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おはよう、僕のクラリス~祝福という名の呪いと共に~  作者: おもち。
本編

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退屈な人生・ライアン視点③



 うん、そうだ。シャルにはずっとずっと笑っていてほしい。

 その為に僕がしてあげられる事はひとつだけ……彼女の恋を応援し協力する事だ。

 ありがたい事に僕には後発的に発現した祝福がある。

 これを使えば確実に殿下とシャルを結ぶ事が出来る。


 (そうしたら君は、あの笑顔で笑ってくれる?)

 (また僕に殿下の話をする時のような笑顔を向けてくれるかな?)

 

 成功したらシャルは嬉しいと感じてくれるんだろうか。

 だから僕はすぐにシャルへ、ある提案を持ちかけた。

 最初は拒否するかもしれないけれど、シャルにとっても決して悪い話じゃない。

 出来るだけ彼女の中に芽生える罪の意識を少なくする為に、あくまで僕の興味を強くそそる内容だった事と実験も兼ねてなのだと念を押した。

 シャルは僕の研究のおこぼれを貰うだけなのだと言い聞かせると、最後まで渋っていた彼女もようやく承諾してくれた。

 

 シャルが僕の提案に乗ってくれた。

 じゃあこの先は僕が、僕のやるべき事をするだけ。

 シャルが幸せになる為に。もう一度、彼女の心からの笑顔を見る為に。



 ──だけど結果はこれだ。


 僕が殿下の婚約者にしてきた事が、王太子殿下や祝福管理局に露呈してしまった。

 ずっと上手くやれていた筈だったのに。

 もうすぐシャルを正式な殿下の婚約者にする事が出来たのに。


 あの騒動の後、騎士団に取り囲まれた僕達は尋問の為にそれぞれ場所を移された。

 僕は平民が入るような牢に入れられたから、恐らくシャルも似たような環境にいるのだろう。

 連日の厳しい尋問にも僕の心はひとつも動かされる事はなかった。

 全ての祝福を封印された事への怒りや絶望はない。だって僕はそれだけの事をしたのだろうから。

 

 それでも僕はシャルの笑顔が見たかった。

 色のない僕の世界に、唯一光を差し込んでくれたシャルの笑顔がどうしても見たかった。

 なにも僕だって自分自身が始め、辿り付いたこの結末を想像しなかったわけじゃない。


 「あーあ、次があればもっと上手くやるのに」

 

 例えそれが幸せな殿下と婚約者を引き裂く事になっても、僕にはやらないという選択肢はなかった。

 もし時間が巻き戻ってもきっと僕は何度でも同じ選択をするだろう。

 でももし次があるならばもっと慎重に、綿密に策を講じるだろうけど。

 今度こそシャルに笑顔になってもらう為に。


 (そうしたら、今度こそ君は喜んでくれるんだろう?)


 こんな事になっても、僕は殿下と婚約者に対して申し訳程度の感情しか沸かない。

 僕の心を占めているのはいつだってシャルの事だけ。

 ……彼女は今どうしているのだろうか。

 尋問では僕がシャルを唆し、今回の犯行に及ばせた事を何度もはっきりと伝えた。

 そもそもあの日、シャルに祝福の話をしたのは僕だ。あの時彼女にわざと選ばせるような事をしなければ、シャルは近い将来きっとその時の最善の幸せを掴んでいただろう。


 僕はこの先、どんな罰が待っていようとも甘んじて受け入れるつもりだ。

 シャルを不幸にした事、そして殿下とその婚約者にした事への贖罪をする為に。

 僕はきっとどこかが壊れているんだと思う。

 こんな状況になっても、思い出すのはシャルの笑顔だけ。

 彼女は最後まで僕を信じていてくれたのに、僕はその期待に応える事が出来なかった。


 殿下の事を話す彼女の表情は、いつだって優しくて、他人なんてどうでもいい僕ですら眩しいと感じる温かい笑顔だったのに。

 僕が失敗なんてしたから、彼女からその笑顔を永遠に奪う事となってしまった。


 

 僕には恋だとか愛だとか、そんな不確かな感情は理解出来ないし、この先二度と知る事もないだろう。

 でもどうしてだろう。あの時殿下への恋心は過去の事だと苦しそうに微笑むシャルに、僕は笑っていてほしいと思ったんだ。

 この感情が一体何を現しているのか僕にはきっと生涯分からない。

 でもシャル、僕は……君には、君にだけは、誰よりも幸せでいてほしいと思ったんだ。

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