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十一

第二防衛線の内側で、白兵戦が始まった。


関守兵の短矛部隊が、四人一組の特殊な陣形を取る。先頭の二人が盾を構え、後ろの二人が矛を突き出す。これは狭い空間での戦闘のために開発された戦術だ。短矛は長さ四尺。通常の長矛より短いが、取り回しが容易で、素早い突きが可能だ。


対する潜水部隊の動きは、独特だった。


「あの足さばき...」竹良は目を細める。「大和の武芸者か?」


彼らは二刀の技を使う。右手に直刀、左手には短い副刀。鞘は背中に固定され、水中での抵抗を減らす工夫が施されている。動きは軽快で、重装備の関守兵を翻弄する。


その時、外部からの攻撃が始まった。


はしご部隊が一斉に動く。彼らは予想以上の速度で堀を渡り始めた。はしごを横たえて即席の橋として使用。これも計画の一部だったのだ。


「竹良殿!」馬子田の声が上がる。「南の櫓から報告。大規模な部隊が接近中!」


戦場の様相が、一変する。


東山道の先から、新たな軍勢が姿を現した。その数、おそらく千を超える。先頭には、特徴的な旗印が翻っている。


「信濃の...」竹良は絶句した。


大海人皇子は、既に東国での同盟関係を構築していたのだ。それも、単なる連合以上の何かを。その証拠に、信濃兵の装備には見覚えがある工夫が施されていた。


「近江式の改良型短甲...」


信濃兵たちは、近江で開発された新型の装備を身につけていた。しかもそれは、オリジナルをさらに改良したものだ。肩部の可動域が広げられ、腕の運びが滑らかになっている。


「内通者がいたな。」


装備の設計図が流出していたとしか考えられない。しかも、それを短期間で量産できる工房が、既に東国に存在していたということだ。


「撤退の準備を。」竹良は決断を下した。「第三防衛線へ。」


しかし、その判断は遅すぎた。

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