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第363話 まずは一本

土日出張や平日残業が重なり11月は投稿できていませんでした。すいません。エタったわけではないです。

 冷たい外気を遠ざけるために様々な開閉式の金属扉が何段階にも続いている。十メートル単位で区切られた長い廊下を進む二人の男の姿があった。


 そのうちの一人は両手に一メートル弱の袋を抱えていた。暗く冷たい印象を与えるそのネズミ色の塩化ビニル袋にはナイロン製の透明な小窓がついており、さらには名前や死亡時刻を書き留めておくための記入欄も貼付されている。つまり、この袋の本来の用途は遺体を保管することにある。


 遺体袋はずっしりと彼の両手にのし掛かっていた。透明の小窓からは目を閉じた白銀の髪の少女が顔を覗かせている。遺体袋を使っていると言っても、少女にはまだ息がある。心拍のリズムに合わせて呼気がナイロンの小窓を内側からうっすらと曇らせているのだ。


 彼らはネバードーン財団に雇われた使用人である。能力者でもなければ訓練を積んだ戦闘員でもなく、取り立てて何かに秀でているわけではない。

 精々他人よりもフレンチを作るのが上手だとか、ベッドメイキングが速く丁寧であるとか、その程度なのだ。


 ではどうして彼らが遺体袋に詰められた少女を運んでいるのか。

 二人の男は沈痛な面持ちだ。雇い主であるブラッケスト・ネバードーンに『処分せよ』と言われたならば従わなければならない。

 そして彼らにその役割が与えられたということは、この少女はもはや人間ではなく、これはゴミ捨てと同等の業務であると言外に告げられているに等しい。


 センサーで自動応答する扉を何層も抜けて廊下を歩くこと十五分。ようやく最後の扉に辿り着いた。

 扉に描かれた黄色と黒のストライプラインはここから先が危険であることを伝えている。一歩外に出ればそこは極寒の人類永久居住不可能地域アネクメーネである。


 最後の扉のそばに立てかけてある大型のソリに手をかけたときだった。

 廊下の暗がりから少年がぬっと姿を現す。



「使用人の方々ですよね。ちょっとお時間、いいですか?」


「その紫色の髪、紫色の瞳……お前、いいや、貴方は……」


「ブラッケスト・ネバードーンの大勢の子の中でも特に秀でた才を持つ数名が選抜された【色付きの子供たち(カラーチルドレン)】、その中でも序列三位につい先日なられたウィスタリア様が、私たちに何か御用で?」



 つい先日、序列が三位になった。それが意味するところは今こうして遺体袋の中にいるのが元々の序列一位であるということである。


 当初序列一位の席を与えられたアルカンシエル・ネバードーンはその後ブラッケストの期待に応えられず処分されることとなり、繰り上がる形でクリムゾンが第一位、シアンが第二位、そして第三位にウィスタリア、第四位にカナリアと続く。


 ウィスタリアはほんの一瞬だけ、真顔で遺体袋を見つめた。それからすぐに笑顔に変わると、二人の使用人に対し軽快に話しかけた。



「いやぁラッキーでした。序列が上の人間が勝手に一人脱落してくれたんですから! これから処分に行くんですよね? そんなお二人に僕からのちょっとしたプレゼントです! ちょっと背中を向けてくれますか?」



 言われた通りに背を向ける二人。何をするのだろう、とは思いつつも雇い主の息子に逆らう気はない。それに相手は子どもとはいえ三等級の能力者なので自分たちが逆らっても勝ち目はない。


 ウィスタリアは紫色の両眼を淡く光らせる。そして右手で撫でるように()()()()()()()


 それから二人の背後に近寄ると、右手で二人の肩を順にポンと叩いていく。



進化・上位互換(エボリューション)。ただの防寒着を、あらゆる極限環境下にも耐え得る防護服に」



 二人の使用人が身に着けていたフードとファーのついたダウンジャケットが青く発光する。そしてフードは透明な球体に変化して顔を覆い、ジャケットは生地が薄くなったのに先ほどよりも温かい。

