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6月12日 案内状3

 

 突然セレーネに名前を呼ばれ、リュシエンヌはハッとしたように顔をあげた。


 言葉が出てこないのか、何か言いたそうな口の形で固まってしまう。

 そんなリュシエンヌを、アレシアがまた無表情で見つめていた。

 リュシエンヌは、彼女に見られていることに気づいていない。


「いや、その日は行けないんだセレーネ」

「えっ、ルドウィク? まさかふたりとも?」

「そうなんだ。ずっと前から二人で約束をしているんだ」


 俺の言葉に重ねるように、リュシエンヌはセレーネに向かってこくりと頷いた。


「なーんだ残念ね、でもふたりのデートの邪魔は出来ないわ」


 セレーネは大きな瞳でリュシエンヌにウィンクをした。

 それを見て、リュシエンヌはやっと笑顔を見せた。

 これで大丈夫だ、そう思った時……囁くような、それでいて良く通る声が聞こえた。


「本当に、残念です……」


 アレシアだ。

 全員が彼女に顔を向けるが、視線はリュシエンヌに向いたままだ。


「お話ししたかったのに……本当に残念」


 悲しそうに呟くその声は、誰に話しかけているようでもない。

 リュシエンヌも答えようがなく、嫌な静けさが流れた。


 彼女には何もされていない、それはわかっている。

 それでも、胸の奥に小さな引っかかりが残ってしまう。

 

 軽く頭を下げ、アレシアの視線を遮るようにリュシエンヌの隣に戻った。

 椅子に座り、机の上で固く握られている手に軽く触れる。

 リュシエンヌは俺の顔を見ると、目を細めて微笑んだ。

 その表情に肩の力が抜け、自分も緊張していたのだと気づかされる。


 案内状は無事に彼女の手元に渡った。

 もうこれで、18日に彼女がお茶会に行こうが行くまいが関係がない。

 あとはそっちで勝手にやってくれ、そんな気分になっていた。


「突然席を立ってしまってすまない。今からこの続きを仕上げてしまうよ。アレシアさん、案内状はそのまま持ち帰ってください」

「はい、ありがとうございます」

「絶対なくさないでよーアレシアとお話ししたい人沢山いるんだからね!」

「私と?」

「こんなに美人なんだもん、当たり前でしょ」

 

 セレーネがアレシアの肩をポンポンと叩いている。

 アレシアは顔を真っ赤にしているが、二人の空気は楽しそうだ。

 セレーネは場の空気を変えるのが上手い。

 どんな振る舞いでも嫌味に感じさせないのは、彼女の人柄のせいだろう。

 アレシアも、今までに見た事がない表情で嬉しそうに笑っている。


 二人が話す声が聞こえるなか、ペンを走らせているリュシエンヌが、どことなく寂しそうに見えた。

 本当なら仲が良かったはずの三人、それを壊したのは前回の俺……。

 しかし、どうやってもわからない。

 一体何の理由で彼女のことを好きになったのか、教えてほしいくらいだ……。


 突然カールが席を立った。

 見ると、少し離れた場所でアレシアが小さく手を振っているのが見えた。

 やっと帰るのか……。

 セレーネとルルが手を振るなか、頬を赤くしたカールは、帰っていくアレシアを立ったまま見送っていた。

 時計を見ると、時刻はもう14時になろうとしていた。


 アレシアの帰宅が合図かのように、続けて、図書館利用者の半分くらいが帰ってしまった。

 いつもの館内の静けさも戻り、案内状を書き上げるのにさほど時間はかからなかった。


 6人で案内状を書き終えたのは、ちょうど15時のこと。

 その後は、枚数を確認し、配達係に渡すまでダネルに付き添った。

 馬車が出発すると、ダネルは何度も頭を下げ、教会へと戻っていった。


 カールとルルもそれぞれの業務に戻り、セレーネとリュシエンヌは約束どおりガラスペンを見に行くようだ。

 18日のお茶会は、間違いなくアレシアが参加して開催されるだろう。

 もし何かあったとしても、リュシエンヌと俺には関係がない。

  今日アレシアが案内状を持ち帰る姿は多くの人が目にしているし、18日のお茶会に俺達二人はいないのだから。


 さあ、18日は何をしようか。

 リュシエンヌの喜ぶ顔を思い浮かべながら、図書館を出て教会の裏道を進んだ。


本日の更新はここまでです。

区切りが良いので4回更新してしまいました。

明日は朝7時!


続きが気になる方は

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