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様々な世界・世界の詩

陽だまりの世界

作者: リィズ・ブランディシュカ



 その世界は、地獄のような世界だった。


 誰もが誰かを恨み、蹴落とす。


 そんな世界だった。


 その世界の人達は、這いつくばっている者にに、手を差し出す事はしない。


 差し出した腕を掴まれて、同じ地獄に引きずり降ろされるだけだから。


 むしろ、その頭を踏みつけ、指さし笑い、追い打ちをかける者ばかり。


 だから、その世界に住む私達は、皆他人だった。


 知人も友人も、家族ですら。


 互いが互いを貶めあう。


 けれど、そんな世界に嫌気がさしたから、私は逃げ出したのだ。


 誰かを傷つけなくてもいい世界へ、誰かに傷つけられなくてもいい世界へ。







 たどり着いた世界はあたたかかった。


 誰もが誰かを助け、気に掛ける。


 涙をぬぐって、手をさしのべる。


 そこは、陽だまりのような、あたたかな世界だった。


 私はその世界をすぐに気に入った。


 ずっと、そこにいたいと思った。


 しかし、追手がやってきた。


「さあ、帰るぞ。ここはお前なんかがいるべき場所ではないんだ」


 自分だけ幸せになるなんて許さないと言う人達がやってきた。


 嫉妬と支配心にまみれた者達が。


 私は無理やり、連れ戻されそうになった。


 そのため、必死で抵抗していた。


 もっとその世界にいたいから。


 ずっとその世界にいたいから。


 すると、その世界の人達がやってきて私を助けてくれた。


 私は安心したけれど、迷惑をかけたことが気にかかっていた。


 私がいる事で、優しい彼等に迷惑がかかってしまうかもしれない。


 そうなってしまうのは、とても心苦しい事だった。


 だから私は、元の世界に戻る事にしたのだ。


 私は最後の日に感謝の手紙を書いて、その世界から去っていった。


「さあ、帰ろう。ここは私のいるべき場所じゃないんだから」







 帰った世界は相変わらず地獄のようだった。


 誰かが誰かを傷つけていて、私も傷だらけだった。


 しかし、私は誰かを傷つける事はできなかった。


 以前は少しだけできていたそれができなくなっていた。


 もうあの陽だまりの世界の住人に会う事ないはずなのに、合わせる顔がないと思ってしまうからだ。


 だから、私はその日も、誰かに傷つけられて生きていた。


 けれど、冷たくなった傷だらけの手を、誰かの温かい手が包んでくれたのだった。


「さあ、帰ろう。ここは貴方の帰る場所なんかじゃ、もうないでしょう?」



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