 ぴったりとした質感の服と透明なヘルメットが相まって二人の見た目はさながら宇宙飛行士のようだった。



「どうです? 温かいでしょう。宇宙服の技術を応用して製作された断熱エアロゲル素材の防寒着です。外は生物が住めないほどの極寒ですから。お二人の無事を僕は心から祈っています」



 使用人たちは自分の服をぺたぺた触りながらその保温性に感嘆の声をもらす。幼い少女を処分する仕事は決して気分の良いものではないが、こうして少年から親切にされるとつい笑みがこぼれてしまう。

 ウィスタリアに一言ずつ礼を告げると、二人の使用人はソリにアルカンシエルを積んで外へと出て行った。


 外に放置するのか。或いは氷山から転がり落とすか、氷河に流すのか……。いずれにしろ通常の生物ならばものの数分で息の根を止めることは間違いない。

 宇宙服に応用されるほどの特殊な素材を身に纏っていなければ、の話だが。



「……俺ができるのはここまでだ。ここから先は、お前自身でなんとかしてくれ」



 幼き日のウィスタリアは使用人たちの背中を見送りながら思索に耽る。


 自分がブラッケストを当主の座から引きずり降ろした暁には、こんな悲しい目にあう人が少しでもいない世界を作ろう、と。

 能力者の一族に生まれたからって無能力者が虐げられていい理由にはならない。能力者の一族に生まれたからって兄弟姉妹が憎み合う必要はない。


 敵など本質的には存在しないのだ。誰かの行動が誰かを利することもあれば害することもある。ただ現象の積み重ねがそこにはある。

 であればこそ、あらゆる(しがらみ)や束縛から解放されて自由に生きるべきなのだ。能力者も非能力者も関係ない。個々人が独立した個としてただ個性的にあればよい。


 後にマダガスカルという小国において小さいながらもその願いを叶えることになる紫髪の少年の根幹を形成したターニングポイントのひとつである。



〇△〇△〇



「おい聖皇! いくらなんでも無茶だ。カナリアの身体を使っているあの白いバケモノは俺やカペラでもまったく歯が立たなかったんだぞ? いくらアルカンシエルが強いといっても二等級一人じゃ相手にならない!」



 憤るウィスタリアが紫色の髪を振り乱しながら聖皇に食って掛かる。上体をカペラに支えてもらいながら起き上がり厳しく睨みつけた。

 ウィスタリアは眉間に皺を寄せながらさらに続けた。



「たしかに俺の両手足を治したお前の能力ならアルカンシエルに何かあっても助けられるのかもしれない。だが肉体の痛みや心に刻まれた恐怖までなかったことにはできないだろう」



 ウィスタリアの主張も尤もだ、と感じたのはこの場ではカペラだけだった。

 聖皇はウィスタリアの言い分に理を感じない。客観的に見てスピカならば半々の確率で勝てる。

 それを聖皇は分が悪い賭けだとは思わないし、何より一等級のナツキとともに戦いたいというスピカの願いを叶える近道だと判断したまでのことだ。


 整然と言い返そうとした聖皇。彼女が口を開きかけたところを、スピカが手で遮った。



「ウィスタリア兄さん。お気遣いは感謝するわ。妹想いなところは昔からよね。あの頃は小さくて覚えていなかったけど、今ならわかるわ。私は序列で一番上だったのに最後まで能力に覚醒できなくて、あの人から見捨てられ廃棄された。生物が棲息することすらできない極寒の孤島で私は海に棄てられたの」



