女の言葉は、リクを一瞬で圧倒した。

背丈は変わらないのに、見下ろされているような気分になる。

しかし、その目は不遜ではなく、確固たる自信を持っているように見えた。


「僕はリック。シビウの紹介でここに来たんだ。」


リクが答えると、リンディータは鼻で笑った。


「シビウ? ああ、あの落ちぶれたおじさんね。ふーん、それでアンタみたいな子どもに何を教えたっていうの?」


「魔導具の仕組みとか……。」

リクが口にすると、リンディータは呆れたようにため息をついた。


「言っとくけど、ここは遊び半分で入れる場所じゃないのよ。……まあ、退屈だし、あんたの実力をちょっと試させてもらうわよ。」


どこか侮蔑的な視線を受けてリクは、少し肩を落としたが、リンディータはちらっと視線を寄越し、リクに笑みを浮かべた。

「テストっていうのは、ただの見せかけよ。あんたの本当の力を見せてみなさい。」


その言葉でハッとした。

彼女の強さや自信が、彼を試すような目線と一緒にじわじわと染み込んでいった。

普通の子どもだったら、たぶん怖気づいてしまっただろう。

しかし、リクは胸の奥から湧き上がる何かに促されるように、リンディータに負けじと目を見返した

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