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93 ダル 追憶11

 



「俺達のパーティーを結成しよう」


「「パーティー?」」


「ああ。パーティーを結成して、ダンジョンを攻略しまくって、ランクを上げて一気に名を上げるんだ」


 クレーヌを仲間に加えてからも、俺達は旅を続けて多くの経験を得た。

 そして近くに迷宮が数か所ある地方都市クラリスに辿り着いた所で、三人にそう告げる。


 これまでの旅で、俺達は確実に成長した。

 機は熟したと言っていいだろう。この四人でパーティーを結成してゴールドランク……いや、最高峰のプラチナランクまで一気に駆け上がってやる。


「ついに時が来たということか……いいだろう」


「パーティーかぁ、なんかワクワクしてきたね!」


「名前は考えてあるのかい?」


 クレーヌの質問に、俺は「勿論」と頷いて、


「“ワールドワン”。世界一の冒険者パーティーに相応しい名前だろ?」


「ふっ、センスが無いダルにしてはまともな名前だな」


「カッコイイじゃん! ワールドワン賛成!」


「それじゃあ、ワールドワンの結成を祝って今日は乾杯でもするかい?」


「ああ、俺達が世界一の冒険者になるという偉業の始まりだ! 今日は飲んで飲んで飲みまくるぞ!」


 こうして、俺達はワールドワンを結成した。

 その夜は酒を飲みまくって、これまでの旅を振り返ったりそれぞれの生い立ちを話していく。


 俺も気分が良くて、口が回って自分の過去を洗いざらいぶっちゃけちまった。

 それを聞いた三人は同情していたが、「これからだ」と励ましてきてちょっと嬉しかったんだよな。


 誰にも話してこなかった過去を初めて話したことで憂いが消えたのか、心の中のシコリが取れた気がしたんだ。


「何だあいつら、ヤバすぎるだろ」


「ワールドワンとか舐めた名前を付けやがったなって最初は馬鹿にしてたけどよ、マジでやりそうじゃねぇか?」


「四人ともレベルが高ぇよ。こんな地方の冒険者で留まる奴等じゃねぇだろ。ナニモンなんだ?」


 ワールドワンの快進撃は凄まじいものだった。

 初級の迷宮を一日で踏破し、中級の迷宮も数日足らずで踏破してしまう。それだけでなく、上級の迷宮さえも短期間で踏破してしまった。


 全員の個人ランクとパーティーランクが銀級シルバーに昇格し、瞬く間にワールドワンの名前が広がっていく。


 最初は冒険者共に大それた名前だと笑われて馬鹿にされまくったが、俺達が次々と迷宮を攻略していく成果を目にして驚いていた。


 そして大いに期待された。こいつ等なら、本当に頂点てっぺんを獲れるんじゃねぇかってな。


 クラリスでやる事が無くなった俺達は、さらなる飛躍を求めて王都バロンタークへ向かうことにした。

 そして旅立つ前日、俺とアイシアは都市から少し離れた草原地帯にある丘を訪れていた。


「ん~、広々として気持ち良いね! それに綺麗な花も沢山あって最高。この場所、凄く気に入っちゃった。ダルもそう思わない?」


「そうだな」


 丘の周りには、美しい花畑が広がっている。

 澄んだ泉と綺麗な景観の場所で暮らしていたアイシアは、こういった暖かい場所が好きだった。そして鼻歌を口ずさみながら、花の冠を作って俺に渡してくるんだよ。今のようにな。


「うんうん、似合うね~。可愛いよダル」


「可愛いって言われても、男としちゃあんまし嬉しくねーな」


 せっせと作った花の冠を俺の頭の上に乗せてきながら微笑むアイシアに、ため息を吐きながら唇を尖らせる。


「ねぇダル」


「なんだよ」


「好きよ」


「は?」


 突然告白されて驚いちまった。

 だってよ、ムードとかそういうのは一切なくてさらっと言ってくるとは思わねぇだろ? 呆然としている俺に、アイシアは優しい笑みを浮かべながら囁くようにこう言ってくる。


「私ね、ダルの事が好き。明るくて、お調子者で、仏頂面なところや、私が我儘を言っても最後には仕方ねーなって聞いてくれる優しいところも、大きな夢を叶えようと輝いているところも、全部好き。大好きなんだ」


「お前……」


「ダルは? 私の事好き?」


 そう問いかけてくるアイシア。

 俺はこれまで旅をしてきた中で、色んな一面のアイシアを思い出しながら答える。


「俺もアイシアが好きだ。人や動物に優しく、いつも華やかな雰囲気を作ってくれて、我儘を言って困らせてくるところも、俺の夢を誰よりも応援してくれるところも、笑顔が可愛いのも、全部好きだ。お前を愛してる」


 心からの想いを伝えると、アイシアは「ふふ」っと可笑しそうに笑って、


「知ってるよ」


「んだよそれ――っ!?」



 ――突然唇を奪われた。



 彼女の唇は死ぬほど柔らかくて驚いちまった。

 そっと唇を話して「へへ」としてやったり顔のアイシアに悔しくなって、今度は俺からアイシアの唇を奪う。


 何度も何度も何度も気の済むまで口付けを交わして、最後に見つめ合い、



「「愛してる」」



 そしてその日の夜、俺達は愛し合ったんだ。



 ◇◆◇



「流石に王都のダンジョンはレベルが違ぇな」


「そうだな。一度休憩を挟んで、次こそ踏破しよう。それで俺達もゴールドランクだ」


「ああ、こんな所で止まってられねぇ。もっと駆け上がってやろうぜ」


 王都に辿り着いた俺達は、力試しに中級迷宮を踏破してから上級迷宮に挑んでいた。だが王都のレベルはクラリスと比べて高く、順調とはいかねぇ。


 だが、次の攻略アタックで踏破できると確信していた。もし踏破できれば、評価的に俺達もワールドワンもゴールドランクに昇格する見通しだった。


「よっしゃ、景気づけに皆で飲みに行くか!」


「悪いが俺は用事がある。三人でやっておいてくれ」


 折角士気を高めようと誘ったのに、イザークは一人でどっかに行っちまった。

 何だよつれね~な。なんか最近、イザークの奴一人でいる事が多いんだよな。なんか悩みでもあんのか?


「それじゃあワタシも一人でも観光しようかね。行ってみたい魔道具屋もあったし」


「お前もかよ……協調性の無ぇ奴等だな~」


 そう言って離れていく薄情な仲間達にため息を吐いていると、アイシアが提案してきた。


「じゃあ私達もデートに行こっか!」


「そうだな。そうすっか」


 それから俺はアイシアを連れ、王都の街並みを二人で歩き回り、楽しくも幸せな時間を過ごしたのだった。



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