 スピカはずっと昔の記憶の糸をたぐりながら、目を細めて懐かしむように滔々と言葉を紡ぐ。

 ウィスタリアはばつが悪そうに視線を逸らした。



「……そんなこともあったかもしれないな」


「でも私は今もこうして生きている。なぜなら、私に特殊な防寒服を着せた人がいるから。それも宇宙服の技術を応用したとびっきりオーバーテクノロジーなものをね」


「それは随分と親切な人に会ったんだな。だがそいつは別にお前だけじゃなくて、お前を棄てに行った手下の使用人にも同じ防寒服をプレゼントしてやったかもしれない。そうだろう?」


「そうかもしれないわね。だから? 他人のことは関係ないわ。今は私の話をしているの」


「……その場でお前を助けるヒーローのような選択もあったはずだ。だがそいつはブラッケストや他のネバードーンたちを敵に回すほどの度胸も力もなくて、ビビっていただけかもしれない」


「そうね。だけどその小さな行動すら移せない人が世界には大勢いる。私はその勇敢な一歩を尊いと感じるわ。誰かのためなら誰にもできないことすらも為せるその心を、私はどんな宝石よりも美しいと思うの」


「だが……」


「いい加減に意地を張るのはやめてほしいわね。ウィスタリア兄さん。私はあのときの借りを返したいだけよ。私は一度あなたに命を救われている。だったら、あなたを傷つけたアイツを殴る権利が私にはある」



 ウィスタリアは呆気に取られ口をあんぐりと開けてしまう。なんと無茶苦茶な、とつい苦笑してしまった。あの兄弟姉妹の中で最も気弱でオドオドしていた妹が、こんなにも強情に育つとは。

 スピカの青い瞳とウィスタリアの紫色の瞳が交差する。異母兄妹であるがゆえに整った顔立ちには似た面影がある。


 観念したウィスタリアは深く溜息をつき、そしてもう一度スピカを見返した。



「アルカンシエル。俺の代わりにアイツをぶっ倒してきてくれるか?」


「ええ。任せなさい」



 スピカは拳を差し出す。後は任せたぞ、と応じるようにウィスタリアもトンと拳を当てた。



「聖、作戦会議は終わりまして?」


「ええい、その口調は気色悪いからやめんか。別に作戦会議というほどでもない。おぬしの相手は妾の一番弟子が務めよう。それだけのことじゃ」



 メセキエザはムッとするでもなく、それどころかあのシリウスたちの孫娘でなおかつセレスの大姪にあたるスピカに一定の興味を示している。


 メセキエザの視線を受けるスピカもまた意識を戦闘モードへと切り替える。目鼻立ちのくっきりした美しい顔に似合わぬ鋭い目つきでメセキエザを捕捉し、その一挙手一投足やわずかな能力発動の兆候も見逃すまいとしている。



(人間のような姿をしているけれど……。人型なだけで到底人間とは思えないわね。手から出す白いビーム光線。それから明らかに常人離れした身体能力と、複数確認できる能力。あらゆる可能性を想定しないとこちらが一方的に(なぶ)られるわ)



 思考の海に沈むスピカの青い両眼が淡く光る。



(実力差があるなら無策に飛び込むのは不利でしかないわ。でも相手の手数がわからない以上、受けに回ってしまう方がはるかにリスキー。同じ不利ならマシな方を選ぶだけよ!)



 後手に回って取返しがつかなくなるよりも先制攻撃によって自分のリズムを作りたい。それがスピカの下した判断だった。

 こと戦闘に関してスピカは十七、八の少女とは思えないほど肝が据わっている。流体を操る能力を駆使して大気を操り爆発的な加速。一気にメセキエザとの距離を詰める。


 直後、先ほどまでスピカの立っていた場所に巨大なクレーターが生じた。瓦礫が飛び散りウィスタリアやカペラは腕で顔を覆う。

 ご挨拶とばかりにメセキエザは重力を操る能力を発動したのだ。もしスピカがあと一秒判断を遅らせていたら、或いはそもそも様子を窺って受け身に回っていたら。メセキエザの初手によって即死していただろう。



