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64 ダル 追憶1

お待たせしました。新章です。

新章はダルの過去や、ダルの話をメインに書いていきます。

 


 俺は普段、自分の過去については語らない。


 過ぎたことは変えられないし、話したところで面白くもなく生産性もないからだ。


 それだったら、今を楽しんだ方がマシってもんだろう。


 綺麗な姉ちゃんをナンパしたり、偶々(たまたま)会った同業者と酒を酌み交わしながら愚痴を言い合ったり、くだらない話をして盛り上がったりとかな。


 過去は過去。それ以上でもそれ以下でもない。


 だだまぁ、その日の夢に出てきたり、ふと懐かしい奴に出会ったりすると、感傷に浸る時もある。


 あ~あんな事もあったな~ってな。


 そんな感じで、俺の過去について少しだけ語ろうか。



 ◇◆◇



「ンギャ~~! ンギャ~~!」


 俺は捨て子だった。

 だから生まれてこの方、両親の面を拝んだことがない。


 父親がどんな人なのかも、母親がどんな人なのかも未だに分からねぇ。


 どうして俺を産んで、すぐに捨てたのか。

 捨てたかったのか。捨てなければいけなかったのか。

 その理由すら分かっちゃいなかった。


 別に興味も無ぇけどな。

 このご時世、捨て子なんて掃いて捨てるほどいる。俺が特別可哀想って訳じゃねぇ。


 捨て子でなくとも、少し大きくなった長男以外の子供を売って金にする親なんてザラにいるしな。


 俺を捨てた理由とか、親がどんな奴だなんて事は興味ねぇし、知ろうとも思わなかった。

 生きていくので精一杯で、そんな事を知る余裕がなかったってのもあるが。


 まぁどうせ、ろくでもねー親で、ろくでもねー理由なんだろう。


 問題なのは、俺が捨てられた場所が深い森の中だってことだ。


 それも、沢山のモンスターが蔓延る森のど真ん中。


 流石に意味が分からなくて笑っちまうだろ。

 どうやって赤子を抱えて、モンスターが跋扈する森の奥深くまで来れたんだよ。


 っていうか、そんな所に生まれたばかりの赤子を捨てようもんならどう考えても殺す気満々だったって感じだよな。


 さて、森のど真ん中で捨てられた赤子()はどうなったでしょう?


 考えられるとしたら、そのまま放置され餓死したり、森にいるモンスターに丸飲みに喰われておっちんじまったパターン。


 ところがどっこい、俺はモンスターに喰われるどころか“拾われたんだ”。


「んぎゃ~んぎゃ~」


「ゲゲウ……ギゥゲゲ」


 白い毛布に包まれ、揺り籠の中に居て悲鳴を上げる赤子に近付いたのは、一匹の年老いたゴブリンだった。


 ゴブリンは俺を喰い殺すどころか、あろうことか揺り籠ごと拾ってゴブリンの縄張りまで持って帰っちまったんだよ。


 縄張りに居た仲間のゴブリン達は、そら~ビックリしただろうぜ。


 なんせ人間の赤子を持ってきたんだからな。


 その上何をトチ狂ったのか、人間の赤子を育てようとしたんだ。訳わからねぇだろ?


 それもさ、俺を拾った老いたゴブリンだけじゃなくて、他のゴブリンも人間の赤子である俺を受け入れてくれて、一緒になって育てようとするんだ。


 どういうこっちゃって話だろ。モンスターならモンスターらしく食っちまえばいいのによ。


 もしかしたら、凶暴であるこいつらモンスターにも保護欲ってもんがあったのかもしれねぇな。


 俺は学者じゃねーから、その辺はよく分からねぇがな。モンスターの生態系を研究している奴等なら、ゴブリンが取った不可解な行動も分かったかもしれねぇ。


「だ〜う~」


「ゲゲ、グゲゲ」


 老いたゴブリンに育てられた俺は、すくすく育った。


 人間の赤子をどうやって死なせずに育てたのか、流石に赤子の頃の記憶は覚えてねぇから分からねぇ。


 マジでどうやって育てんだろうな。肉は疎か、赤子は食える物が限られているってのによ。


 可能性があるとしたら、乳が出るモンスターの乳を飲ませたか、それに値する栄養物を与えたか。その辺りだろう。


 どちらにしても、それで育った赤子の俺はスゲーな。どんだけ丈夫なんだよって話だ。


「ダル、ダル」


「ゲゲ、ダル!」


「だ~う~」


 ゴブリンに拾われて一年ぐらい経った頃だろうか。


 いつしか俺は、ゴブリン達からダルと呼ばれるようになった。


 これも碌に覚えちゃいねぇんだが、儀式のような事をした時に名前を授けられたんだ。


 真夜中の真っ暗闇。

 松明を焚いてやんわり明るい中、石で作られた不格好な祭壇の上に座らせられた。


 裸の俺は、モンスターの血で全身に紋様みたいなのを描かれている。


 キョトンとしている俺の周囲にはゴブリンが踊っていて、老いたゴブリンが祭具のような棒を振っていた。


「ゲゲ、ゲググ、ダル」


「だ~う?」


 その怪し気な儀式によって、俺はダルと名付けられた。


 俺の名付け親は、ゴブリンだったんだ。


モンチ02です。

いつも【追放する側の物語】をお読みいただき、誠にありがとうございます!


書籍化、コミカライズ化についての情報をお伝えさせていただきます!


書籍の方は、Kラノベブックス(講談社)様にて、11月2日に発売されます!

タイトルは

『追放する側の物語  仲間を追放したらパーティーが弱体化したけど、世界一を目指します。』と若干名前が変わっております。(こっちも変えたほうがいいのかな…)


コミカライズの方は、マガジンポケット様から、10月27日に新連載配信スタートとなります!


こんな風に書籍化とコミカライズ化されるのも、この作品をみなさまが読んでいただき、沢山評価していただいたことや、熱く応援していただいたからこそだと思っております!


本当にありがとうございます!


イラストや詳しい事は、マイページの活動報告でお伝えしますので、そちらを見ていただければと思います。


みなさまの応援を励みにこれからも頑張っていきますので、どうぞ【追放する側の物語】をよろしくお願いいたします。


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― 新着の感想 ―
[一言] 本当にどうでもいいことだけど タイトルの前につく括弧が長すぎて更新が来ても書籍化くらいし見えません
[一言] おめでとうございます
[良い点] 新章待ってました。 続きも楽しみにしています。
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