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6月18日 パーヴァリ家(リュシエンヌ)

✧✧✧


 ――その夜 パーヴァリ家 


 エルネスト家の薔薇園を散歩したあと、ルドと一緒に馬車で屋敷へ戻ってきた。

 手みやげは、薔薇の香りの焼き菓子とジャム。

 それに、母が大好きなロゼット咲きの薔薇を、馬車からあふれそうなほどたくさん!。

 喜ぶ母に、「大好きな婚約者と、その美しいお母様のためです」と、ルドが甘い言葉を言うと、母は私を見て嬉しそうな顔をした。

 

 名残惜しそうに馬車へ乗り込むルドを、母と二人で見送る。

 そのあと、母と侍女頭のメアリが薔薇の花束ではしゃいでいる横を通り抜け、私は侍女のケイトと部屋へ戻った。

 ケイトが用意してくれた部屋着に着替えているあいだに、ベッドサイドには濃桃色の大輪の薔薇が飾られていた。


「ありがとう、ケイト」

「お嬢様ゆっくりおやすみくださいませ」


 ケイトはテーブルにお茶を用意すると、静かに部屋を出て行った。

 私はそのままソファに腰を下ろし、くるりと丸くなる。

 飾られたばかりの薔薇の香りが、ふわりと鼻をくすぐった。


 ああ、今日は本当に夢みたいに楽しい一日だった……。

 真っ青な空、美しい薔薇、美味しいお菓子……そして、いつも以上に優しいルド。

 二回目の人生を生きていることも、あの日ルドに契約書を書いてもらったことさえも、まるで嘘みたいに思えてしまう。


 思っていた以上に、新しい人生は目まぐるしく変わっていく。

 もし、あの日ルドに何も言い出せないままだったら……今の私はいなかったのかもしれない。

 黙っていたら、ルドはアレシアと恋に落ちていたのかな……。


 そういえば、図書館の椅子。インクがついていたって、ルドが教えてくれた。

 もちろん、私じゃない……じゃあ、誰が?


 ルドがアレシアを好きになったから、婚約を破棄されたんだと思い込んでいた。

 でも、もしかして……それ以外にも誰かが関わっていたってことなの?


 なんだか急に居心地が悪い感じになり、ソファの上で体の向きを変え、大輪の薔薇を見つめる。


 前回、アレシアに起こったことを私のせいだと責めたのは、ルドだけだった。

 あの時、誰から聞いたようなことを言ってたけど、それが誰かなんて考える余裕がなかった。

 でも今は違う。

 じゃあ、あの椅子は、誰が何のために汚したの?

 その人は、誰に罪を擦り付けるつもりだったの?

 また私に? それともただのいたずら?

 前回の人生で、ルドに嘘を教えたのは誰?

 今回の目的は何?


「どういうことなの……」


  勢いよくソファから身を起こした。


 はっきり言ってはいなかったけれど、ルドも気づいている。

 婚約破棄の理由は、ただの心変わりだけじゃない。

 でも、それを確信できないんだわ。


 前の人生では、パーティでアレシアの扇子が消えた。

 あれを隠したのは、椅子にインクをつけた人物と同じだったのかもしれない。


 でも今回は、ルドが先に椅子を片付けてくれたから、アレシアは何の被害にも遭っていない。

 そもそも誰も気づかなかったから、事件にすらなっていない。

 扇子がなくなることも、起こらないはず……。

 ううん、違う。

 ルドとの仲が順調だからって、そんな楽観的に考えてたら駄目なんだわ。


 私の知っている未来は、カトラン家のパーティまで。

 それまではルドの言うとおりにしよう。

 明日からは、図書館へ行くのも、外出だって、必要なとき以外は控えよう。

 だって、 もう未来は変わってる。

 今日みたいな素敵なデート、前の人生ではなかったんだもの……。


 パーティの翌日からは、私の知らない未来が始まる。

 すべてが終わったとしても、その先にまた何かが起こるかもしれない。


 でも……もし、そうなったとしても、私は大丈夫!

 だって私、一度死んでるんだもの!

 それより怖いことなんて何もないわ。

 

 それに、今のルドは私を信じてくれている。私もルドを信じてる。


「んーーーー」


 ソファから立ち上がりながら、大きく伸びをした。

 テーブルの上に用意されていたお茶を一口飲む。

 少し冷めた紅茶は、いつもより少し甘く感じた。



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