「早速冷や汗かかせてくれるじゃない!」



 地面を低い姿勢で滑空したスピカは白鳥のように高く舞い上がり、空気中の水分を掌握していく。

 水が蠢き雪の結晶のごとき菱形のフラクタルを描く。青色で半透明の水のシールドが各辺を接し合いながらスピカの背中で巨大な翼となっていく。



「からの、一斉掃射!」



 スピカが言い放つと翼の羽根──水の薄刃が五月雨となってメセキエザに降り注ぐ。

 地球上に水分が存在する以上、空気中からは半永久的に水が供給される。水の連撃を撃ち放つスピカの翼は一撃ごとに水分を補充していた。一発あたりに一秒すらもかけない。圧倒的な質量に物を言わせる弾幕がメセキエザから逃げ場を奪う。



「なるほど! 聖が誇るだけのことはある! ですわ!」



 しかし、どれだけ鋭くどれだけ速かろうと所詮はただの水。人外たるメセキエザは余裕綽々とばかりに腕をブンと振って襲い来る水の刃を払いのけた。

 水の薄い刃はいとも容易く砕け散りただの細かい水滴に戻ってしまう。


 そのときだった。翼が生え天使を思わせる姿となったスピカは悪魔の微笑みを浮かべる。そして片手を突き出し手を閉じて拳をギュッと握った。

 すると数多の水滴はメセキエザの腕に纏わりついたままスライムのように彼女の腕をネバネバと這っていく。刃の形をしていた他の水分も一斉に形を崩し、それらはメセキエザを手早く包み込んでいく。



「あなた、生物としてのスペックが私たちと違い過ぎてるのよ。それに能力も複数使えるみたいだし……。残酷だけど、最速で片づけるわ」



 メセキエザを閉じ込める半径二メートルほどの青い水の球。その中で膨大な量の水がメセキエザの──というより元はカナリアの──目や鼻、口、その他全ての穴という穴から侵入を試みていた。


 たしかにメセキエザの能力は強力だ。再生力や身体能力はバケモノじみている。だが、体内なら? 脳味噌ならば当然多量の水分を含んでいるし、そうでなくとも体内に水分を送り込んで内側で爆発させたら、即死させることができる。


 これまで星詠機関(アステリズム)として相手を殺さない戦い方をしてきたスピカ。だが地球外の生命体に対して枷が解かれたスピカは想像を絶するほど冷酷にメセキエザを殺害しにいっているのだ。


 ブクブク、と水球の中でメセキエザの口から気泡が漏れる。光が屈折する水面越しにスピカが見たのはメセキエザの不気味なほど楽し気な笑みだった。


 スピカがまばたきを一度した直後。水球の中からメセキエザの姿が消えていた。それを認識すると同時、スピカが顔面から地面に叩きつけられる。

 


「ぐぁはっ……」



 背中から強烈な衝撃に襲われたスピカは鞠のようにバウンドする。跳ねたタイミングでメセキエザはサッカーボールキックを見舞い、スピカは身体をくの字に曲げて地面を転がった。



(いきなり背後に現れた……テレポートか何かを使われたわね)



 すぐさま立ち上がったスピカは擦り傷だらけの顔から血を拭うとメセキエザの行動分析にかかる。手数で劣る自分にできるのは考えるのをやめないことだ。

 能力者同士の戦いでは常に相手と自分の手札を理解し、相性、油断や警戒、武器に格闘に絡め手に……と使えるものは全て使わなければならない。


 一方のメセキエザはわざとらしく拍手をしながら悠然と歩いていた。



「咄嗟に水の翼を閉じることで防御して可能な限り衝撃を殺し、その上で空気の流れを操って運動エネルギーを分散させながら体勢を立て直す……大したものね! ですわ!」



 メセキエザの無色の瞳が淡く光る。白目と黒目が混ざり合ったような不気味な双眸に見つめられたスピカは歯ぎしりしながらすぐにその場を離れた。


 再び重力操作によってスピカの立っていた場所にクレーターができる。

 スピカは流体を操る能力で空気抵抗を減らし、さらに足裏に水分を纏わせて表面張力によって摩擦をなくし、氷上を滑るスピードスケーターのような動きで大地を疾駆した。


 ドンッ! ドンッ! ドンッ! 

