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国王視点



 謁見の間を足早に出ていく息子を見つめながら私は重いため息を吐いた。

 何も息子とその婚約者が憎いわけではない。エイブリー嬢の急な変化は早い段階で私の耳にも届いていた。しかし最初は何か質の悪い冗談かと思ったし、あの娘に限ってそれはないだろうとも思っていたのだ。

 しかし日々影からの報告を聞いていくうちに本当に心変わりをしてしまったのかと心底驚いた。


 あの相思相愛の二人に限ってあり得ないという思いと、影から報告を受けるエイブリー嬢の姿にどちらを信じていいのか私でさえも分からなくなった。

 近くに控えていたこの国の宰相でもあり、エイブリー嬢の父親でもあるハミルトン公爵は気遣わしげに私に声を掛けた。


 「陛下、この度は私の娘の愚かな行動で、陛下や殿下に多大なるご迷惑をおかしております」

 「そうだな。しかし公爵の方もなかなか手こずっているようだな」

 「お恥ずかしいながら。何度屋敷に戻ってくるように手紙を出しても一度も応じない次第でして。あと数か月足らずで婚姻の為、最近は妃教育もありませんし、王城に出向く用事もない為、私達でも注意する事すら叶いません」

 「そうだな。苦しいが()()()()()()()()()()()()


 今日何度目かの深いため息を吐くと懐にしまっておいた一枚の封筒を宰相へと差し出した。


 「すまないが、これをとある人物に急ぎで送ってほしい」

 「……厳しい態度を取られていたので、てっきり協力はなされないのかと」

 「表立ってはこれからもしないだろうな。あまりひとつに意識を集中しすぎると新たな問題を生む」

 「そうですね」

 「テオドア、あの子が道を切り開いてくれたらいいのだが」

 

 悔しいが私にしてやれる事は少ない。

 だが、あの二人に幸せになってほしいという想いもまた変わらない事実。

 その後しばらく、私は息子が去った方向を見つめていた。

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