狐の嫁入り
初めまして。ノルンと申します。
日本の妖や神様が登場します。
どうぞお楽しみください。
第一話 異国人と日本人と
俺の名前は中原仁也。フリーのライターをしている。今回は出版社からの依頼で、イギリス人に同行して東北の山間の村に来ている。
イギリス人の名前はハリー。明るい金茶の髪と淡い緑の髪の、典型的なアングロサクソン系の容姿を持つ彼の身長は高く、足も長い。俺と同じフリーライターの彼は、日本語もほぼネイティブレベルで話すことができる。東京でなら、俺の同行もいらないだろう。
だが、ここは東北。下手をすると同じ日本人でも話が通じないことがある、方言が存在する。特に年配者と話をするときは、方言を理解していなければ、話の内容も分からない。それで、東北出身の俺に白羽の矢が立ったのだ。
「ジンヤ。ずいぶん暑いね。」
「夏だからな。」
しかも今日は雲一つない晴天。日差しの強さに水筒の水もはかどる。
「それにしても、日本の空は綺麗だね。」
目を細めながら、ハリーは天を仰ぐ。
「イギリスは…こんな空を見ることができないよ。」
「そうなのか?」
「日本がうらやましいよ。だから、僕は日本語を覚えたんだ。」
そんなものか?と俺は首をかしげた。
「あ!コンビニがある!僕、アイスが食べたい。」
「また歩くならポカリも買っておこうか。あと、トイレにもよっとこう。」
「そうだね。」
そう言いながら、連れ立ってコンビニに入った。
イートインコーナーでアイスを食べながら地図を確認していると、かすかに雨音がした。陽光がかすかに陰るが、雲はない。
「晴れているのに、雨が降るんだ。」
「天気雨だな。狐の嫁入りともいう。」
俺はそういうと、アイスの殻をごみ箱に捨てて、外に出た。
作品はお楽しみいただけましたでしょうか?
不定期に続きを書いていきますので、よろしくお願いします。