 と重力によるクレーターが絶えず大量に作られ続け、スピカは的を絞らせないためにランダムに地面を滑り続ける。

 その間もスピカはメセキエザとの間合いを測り、同時に脳内でこの後の戦略を無数に選び取りながら思考していた。



(ここまでの様子から考えて、アイツは能力の同時使用はできない。重力操作とテレポート。どっちかを使っている最中はもう片方が発動されないってことよね)



 スピカの青い両眼が淡く光る。手を突き上げて空気中の水分を集め、薄く円盤状に広げるとブンと放り投げた。



「さあ、正々堂々受けてみなさい! このバケモノ! ()()()()()()()()()()()()()()を ()()()!」



 スピカの力強い声が空間を震わせる。力任せに放たれた水の円盤は薄く鋭く回転しながらメセキエザへと迫る。


 さっきは大した攻撃ではないからとスピカの水攻撃を乱雑に撃ち落として対処したメセキエザ。だがその後は水に包まれて危うく肉体の方が即死する可能性すらあった。



(まあ肉体を乗っ取っているだけだから本当の意味での『死』は回避できるけど……わざわざ相手の攻撃を受ける道理はない! ですわ。それに、何より)



 ──お前ごときが聖より強いなど、笑わせる。


 初めて地球に訪れたときに自分に挑んだ聖とセレスの方がよっぽど骨があり、彼我の実力差を乗り越えようとする無謀な勇気があった。

 だというのにスピカは無策にも水で遠距離攻撃を仕掛けてきた。形こそ違えど最初の一撃と変化などない。あまりに退屈で、凡庸で、蛮勇ですらない憐れな虫けら。


 せっかくの聖のイチオシで、セレスの大姪だったけれど。所詮はこの程度か。


 呆れたメセキエザはテレポートを発動しスピカの真正面へと移動する。期待を裏切ったばかりか聖より強いなどと(のたま)う地球人を真っ向から打ち破り叩き潰す。

 そうして深く振りかぶり人外の膂力によって音速をも超えて放たれる右ストレート。


 スピカは臆することなく、メセキエザの拳を目で追っていた。恐怖で目を閉じることはせず、ただ確信するように呟く。



「そうよね。あなた、宇宙人の割に感情は人間じみているもの。あんな煽り方されたら、真正面から来てくれるわよね」



 メセキエザの右腕が切り離されて宙を舞う。


 斬り裂いたのは、Uターンして戻ってきた水の円盤だ。強烈な回転をかけていたのは殺傷力を高めるためだけでなく手元に戻るブーメランの役割を果たさせるためでもあった。


 何より、今のスピカは聖皇との訓練で苦手を克服し空気も操ることができる。水の円盤が最短最速で帰ってくるようにすることも容易い。

 すべてはメセキエザがテレポートで自分に近接攻撃を、それも正面から仕掛けてくるという読みに基づく。そのための煽り。そのための初手と同じ攻撃。そのための無知無策のふり。


 あえてメセキエザに正面から叩き潰すと思われるような振舞をすることで、帰ってくる水円盤が斬り飛ばしやすい最善の位置にメセキエザを誘導したのだ。



「まずは腕一本。うちの兄の借り、半分は返させてもらったわ」



 残り半分もいただく。


 スピカは本来の強気な表情を浮かべた。

 一方的にやられる気はない。そんな惨めで無様な姿は誰にも見せたくない。力の差があってもなお立ち向かう心の強さ。その気高い勇気こそ人が持つ最も美しいものであるとスピカは信じて疑わないのだった。

使用人二人による処分シーン:320話

ウィスタリアの妹への想い:337話

処分が決定された:353話

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