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真実はどこにあるのか①



 自室に戻った僕は、その足で急いで机に向かい一通の手紙をしたためた。

 それは世界中で祝福を受けた人間を管理、研究している祝福管理局に当てたものだった。

 クラリスはあの子爵子息に対して好意を抱いていると言っていたけれど、僕にはどうしてもクラリスの本心だとは思えなかった。

 それにあのテラスで放った言葉こそが本心なのではないかとすら考えてしまう。

 僕には見えない、何か黒い力が働いているとしか思えなかった。だからその辺りも調査を依頼したいと思い手紙をしたためた。

 

 ただクラリスの異変の裏に誰が関わっているのか分からない為、手紙には内密に相談したい事があるとだけ書き記した。

 そして数日後、祝福管理局で係長を務めているという男が僕を訪ねて来た。


 「お初にお目にかかります、祝福管理局、研究科で係長を務めているリアム・ロバート・テイラーと申します。テオドア殿下、早速ですが本題に移ってもよろしいでしょうか?」

 「ああ、リアム殿。この度はご足労いただき感謝する。早速だが本題に移ろう」


 そして僕はリアムにクラリスの身に起きた異変を順を追って説明した。

 前日まで普段と変わらなかった婚約者が突然他の異性に好意を抱いた事。心変わりならどんな人間でも可能性はあるだろうけど、僕達の場合は普段のクラリスの行動とは真逆の行動を取るようになってしまった事、そして先日のテラスでの一件も合わせて、全てを包み隠さずリアムに話した。


 僕が話をしている間、彼は時々何かを考えるような仕草を見せていたが、特に途中で話に割って入る事はなかった。

 

 「今僕が伝えた事だけでは分かりにくいかと思うので、出来れば貴方には一度クラリスと直接顔を合わせていただきたい。ただ顔を合わせるに当たってひとつだけ気がかりなのが、彼女が僕の願いを素直に聞いてくれるとは思えない点だ。きっとリアムと顔を合わせるよう伝えたら確実に逃げてしまうだろう。そこで提案なのだが、どうか僕の侍従として学園に共に行っていただく事は可能だろうか?」

 「そうですね、ご令嬢がそのような状態なのでしたら素直に話を聞いてくれるとは思えないので、俺も殿下の意見には賛成です。ちょうど俺と殿下は年も同じですし、新しい侍従として学園に通う事は誰も不思議に思わないでしょう」

 

 リアムにも了承を貰い、僕はほっと安堵のため息を吐いた。

 知らず知らずのうちに握った拳にも力が入っていたようだった。


 「貴方自身も祝福を受けているのか?」

 「ええ、むしろ今回は俺が適任だと思いますよ。俺の祝福は“検閲”という能力で、対象者が不正を働いていた場合相手を判別する事も出来るし、対象者にかけられた祝福の内容とその術者を見分ける事も出来るんです」

 「それは凄いな」


 “検閲”の祝福は大変希少だと聞く。そんな彼が協力してくれると言ってくれた事が、僕にはとても心強かった。

 もしクラリスに何かしらの祝福が使われているのだとしたら、彼の祝福で明らかにする事が出来るかもしれない。僕にとってリアムは一筋の光のように感じた。


 すぐに準備を整え学園リアムを伴って行動するようになった。

 だが依然クラリスには煙のように巻かれてしまい会う事はあろか姿を見る事も授業の間だけとなってしまっていた。


 「なかなか婚約者に会えませんね。これでは判断の仕様がない」

 「すまない。クラリスは僕と会話をする事を酷く嫌がるからいつも逃げられてしまうんだ」


 僕の言葉にしばらく考える素振りを見せていたリアムは、おもむろに口を開いた。


 「話す事が無理なのであれば、十秒間視線を合わす機会を得る事は出来ますか?俺の祝福は対象者と視線を合わせる事でより効果を発揮するんです。だから少しの時間でも視線が合えば、大まかにはなりますが調べる事が出来ます」

 「視線を合わす、か……。リアムの提示する十秒間は難しいかもしれないが、彼女の座席付近に席を移してもらえるかどうか内密に教員に頼んでみよう。授業が終わったタイミングで僕がクラリスに話かけるから、リアムはそこで目線が合わさる機会を伺ってほしい」

 「わかりました。では早速、やってみましょう」


 こうして僕は内密に教員に頼み込み一度だけと約束の元、クラリスの座席と近い場所へと移動させてもらえる事になった。

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